海を進む
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昨日の午後、別の部署の男の人から電話が来た。 今日は何時ごろに休憩に出れる?一緒にご飯食べようって。 この人は、誰とでも壁を作らず素直に明るく仲良くする。 他の男の人とは違って、二人で食事に行くからって、全然大事件じゃない。 (これが例えば相手が先生だったりしたら、人生の一大事。) だけど、誘ってくれて私はすごく嬉しかった。 上司と先輩が席を外している時をねらって電話をくれたのも嬉しかった。
夕方6時半、1時間の休憩をとる時に私が迎えに行って、会社の近くの地下街でご飯。 普通の会社なら、ランチ。 「カップルばっかりだよね。寂しくなるー。」 とさかんに言うので、 「私たちだってカップルに見えるはずですよ。私じゃ不満ですか?」 と言いたかったけどそれは我慢して 「土曜日の夜ですもんね。」 などと答えつつ、生姜焼き定食を食べた。 会社を出てくるときから会社に戻るまで、私は一度もドアを触らなかった。 ドアもエレベーターもサッと開けて私を先に通してくれる。 そういうことを照れもせず気負いもせずごく自然にフツウにする人なのだ。 (他の人にしてもらったことはないけど、)他の男の人だったらこうはいかない。
一緒にご飯を食べた話はこれだけなのだけど、続きがあって、 この夜仕事が終わった後、私とこの人は手をつないで歩いたのだった。 終電間近で人気のないビル街だったけど、二人っきりというわけではなくて、 なんと上司のみなさんが5人ほどもいるところで。 しつこいようだけど、これが他の男の人だったら、私の人生の一大事であると同時に 会社の一大事にもなってしまう。 それがそうならないって、何なのだろう。 無添加な人とはこういう人のこと? ああ、小さな子どもと同じなのかも。あんなに背が高いのに。 小さい男の子が「おねえちゃん、手つなごー」って手を差し出すのと同じ感じ。
笑いながら見ていた上司のおじさんには 「たまには若い男と手もつながなくちゃね。嬉しかったでしょ。よかったよね。」 と割りと真剣めな顔で言われた…。 たまにはね…。
というわけなんだけど、一日たった今日、思い出すとドキドキするのはなぜ? やっぱり小さな男の子とは違うよね。
すごく小さい頃からあまり泣かない子だった。
2歳になる前に妹が生まれて、5歳で弟が生まれた。 保育園に入ってからも赤ちゃんみたいによく泣く妹は、 祖母や父に抱き上げられてなだめられていた。 弟はいつも母のひざの上や背中にいた。 妹と弟が泣いたりわめいたりするかたわらで、私はじっと黙っていた。 想像では、たぶん無表情で。 泣いてはいけないなんて誰にも言われなかった。 甘えて抱きついてはいけないなんて誰にも言われなかった。 だけど、小学校にも上がっていない私は、おとなしくしていなければいけない、 親を困らせてはいけないと、誰にも言われなくても感じ取って、実行していた。
2歳になる前から私はお姉さんでいなくてはいけなかったのに、 妹は小学校を卒業してもまだ妹のまま。 いつまでたっても常に私は年上で、いつまでたっても妹は年下のまま。 大きくなるにつれ、そういう風に心の中で理屈っぽく不公平さを感じるようになった。 それでもいい子でいなくちゃいけなくて、誰かにそれを言ったことはないけれど。 中学校ぐらいまで、その不満はどんどん膨らみ続けていた。 一人っ子に生まれたかったと毎日毎日思っていた。 お姉さんなんだからお前がちゃんと一緒に行ってあげなさい、とか、 お姉さんなんだからお前がちゃんと先頭に立ってお母さんを手伝いなさい、とか、 父のその類の言葉には、どうしたって返事をすることができなかった。 言い返すこともできなかったけど、はい、と素直に返事をするなんて 物理的に不可能だったと言えるほど、抵抗のあることだった。 今でも父のそういう小言を思い出すと胸がムカムカしてしまう。
妹なんて他所の家にもらわれちゃえばいいと真剣に思っていたけれど、 そんな思いも高校生くらいになると、いつの間にか消えていた。 両親や祖父母と話すよりも、妹や弟と話すほうが断然分かり合え、盛り上がるようになった。 今では、帰省する楽しみの8割ぐらいは妹と弟に会えることだ。 妹と弟がいて良かったと思っている。 一人っ子じゃなくて良かった。
それでも。 それでも心の中の穴は埋まらずにそのままヒリヒリとしながら存在している。 最初に妹に、次に弟に両親の関心を奪われてしまった小さな私が、 抱っこしてほしいって泣いている。 もっと甘えたいもっと甘えたいって泣いている。
周りを困らせない大人でいなければならなかった小さな私のことを考えると、 朝まで涙が止まらないこともある。
| 2004年11月20日(土) |
人の心はどうして変わる |
先生は今週ずっと休みをとっている。 仕事がすごく忙しかったこともあって、先生の存在を忘れてる時間が長かった。 先月会った例の彼に送るメールの文面をずっと考えてたし。
すぐってわけじゃないけど、会社はやめることにした。 早ければ冬の間に。遅くても春に。 この会社に入って良かったことって、先生に会えたことだけかも。 先生に会わなかったら、よく生きようって気持ちを思い出せなかった。 夢を持つこととか、それに向かって努力することとか。 そんなこと忘れたままなんとなく過ごすところだった。 別に何かを相談したわけでもないし、何かを言ってもらったわけでもなくて、 私が一方的に先生を見てただけなんだけど。
一人の人に3年間ぐらい片思いしてみたい。 真っただ中では冷めるなんて考えられないって思うのに。
この前知り合って、後で共通の友達にアドレスを教えてもらった男の人に。 どんな話題がいいんだろうって計算高く考える。 自分が傷付かないように。
今日は仕事が休み。今週は一休の週で、今日だけが休み。 友達と会う約束をしてた。彼女は結婚したばかりの主婦。 土日休みではない私は、友達とはなかなか会えない。 そもそも友達少ないのもあるけど。 だから彼女と会えるの嬉しかったのだ。楽しみにしてたんだよ。 最近会社であった出来事とか、彼女の結婚式のこととか、話したいことはいっぱいあった。
だけど、ドタキャンされてしまった。 朝起きたら「雨だからやめましょう」ってメールが来てた。 しょんぼり。 雨だから・・・。 結局、夜までひたすら眠った。最近帰りは終電で、持ち帰る仕事もあって、睡眠不足だったの。 だけどだけど、いくら眠くても、だらだら眠るよりも彼女と会ったほうが仕事の疲れも ずっと回復できただろうな。 楽しい新婚生活の中では私と一回会えないことぐらい何でもないのかもしれない。 私には、昨日までの憂鬱な5日間と明日からの憂鬱な6日間の間のたった一日だったのにな。 夜になってベッドから這い出して、本気で泣いてしまった。 悲しいんだもん。寂しいんだもん。
あーあ、何か甘くてやわらかいものが食べたい。
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