明後日の風
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2010年11月28日(日) う〜ん、いい

 目の前に双子の山頂を持つこんもりとした山がある。
 山頂近くにある観音堂から「ご〜ん」という鐘の音が聞こえて来る。
 まだまだ昼下がりという時間だが、晩秋の日の傾きは早い。
 カラスが鳴いて、
 「そろそろ夕暮れか?」
と錯覚しないこともない、そんな風景がそこにある。

 麓の駐車場に車を停めた我々は、
「あ〜、これから山に登るの。ご苦労さんだねぇ」
という、茶店のおばちゃんの声に見送られて歩き出したのだ。このあたりは蕎麦が有名らしく、この茶店もご他聞に漏れず「蕎麦」を出している。
「下山したら食べよう」
まあ、そういう気分になるところは、おばちゃんの声の賜物だ。

 広い道路は林道となり、落ち葉の敷き詰められた登山道への道は続く。やがて、鎖やロープが表れ、やっと一人が登れるか、という感じの道になると山頂は近い。

 広場に出た。欅に囲まれた山頂は、その変幻自在な色彩に包まれている。
「う〜ん、いい」
一言・・・。




 超極太の田舎そば。
 軍鶏の温かいだし汁につけて蕎麦を啜りながら、月居山(つきおれさん)は、本当の夕暮れ時となった。


2010年11月21日(日) 京都の昼と夜

「夏が暑かったなんて、忘れちゃいましたねぇ〜」
関西弁の脳天気な声がラジオから聴こえて来る。

「そうそう」
と心で相槌を打ちながら、僕は友人の車の助手席に乗って、京都の街を眺めている。

秋。

全国各地からの観光客で京都の街は溢れている。
「この飛び石連休がピークちゃう」
京都在住の友人は「いつもそんなもんだ」という風で、あまり関心はないようだ。

車は駅から北に向かった。堀川通り。幕末所縁の壬生寺、二条城。御池通りに入り、東へ。
「新しいビルが建ったなぁ〜」
洒落た古都というイメージが溢れる街に、御池通は変貌していた。昔から変わらないのは京都市役所くらいだろうか。

観光客集積地の鴨川を渡り、昔は京阪電車が走っていた川端通りを南下する。
渋滞は酷いものだが、正直、この時期の京都を感じるには悪くないルートだ。

僕にとって、めっきり夜を楽しむ場所になってしまった京都。その日本的な落ち着きを好んでいるのだが、久しぶりに昼間を眺めると、その違いがあからさまになる。なんとなく京都の目指すところは、ヨーロッパの香りらしい。

初冬の頃、観光客が去った頃に、静かに歩いてみたい、そう思った。


2010年11月20日(土) 晩秋のディテール

久しぶりにハンドルを握る。
最近、ちょっと列車に肩入れし過ぎていたかな、と思わないわけでもないのだが、愛車は機嫌良く走ってくれる。

「うまくやれば四連休」
というこの週末。東京脱出を試みる車で、放射状に延びる高速道路はどこも渋滞。当然に都心も車で溢れている。
こういう時は、日中はノンビリと自宅で過ごし、夕方からアクセルを踏むのがいい。いい具合に天気もいい。

そろそろ日も傾いてくるか、という時分、
「おぉ!、干していた布団もいい具合にふっくら」
ということで、ベランダから布団を取り込んで出発。

中央高速を西に向かう。
小仏峠を過ぎると、ハイウェイは360度の晩秋に包まれる。いい具合に富士山も見えている。
そして笹子峠を越え、甲州盆地への下り坂を進む時、西日に背後から照らされる南アルプスがそのスロープの前面に現れた。
白峰三山、鳳凰三山、そして甲斐駒ケ岳。
影絵のごとく映し出される稜線は、いつも以上にディテールが厳格だ。

「さてさて、いい気分のまま温泉にでも入ることにしよう。」
お気に入りの韮崎の温泉に向かう。雲海に頭を覗かせた富士山も美しい。


さわ