明後日の風
DiaryINDEXpastwill


2007年06月24日(日) 山肌の質感

 深い林の中の急登を小気味よく登っていく。新緑の青々しい空気が背中を押してくれる。
 2時間ほど歩いただろうか。尾根の展望台に、僕はザックとストックを置いた。
 いくつも刻まれた深い谷の中に、大きな天狗岩が望まれる。越後深い雪、その雪解け水に刻まれるこの山の環境の厳しさゆえであろう。




 いつしか、山は笹原の急登となり、広いザレ場が続く。登山口から標高差1000m、そこを登り切った僕に、この山は大きな包容力を持って現れた。


 「巻機山(まきはたやま)」。
 あくまでも重量感がありながら、機織をイメージさせる、ベルベットのような質感の山肌が温かい。「これまでの深い渓谷とは対照的なこの穏やかさは何だろう」、標高差に喘いだ足の辛さをよそに、気持ちよい笹原に続く登山道を前のめりに歩く僕は、カールの向こうに見えるその山に向けてしきりにシャッターを切った。

 登山道にイワハゼが咲いていた。雪深いこの女性的な山には、瑞々しいこの花が良く似合う、そう思った。


2007年06月16日(土) 日本の朝ごはん

 朝の5時。
 雲ひとつない快晴の空。関東平野の空間の先、くっきりと見える富士に誘われてハンドルを握る。
 甲府盆地の高台の温泉。御坂の山の向こうに、きちんと富士山が見ている。未だ白い雪を湛えた富士は、スポットライトを浴びたように他の山々とは異なる存在感を示している。



 温めのお湯に、脳みそがまどろんでいく。

 外のベンチに座り、温泉特製の朝ごはんを食べた。
 魚沼産コシヒカリにお味噌汁と漬物。50円払って生卵をつけてもらう。
 早朝の澄んだ空気の中、日本一の山を眺めながらの日本の朝ごはんに感謝である。


2007年06月09日(土) 小雨の中の山歩き

 しとしとと降る小雨。
 こういう時に歩くには、湿原がいい。
 きりっと晴れた中の水芭蕉の白さは美しいが、水滴と霧の中の水芭蕉こそ瑞々しい。



 志賀高原の山道を歩くと、東屋の向こうに、点々のした島々が広がる。
 四十八池。
 その名付けの絶妙さに、舌を巻く。



2007年06月03日(日) 牛蒡ご飯

 標高1000mの朝は寒い。
 深夜に登山口に到着し、清流の音をBGMにして熟睡した僕には、もう少し寝むりたい、という幸福感が満ちているのだが、朝はやってくる。
 シュラフからもっそりと抜け出して、テントからひょっこりと顔を突き出すと、寒さでくっきりとした空気の先に、若葉に満ちた森と快晴の空があった。



 沢の小さな丸木橋を渡り、ぶな、唐松と続く新緑の急登を、喘ぎながら上り詰める。幾何学的だがしかし、ムラのある唐松の美林は視覚を刺激し、春の香りに浄化された空気は、嗅覚というより皮膚感覚の心地よさを誘発する。

 そして、山頂に着いた。
 麓で購入した「牛蒡ご飯」を広げる。甘辛く煮付けた牛蒡と肉、差し詰め「牛蒡入り牛丼」といったところなのだが、この甘さは、久しぶりの登山、というコンディションを癒してくれる。
 眺望の良さより、森の豊かさを回想する、恵那山山頂はそういう場所だ。


さわ