明後日の風 DiaryINDEX|past|will
夜、しんしんと雪が降っていた。
「あ〜あ、帰ってきちゃった」 冬の寒波が襲った日本列島。小笠原も寒かったが、東京は更に寒い。 うねりも高く、「おが丸」も大いに揺れた。エンジン全開で頑張ったのだろうが、定刻から大幅に遅れて、竹芝桟橋に着岸するらしい。 房総半島が見え、東京湾に入ると、船には落ち着きが広がった。それまで、船酔いでほとんど動きの見えなかった船内が妙に活発になる。船旅の最後を楽しむ人、アイスクリームに群がる子供達、甲板で東京湾を眺める人、僕もその一人になった。 山頂を雲に隠した富士が見えている。 夕陽に背後から照らされ、富士が浮かび上がった姿は、東京に戻ったことをしっかりと意識させてくれる。 「これが見られたのも、船が遅れたおかげかぁ〜」 と思うと、妙にうれしかったりするのだ。 母島で出会った4名が、それぞれの世界に戻っていく。非日常から日常に戻る瞬間だ。 「またお会いしましょう」 磯釣り名人が、桟橋に降りて行った。
街のメインストリートには、賑わいがある。 定刻になった。 いつものように、村総出での「また来いよ」コールを聞きながら、何艘もの船の伴走に見送られながら、「おが丸」は二見湾に浮かぶブイをゆるやかに旋回した。 最後の伴走船がUターンする。 カメラを回すファインダーに、涙が滲んでいる。 このこみ上げる不思議な感動は、三度目の小笠原でも変わらない。
お雑煮をいただく。 町に近い、前浜海岸には少しばかり日が差し始め、子供達が海ではしゃぎ合っている。 「日本一早い海開き」 というだけのことはある。服のまま海に突っ込んだ子供達に、大人たちは 「しゃ〜ねぇなぁ〜」 と思いながら、過ごすのである。
さわ
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