明後日の風 DiaryINDEX|past|will
深い林の中の急登を小気味よく登っていく。新緑の青々しい空気が背中を押してくれる。 いつしか、山は笹原の急登となり、広いザレ場が続く。登山口から標高差1000m、そこを登り切った僕に、この山は大きな包容力を持って現れた。 「巻機山(まきはたやま)」。 あくまでも重量感がありながら、機織をイメージさせる、ベルベットのような質感の山肌が温かい。「これまでの深い渓谷とは対照的なこの穏やかさは何だろう」、標高差に喘いだ足の辛さをよそに、気持ちよい笹原に続く登山道を前のめりに歩く僕は、カールの向こうに見えるその山に向けてしきりにシャッターを切った。 登山道にイワハゼが咲いていた。雪深いこの女性的な山には、瑞々しいこの花が良く似合う、そう思った。
朝の5時。 温めのお湯に、脳みそがまどろんでいく。 外のベンチに座り、温泉特製の朝ごはんを食べた。 魚沼産コシヒカリにお味噌汁と漬物。50円払って生卵をつけてもらう。 早朝の澄んだ空気の中、日本一の山を眺めながらの日本の朝ごはんに感謝である。
しとしとと降る小雨。 志賀高原の山道を歩くと、東屋の向こうに、点々のした島々が広がる。 四十八池。 その名付けの絶妙さに、舌を巻く。
標高1000mの朝は寒い。 沢の小さな丸木橋を渡り、ぶな、唐松と続く新緑の急登を、喘ぎながら上り詰める。幾何学的だがしかし、ムラのある唐松の美林は視覚を刺激し、春の香りに浄化された空気は、嗅覚というより皮膚感覚の心地よさを誘発する。 そして、山頂に着いた。 麓で購入した「牛蒡ご飯」を広げる。甘辛く煮付けた牛蒡と肉、差し詰め「牛蒡入り牛丼」といったところなのだが、この甘さは、久しぶりの登山、というコンディションを癒してくれる。 眺望の良さより、森の豊かさを回想する、恵那山山頂はそういう場所だ。
さわ
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