蜜白玉のひとりごと
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出かけた先で会った若者4人組。彼らは、人ごみでごったがえす駅前でジャズを演奏していた。風に吹かれて気持ち良さそうに。リズムに乗ってにこにこ楽しそうに。
人がどんどん集まってきて、休日独特の浮かれた感じがした。予期しなかったこういう出会いは、お菓子についてきたおまけみたいで、すごくうれしい。思わずニンマリ、得した気分。
楽しませてもらったお礼に、500円玉と公園で拾ったどんぐりをあげた。彼らはあとで小銭に混ざったどんぐりを見てどう思うだろうか。
そのいだずら、私のしわざ。
降り続いていた雨がやむと、あたりはすっかり秋だった。うれしくなって、仕事場まで一駅ぶん歩いていった。
風に向かってぐんぐん歩く。顔を上げると、つめたい風に頬がひきしまる感じがする。伸ばしっぱなしの髪が風になびいて、襟足のあたりがさらさら気持ちいい。高い高い空、柔らかい光、澄んだ空気。
ああ、秋だなあ。
すれ違った小学生は、「おかあさん、ふゆみたいだね」だって。そう、今日の秋はちょっと行き過ぎ。
そう言えば、私の持ち物には秋色のものが多い。とろんとしたロイヤルミルクティー色のスカート。こっくりとしたマホガニー色の柄の傘。ココア色の文字盤の腕時計。枯葉色の鞄。これら全部を一度に持つと、私は秋の景色と同化してしまう。
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