蜜白玉のひとりごと
もくじかこみらい


2002年08月30日(金) あとはまた、これからのことだ

いちばん奥の歯で、ほっぺたの内側を噛んだまま寝ていたようだ。くっきりと歯型に口内炎ができている。朝の熱いコーヒーも昼の冷やし中華のたれもしみる。口内炎はちょっと出っぱっているから、うっかり噛んでしまわないように気をつけなくてはいけない。そんなことをしたら、ますますひどくなってしまう。

『須賀敦子のトリエステと記憶の町』を読んでいて、今の自分にぴったりの、いいことばに出会う。「あとはまた、これからのことだ。」気持ちが沈んで顔が下を向いてしまったら、これからは、このことばを思い出そう。


2002年08月28日(水) 結論は先延ばし

講習が休みなので美容室ヘ行く。もうすぐ秋だしイメチェンしようと思い、ストレートはやめてゆるゆるパーマをかけてもらう。およそ2年ぶりにパーマをかける。伸びた髪に少しレイヤーをいれて、ロットをくるくると巻いていく。美容師さんの手つきにはまったく無駄がなく、見ていて惚れぼれする(注:担当美容師さんは女性)。頭にラップを巻いたまぬけな格好でしばらく待ち、パーマ液を洗い流す。ミントの蒸しタオルで首の後ろを温め、頭、首、肩、背中をマッサージしてもらう。私はほとんどこの過程が好きで、ここに通っているようなものだ。ミントの心地良い香りで、呼吸が深くゆっくりになるのがわかる。いよいよドライヤーで乾かしていく。むむむ。出来上がりが、思っていたのと少し違う。美容師さんのセットの仕方にもよるけれど、うーん。…失敗?しばらく様子を見ることにする。

帰り道、電車の中から高円寺のあわ踊りを見る。徳島の友達を思い出す。彼女はあわ踊りを心底愛していて、「踊って」と頼めばどこでも踊ってくれた。教室だろうが食堂だろうが、本当にどこでも。彼女のあわ踊りは、足の軽さがとても印象的だった。


2002年08月27日(火) 1周年/記憶

記憶をたどる。思いをはせる。何の生産性もない行為だけれど、健やかに生きていくには必要なことだ。少なくとも、私にとっては。今はもう目の前にないもの、遠くの時間、遠くの人、遠くの場所。そうしたものを心に描く。記憶は不思議なことに、時間が経つにつれて熟成されていく。少しずつ、でも確実に、その姿を変えていく。

遠くに思いをはせる人の顔が好きだ。それは、思い出すことにつきまとう寂しさを引き受けたあとの、潔い顔。手紙を読む、日記を読む、写真を見る、本を読む。洪水のように押し寄せてくる記憶から、私は少しの元気をもらう。


2002年08月22日(木) 小学生の時間

テストを終えて、四時過ぎに帰宅。いつもよりうんと早い。平日の夕方、まだ外は明るく、方々から晩ごはんのいい匂いが漂ってくる。小学生の時間だ。この時間に自由でいられるのは小学生くらいだろう。ランドセルを家において、近所の友達と外で走りまわって遊んでいた時間。とにかく次から次へと楽しい遊びを思いついた。最近の小学生は、それほど自由ではないのかもしれない。

ベランダに出て風にあたりながら、冷凍庫に一個だけ残っていたアイスクリームを食べる。夕方の風は思ったよりもずっと涼しくなっていて、アイスクリームを食べるには気温が低い。この間の台風以来、一気に秋めいてきて、夏はあっという間に去ってしまったようだ。お気に入りの夏色のスカートとサンダルとも、そろそろお別れだ。秋は大好きだけれど、夏が終わるのは少しさびしい。

秋の楽しみと言えば、きのこと果物、高い空、落ち葉、冷たい空気と温かい太陽、時間の流れがゆっくりになること、読書がはかどること、心が研ぎ澄まされていくこと、それからボジョレ・ヌーボー。今年の解禁日は11月21日。


2002年08月13日(火) ぴょんぴょん

朝六時、マロの散歩に起きる。今日はいつもと違って、ちょっと遠くの公園まで行く。その公園はとても広くて、グランドと芝生の広場があって、犬も入って遊べるようになっている。このあたりでは、犬が堂々と入れる大きな公園というのはあまりない。たいてい「いぬをいれてはいけません」の立て札がある。

公園に入って、誰もいないのを確かめてリードをはずしてやる。マロはぴょんぴょん走る。走り方がウサギみたいだとよく言われる。後ろ足を左右同時に蹴り上げるからだ。疲れるとちょこちょこ歩いて、しばらくするとまたぴょんぴょん走る。ひとりで楽しそうに遊んでいる。急いで家を出たから、ボールもおやつもフリスビーも遊び道具は何一つ持ってきていない。それでも、マロは十分満足しているようだ。ときどき立ち止まって、鼻を高く上げて、風の匂いをかいでいる。


2002年08月10日(土) おやすみ

講習がはじまって三週間。早起きにもすっかり慣れ、毎朝ひとつ目の目覚ましで起きる。日によっては、ひとつ目も鳴らないうちに起きる。朝が苦手な私にしてみれば、これは驚くべき変化だ。ただし今でも念のために、ふたつ目の目覚ましもちゃんとセットしている。

十二時過ぎに授業が終わる。明日からはお盆休みで、途端に気持ちがふっと軽くなる。恨めしいと思っていた青空も、今日ばかりはうれしい。休みの開放感にぴったりだ。帰りがけ、尻尾が長い小さなサルをつれた、こわもてなおじさんとすれ違う。おじさんは自転車に乗っていて、サルは振り落とされないようにおじさんの首にしがみついている。ときどき居心地悪そうに足をもじもじしている。信号待ちをしていたおばさん数人が、ねえ見て!サルサルサル!!と大声で騒いでいるが、おじさんは少しも表情を崩さない。サルは全体が茶色で、尻尾だけ苔みたいに緑色。

休みは今度の日曜日までの八日間。休み中にすること。まずはとっととレポートを片付けて、読まなければならない本を三冊読む。台所の窓のカフェカーテンを新しく作って、かけかえる。遠くに住む友人へ、書く書くと言っていた手紙を今度こそ書いて送る。マロとよく遊ぶ。それから、祖父母の家と親戚の家へ行って、のたうち回りながらも元気に楽しくやっているよと顔を見せてくる。なるべく料理をする。その他、家事一般代行。八日間は短い。


2002年08月06日(火) この夏一番

八月に入ってすでに一週間。今日はこの夏一番の暑さだったらしい。腕ばかり焼けて、どんどん夏が過ぎて行く。

講習が始まってから、講習以外のことにはすごく面倒くさがりになっている。面倒というよりは、講習にエネルギーのほとんどを持って行かれて、夕方にはすでに電池切れ。もともとそんなに大量のエネルギーを保持している方ではないので、自然とその他のことが地味になる。月曜日から土曜日は学校と家の往復、寄り道はせいぜい図書館、日曜日はエネルギー補充と次の週の準備。地味に、着実に、そうしなければならない時もある。

講習で友達ができる。特に友達を作る努力はしていなかったけれど、なんとなく気の合う人と仲良くなったようだ。どうやら同い年のようで、考えていることも似ている。そして何より顔が似ている。ちょっと伏し目がちだと、私か彼女かどっちだかわからないはずだ。自分で言うのもおかしいけれど、よく見るとますます似ている。向かい合って話していると、ときどき鏡に向かって話しているような感じがする。唯一の違いは髪の長さくらいだ。彼女とは家が同じ方向なので、途中まで一緒に帰る。電車で、トーベ・ヤンソンの話とディック・ブルーナの話をする。他に、静岡の追分羊羹、梅園のごま塩大福、それから夏野菜カレーの話もする。とにかく、帰り道は二人とも、とてもお腹が空いていたということだ。

札幌の親友から暑中見舞いが届く。風鈴の絵柄がとても涼しげだ。今年は札幌も暑そうで、この分だと大通り公園のビアガーデンもにぎわっているのだろうなと思う(まだやっているのだろうか)。冷夏だと外でビールを飲むのは寒いのだ。もう何年も札幌に帰っていない。秋か冬には行こう。今年こそ。


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