明後日の風
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2011年04月30日(土) 山頂の高原

 山の中腹に小さな湖が広がっている。
 いくつかのコテージがあり、どうも、林間学校らしい小学生が走り回っている。ゴールンデンウィークを感じられる風景だ。

 我々は、ここから尾根を登っていく。
 まだまだ冬枯れの雰囲気が続き、若葉の香りもなく、登山口とは異なり、まだまだ今年は春が遅い、ということを実感する。

 とにかく登る。道はつづら折りに続き、時折、甲府盆地が見えるほかは、人工林の中に小さな道が続いていくのだ。
 2時間は歩いただろうか。草原の中に、小さな小屋があった。
「櫛形山ほこら小屋」
ここ10年程度で作られたであろう、新しい小屋。標高2000m近く、
「歩かないと寒い」
という状況で、小屋に飛び込んだ。

 木の香りが広がる小屋の中で、お弁当をいただく。いなり寿司とおにぎり、紅鮭、コロッケ、シュウマイなど。いなり寿司の甘さが口に広がってなかなかよい。
「今日は、コンビニおにぎりにしなくてよかった」
と心の中で思う。

 ほどなく山頂。
 櫛形山山頂からの眺望はなかったが、これだけの急登の先に、これだけの高原状の台地が広がっているのは発見だった。奥仙重が正式名称という櫛形山山頂から裸山、アヤメ平と、山頂の高原が続いている。ハイキング気分が楽しい。



 まだまだ、寒い。大きな霜柱が登山道を持ち上げている。



 7月にはアヤメが咲き誇るという。その時、また来て見たい、と思った。


2011年04月24日(日) 木漏れ日

 満員の登山者を乗せたバスは、細い山道を残っていく。
「本当に大丈夫なのかぁ?」
というような雰囲気だが、無事にヤビツ峠に到着した。
 ひんやりとした空気に、東京から至近距離とは思えない雰囲気が広がっている。

 塔ノ岳への表参道を登っていく。
 30分ほどの林道歩きののち登山道に入ると、急登がはじまる。どこまでも木の階段が続いている。一週間の不摂生がたたっているのか、思いのほか登りがきつい。それでも三ノ塔まで上がると、めざすべき塔ノ岳までの尾根がすっきり見える。



 「やっぱり山はいいなぁ〜」ということになるのだ。

 小さなアップダウンと、ちょっとした鎖場などに冷や汗をかきながら、歩きやすい道を進んでいく。「木漏れ日」という言葉がちょうどいい、山道を登りきると、塔ノ岳山頂だ。



 先週に続き、初心者君も参加。といっても別人で、
「きついっす」
と言いながら、ぱっぱぱっぱと登っていた。やはり年齢には勝てない。

 これからの長い大倉尾根の下山の前に、富士山が一瞬だけ顔を見せてくれた。今年は雪が多い。


2011年04月16日(土) しょうゆ煎餅の効能

 4両編成の電車が奥多摩駅を目指して走っている。
 今日のメンバーは4人。それぞれにこの列車のどこかに乗っているはずなのだが、果たしてどうだろう。始発に乗車した僕は、朝の早さも手伝って、ロングシート端でザックを抱えてウトウトしながら、カーブの度に変化する日差しのまぶしさに時折起こされつつ、山深くなっていく景色を眺めることになる。
 奥多摩駅に定刻に到着。ここからバスに乗り、登山口の奥多摩湖に向かう。
「右カーブです、左カーブです」
と忙しく案内してくれるとても親切な運転手にハンドルを託し、15分ほどで終点奥多摩湖に到着。

 ダムの貯水量は渇水期のゆえに少なかったが、桜は満開。日差しも強くなってきて、絶好のハイキング日和となった。




 御前山への道は、取り付きからすぐさま急登となる。登るに連れて視界は広がり、眼下の奥多摩湖のブルーが広がってくる。1,000m近い標高差は決して楽を許してはくれないのだが、眺望が最高のカンフル剤になる。


 勾配はあるものの広くて歩き易い道に、我々は軽快に進んでいく。カタクリの群落が登山道の両側に続くというのが有名なのだが、春の訪れの遅かった今年は、まだまだ花には程遠い。時折、日差しの中に紫色の美しい花を咲かせていた。とぼけたカタクリ、というところだろうか。

 2時間少しで山頂に到着。数組のパーティーがランチタイムを楽しんでいた。
 登山初心者の某くんは、登山の休憩の時から菓子パンばかり食べている。
「パンばっかりだねぇ〜」
と尋ねると
「甘いものがいいと思って、パンばっかり買ってきました。しょっぱいものが食べたくなるんですね。失敗しました・・・。唐揚げおいしそうで・・・。」
隣の御仁が食べていた「唐揚げ弁当」がさぞかしうまそうだったのだろう。
見かねたリーダーが、「しょうゆ煎餅でも食べる」と一言。初心者君、恵みの「しょうゆ煎餅」をおいしそうに頬張っていた。

 
「気持ちいいですねぇ〜」
という言葉が広がる。まあ、皆で歩いて来てよかったな、と思える春の一瞬だ。


2011年04月10日(日) なめこ汁

 気分のいい日曜日。
 久しぶりに登山靴に足を通し、ザックを担いで山に向かう。
 田圃の畦道を舗装したのではないか、と思われる裏道を、「何か新たな発見でもあるんじゃないか」という期待感を持って駅まで歩く。
 古い民家の渋い軒先と満開の桜のコントラストに、思わずシャッターを切ったり、少なくなった都会の畑の道のタンポポに「春」を実感したりと、15分あまりのお散歩も悪くない。

 駅前のコンビニで、いつもの山歩きセットを購入する。鮭とおかかのおにぎりの入った弁当に、チョコレートとお茶、というものだ。
 春の日差しにうとうとしていると、列車は終点の高尾山口駅に到着した。




「どこまで歩こうか」
日暮れと相談しながら、歩くつもりで、いつもの稲荷山コースに取り付く。高尾山には、いくつもの道筋があるのだが、舗装路は嫌いだし、谷の川筋の道はこの時期にはやや寒い。なんとなく、いつもこのコースを歩くことになる。

 ほどなく鎮座するお稲荷さんに手を合わせ、快調に進んでいく。震災の影響か外国人はほとんど見かけることがなく、昔の静かな高尾山に戻っていた。
 最後の急な階段を登ると、山頂。


「十三州大見晴台」
なんども高尾山には登っていたのだが、こういう大仰な名前をお持ちだとは全くしらなかった。
 
 これから、僕は先に進む。
 奥高尾。ほとんど人は、ここ高尾山頂で引き返してしまうのだが、この先こそ、静かな山歩きが楽しめる。

 城山、小仏峠と過ぎて、すれ違う人も少なくなり、僕は最後の急登を登り景信山へ。そろそろ日も傾き、店じまいという感じの茶屋で、なめこ汁を注文する。おにぎりには、このほんのりと七味の効いたなめこ汁が絶妙にうまい。
「どちらから?」
と言う主人に
「高尾山から歩いてきました」
「京王線も普通に走っているの?」
「そうですね。大丈夫です。」
「高尾山は混んでいた?」
「まずまずです。ついこの間のような大混雑ではないですが・・・」
「そう」
と少しばかりやりとりをした。
 こんなやりとりができるのも、静かな奥高尾ゆえと言えるだろう。


さわ