明後日の風 DiaryINDEX|past|will
まだまだ夜明け前の暗い時間。 「いなりずし・・・」 辛しいなり等の変わりいなりを詰め込んだこのお弁当。驚くべきは、6個がすっぽりと納まる弁当箱、そして弁当箱を包む紙袋の適度な大きさ、こんなところに「計算され尽されている」という事実が、品良く主張されているのである。 「いい山だった」 という塩見岳の感想は、この小屋の思い出とともに「一つのもの」として記憶されている。 三伏峠までの道は快調で、 「これで見納めか?」 と思いながら、塩見岳を何度も振り返って眺めていく。 峠で一休みしてから急坂を下っていく。 振り返ると、既に山の陰になってしまった塩見岳に替わり、甲斐駒ヶ岳が一際輝いていた。
尾根をトラバースして道は着実に上がっていく。 南アルプスの山らしい「森の山」でもあるのだが、遠目に見たその雰囲気は、山頂直下の塩見小屋に到着する頃には、しっかりと裏切られ、 「冗談でしょ」 という絵面に変貌する。 「どこに道があるねん」 と心の中で叫びたくなるほどに登山道はなかなかに急峻で、天気が悪かったら、即「退却!」と号令をかけたいくらいなのだが、吹き上げる風と、南アルプスの大展望に誘われて「ガシガシ」と岩肌を登っていくのである。間ノ岳、北岳、甲斐駒ヶ岳、仙丈ヶ岳、といった名峰が一望できる。 そして、山頂。 天を突くその先で、めずらしく格好をつけてフィルムに収まる。いわゆるハイテンション!、ということなのだが、これも「憧れの山」故の神様の仕業だ、と思いたい。ブロッケン現象というオマケも頂戴し、下山開始。 1時間ほど後、振り返ると岩山の塩見岳が見えている。 「さ、ビール飲もぅ!」 500ml缶を買い込んできた僕に、友達が柿ピーを差し出した。
「テントの中の方、起きてくださいよ!」 「もう少しで最高の展望ですから」 前からやってきた下山者が我々に声をかけてくれた。この景色は、正にその意味を正確に伝えてくれている。 富士のお山はやっぱり美しいのだ。 このきっぱりとしたシルエットは、スピード感をもってここにやってきた今日の山行に良くオーバーラップしている。気分の良さは、こんなところにも原因があるんだから、不思議なものだ。 そして今日、我々は鳳凰三山の一つ一つをこなしていく。 薬師岳、最高点である観音岳、そしてオベリスクのある地蔵岳。白砂の照り返しに閉口し、ざれた砂に足をすくわれて苦労させられるのだが、それでも、この開放的な稜線は魅力的だ。 「これから1300mの急坂を下りますよ」 そんな声を聞こえたのか、今日の道を振り返る。 鳳凰三山の尾根の脇に、富士のお山はまだしっかりとそこにある。 「さぁ〜て、下りますか・・・」
さわ
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