明後日の風
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2010年01月11日(月) 冬の奥行き

 夜、しんしんと雪が降っていた。
 静かな湯屋で一晩を過ごした。
 なめらかなお湯にすっかり湯治をイメージし、酒は飲まずに布団に入ったのは、久しぶりだった。

 朝。
 雪は止み、快晴の空が広がった。
 夜のうちに、雪は随分と降ったようで、北へ向かう国道は除雪された雪が両側に積もり、道の駅の駐車場は、ブルドーザーが正に除雪の最盛期となっていた。雪の反射光がまぶしい。
 道の先には、一つのくもりもなく、パウダースノーで白一色となった谷川岳が広がっていた。僕は、その全景を写真に納めることはできなかった。ファインダーから見たそれば、あまりにも実物とはかけ離れたもので、写真に納めることを良しとは思えなかったからだ。

 温泉場をあとにし、僕はハイウェーを南下する。
 次々と冬の名山が目の前に飛び込んで来る。
 とにかく、今日は視界がいい。
 遠く、志賀高原へと奥行きのある峰々が広がっている。この深さは、なかなかない。



2010年01月03日(日) 日常へ



「あ〜あ、帰ってきちゃった」

 冬の寒波が襲った日本列島。小笠原も寒かったが、東京は更に寒い。
 うねりも高く、「おが丸」も大いに揺れた。エンジン全開で頑張ったのだろうが、定刻から大幅に遅れて、竹芝桟橋に着岸するらしい。

 房総半島が見え、東京湾に入ると、船には落ち着きが広がった。それまで、船酔いでほとんど動きの見えなかった船内が妙に活発になる。船旅の最後を楽しむ人、アイスクリームに群がる子供達、甲板で東京湾を眺める人、僕もその一人になった。

 山頂を雲に隠した富士が見えている。
 夕陽に背後から照らされ、富士が浮かび上がった姿は、東京に戻ったことをしっかりと意識させてくれる。
「これが見られたのも、船が遅れたおかげかぁ〜」
と思うと、妙にうれしかったりするのだ。

 母島で出会った4名が、それぞれの世界に戻っていく。非日常から日常に戻る瞬間だ。
「またお会いしましょう」
 磯釣り名人が、桟橋に降りて行った。


2010年01月02日(土) 三度目の出港

 街のメインストリートには、賑わいがある。
 土産物を探す者、ランチタイムに最後の島グルメを楽しむ者。
 昼過ぎには、本土への唯一の生命線である「おがさわら丸」が、東京に向かって出港する。その出港に合わせるように、人が集まってくる。

「ここの中華おいしいよ」
という友人の言葉に誘われて、僕は父島での高級魚、「アカバ」入りのラーメンを注文した。
 小笠原の特産とも言える塩を使ったあっさりしたスープに、アカバの厚みのある白身から生まれる、ふっくらとした脂が広がっている。確かにうまい。鋭利な骨に注意しながらも完食。

 自然と、僕の足は「大村海岸」に向かった。
 天気は良いが、風が強い。そのためか、少ない人影に名残惜しさが募る。この海岸に広がる、なんとも言えない抱擁感が僕は好きだ。



 
 定刻になった。
 いつものように、村総出での「また来いよ」コールを聞きながら、何艘もの船の伴走に見送られながら、「おが丸」は二見湾に浮かぶブイをゆるやかに旋回した。
 最後の伴走船がUターンする。
 カメラを回すファインダーに、涙が滲んでいる。
 このこみ上げる不思議な感動は、三度目の小笠原でも変わらない。 


2010年01月01日(金) 日本一早い海開き

 お雑煮をいただく。
 澄まし汁のお雑煮だ。
「やっぱ正月だなぁ〜」
と思う。

 風も強く、雨も降りそうで、なんとも寒い元旦だな、と思っていたのだが、天も最後には見方した。




 町に近い、前浜海岸には少しばかり日が差し始め、子供達が海ではしゃぎ合っている。
「日本一早い海開き」
というだけのことはある。服のまま海に突っ込んだ子供達に、大人たちは
「しゃ〜ねぇなぁ〜」
と思いながら、過ごすのである。


さわ