明後日の風
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山の中の快走路を走る。 峠を越えた時、目の前に白馬連峰が見えた。
あまりの美しさに、路肩にしばし車を停める。 小川にも雪解けで水量が豊富だ。既に信州にも春が近い。
「昨年歩いた、唐松岳へのトレイルはあそこだ」 と、白い雪の上のそのルートを目で追いながら、今年の夏の登山に気持ちは動く。 白馬の雲に、夕暮れの光が七色に光っていた。
明日はいい天気だろうか?
仕事で店舗を回る。 これが僕の今の仕事だ。 これまで、東京のオフィスで、ここ数年、ニョキニョキと高層ビルが伸びていくのを眺めながら、随分デスクワークに勤しんで来たが、外に出てこそ分かるもの、というのも意外に多い。
京浜急行に乗る。 「横浜なら、JRの東海道線なんじゃないの」 という人も多いかもしれないが、 「急加減速で線路脇ぎりぎりまで並ぶ民家の中を快走する」 というジェットコースター的気分が味わえる、この電車が、僕のお気に入りだ。
横浜を過ぎ、各駅停車に乗り換える。 ぐっとのローカル色を増し、のんびりとした雰囲気の高架線を電車は走っていく。小さな河川をいくつか渡る、その都度、潮の香りがしているような気分になる。
小さい駅で僕は降りた。 線路と交差する広い幹線道路には車が多い。その両脇にある小さな歩道は商店街になっており、夕方の支度なのだろう、人通りも少なくない。時折通る列車の音とやや傾きかけた日の光が、「ある日の午後」をほどよく演出してくれる。
歩道の流れはゆったりだ。 その中を、仕事鞄を抱えた僕だけが、少し小走りにすり抜けて行く。 スタスタと歩く僕の先を、 「ちりり〜ん」 と鳴らしながら、年季の入った自転車に乗ったじいさんが鼻歌交じりに通っていく。 店は高齢者で混雑していた。
この街も、朝晩は横浜や東京へ行くサラリーマンが駅に向かって一秒を争うのであろう。街は、一日にいくつもの表情を生み出す。 「ゆっくりした時間もあるんだよ」 と、いうことに、久しぶりに気付かせてくれた。
春の嵐が過ぎ、今日は、正に台風一過のような青空だ。 「久しぶりに遠出しよう」 とハンドルを握る。
出張続きで、日本全国の縦断をしているのだが、飛行機と列車を乗り継ぐ毎日で、愛車のエンジンをかけるのは実は久しぶりなのだ。 「よしよし」 という気持ちで、スターターの音に耳をそばだてる。
快晴のハイウェーは気持ちが良い。 関東平野を北上する我々の前には、既に雪解けが進み黒味を帯びた低山と、その遥か向こう、しっかりと未だ雪を湛えた高山が素晴らしいコントラストを提供してくれる。
今日の目的は軽井沢。 人の少ないこの時期こそ、僕は、この地の素晴らしさを静かに堪能できる、と思っている。 そして、軽井沢への峠を越えた時、純白の浅間山が我々の眼に飛び込んできた。木目の細かいパウダの質感が、他の山とは対照的なこの雰囲気は、やはりこの時期だから見られる、コントラストの秀作だろう。
麓の温泉に入った。 「キーン」と冷えた空気と、やわらかいたっぷりとした露天の湯、これまた、良いコントラストだな、と思う。
さわ
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