明後日の風
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目の前に双子の山頂を持つこんもりとした山がある。 山頂近くにある観音堂から「ご〜ん」という鐘の音が聞こえて来る。 まだまだ昼下がりという時間だが、晩秋の日の傾きは早い。 カラスが鳴いて、 「そろそろ夕暮れか?」 と錯覚しないこともない、そんな風景がそこにある。
麓の駐車場に車を停めた我々は、 「あ〜、これから山に登るの。ご苦労さんだねぇ」 という、茶店のおばちゃんの声に見送られて歩き出したのだ。このあたりは蕎麦が有名らしく、この茶店もご他聞に漏れず「蕎麦」を出している。 「下山したら食べよう」 まあ、そういう気分になるところは、おばちゃんの声の賜物だ。
広い道路は林道となり、落ち葉の敷き詰められた登山道への道は続く。やがて、鎖やロープが表れ、やっと一人が登れるか、という感じの道になると山頂は近い。
広場に出た。欅に囲まれた山頂は、その変幻自在な色彩に包まれている。 「う〜ん、いい」 一言・・・。
超極太の田舎そば。 軍鶏の温かいだし汁につけて蕎麦を啜りながら、月居山(つきおれさん)は、本当の夕暮れ時となった。
「夏が暑かったなんて、忘れちゃいましたねぇ〜」 関西弁の脳天気な声がラジオから聴こえて来る。
「そうそう」 と心で相槌を打ちながら、僕は友人の車の助手席に乗って、京都の街を眺めている。
秋。
全国各地からの観光客で京都の街は溢れている。 「この飛び石連休がピークちゃう」 京都在住の友人は「いつもそんなもんだ」という風で、あまり関心はないようだ。
車は駅から北に向かった。堀川通り。幕末所縁の壬生寺、二条城。御池通りに入り、東へ。 「新しいビルが建ったなぁ〜」 洒落た古都というイメージが溢れる街に、御池通は変貌していた。昔から変わらないのは京都市役所くらいだろうか。
観光客集積地の鴨川を渡り、昔は京阪電車が走っていた川端通りを南下する。 渋滞は酷いものだが、正直、この時期の京都を感じるには悪くないルートだ。
僕にとって、めっきり夜を楽しむ場所になってしまった京都。その日本的な落ち着きを好んでいるのだが、久しぶりに昼間を眺めると、その違いがあからさまになる。なんとなく京都の目指すところは、ヨーロッパの香りらしい。
初冬の頃、観光客が去った頃に、静かに歩いてみたい、そう思った。
久しぶりにハンドルを握る。 最近、ちょっと列車に肩入れし過ぎていたかな、と思わないわけでもないのだが、愛車は機嫌良く走ってくれる。
「うまくやれば四連休」 というこの週末。東京脱出を試みる車で、放射状に延びる高速道路はどこも渋滞。当然に都心も車で溢れている。 こういう時は、日中はノンビリと自宅で過ごし、夕方からアクセルを踏むのがいい。いい具合に天気もいい。
そろそろ日も傾いてくるか、という時分、 「おぉ!、干していた布団もいい具合にふっくら」 ということで、ベランダから布団を取り込んで出発。
中央高速を西に向かう。 小仏峠を過ぎると、ハイウェイは360度の晩秋に包まれる。いい具合に富士山も見えている。 そして笹子峠を越え、甲州盆地への下り坂を進む時、西日に背後から照らされる南アルプスがそのスロープの前面に現れた。 白峰三山、鳳凰三山、そして甲斐駒ケ岳。 影絵のごとく映し出される稜線は、いつも以上にディテールが厳格だ。
「さてさて、いい気分のまま温泉にでも入ることにしよう。」 お気に入りの韮崎の温泉に向かう。雲海に頭を覗かせた富士山も美しい。
さわ
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