明後日の風
DiaryINDEX|past|will
強烈な日差しが関東平野に広がっている。 クーラー全開で車を走らせるのだが、窓越しの直射日光と、車を降りた時の「むっ!」とした湿気のある空気に 「やっぱり、平地にいるのは良くないね。高度を上げよう。」 と高いところを目指すのは、夏になったことの査証でもある。
夕刻。 そうして、濃霧の中の有名なつづら折りの道を登り詰めた僕は、冷気に満たされた平原の中に、圧巻の山を眺めている。
茶店の主人は、既に店じまいをはじめ、携帯電話で「キャッキャ」と写真を撮っていた一組のカップルも、既にこの地を後にした。静けさ、とは、無音ではない、という当たり前のことを、当たり前に実感する時間がはじまる。
山の夕刻とは「そんな空間」なんだな。
日中は賑わうであろう長いアーケード街も、さすがに日が変わろうとする深夜に歩く人はいない。すぐ隣にある繁華街から時折流れてくる酔っ払いも、長く客待ちの行列を作っているタクシーに乗り込み消えていく。
1キロほどは歩いただろうか。 アーケード街のわき道に、ブルーとピンクの小さなネオンが光っている。 重いドアを開けると、そこはカウンターだけの小さな店。六畳ほどだろうか。ちいさなグリルと換気扇がアクセントだ。 目の前にはキャンベルのスープ缶が並び、でかいマヨネーズのチューブとケチャップの缶がずらりと鎮座する。この小さなスペースで、この町の名物は作られるのである。
僕は、ベーコンエッグバーガーを注文した。 深夜になっても、持ち帰りの客が耐えない。 「この味」 を説明する必要はあるまい。
さわ
|