徒然帳
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2005年08月26日(金) |
.....この未来の先で(アニメ/ハオ葉) |
葉が泣いている‥‥‥‥ 泣きながら笑っている。
ねぇ、僕の事がそんなに心にわだかまっているのかい? 僕を殺した事を嘆いているんだね。
『あの時こうしていたらハオは‥‥‥』
『違う方法で止めていれば‥‥』
ああ、苦しそうだね。 僕を殺した事がとっても辛いんだね。
でも、馬鹿だね。葉は‥‥‥ 後悔の為の後悔ほどつまらないものはないんだよ。 『こうだったかも知れない』なんて言葉を繰り返して、起ってしまった事象に苦しんで、苦しみを紛らわす為にその言葉に縋っているなんて、自分を慰める為に悪夢をみているだなんて、一向に心は晴れないだろう? 更に悲しみや苦しみが増えるだけじゃないのかい?
葉の心は『ああしていれば』の声ばかり。 表面上は笑っているのに、心には雨が降り続いているね。 冷たい言葉の雨にうたれて凍えている可哀想な、葉。 その雨は君自身で止めるしかないんだよ。 それまではいつまで経っても雨は降ったまま。
『ハオ‥‥‥』
縋っるように泣いても誰も優しい言葉はくれないだろう? 君が欲しがっている言葉を彼等が与えてくれるまで待つのかい?
「ハオだってわかってくれるさ」 そんな言葉が欲しかった?
「お前が悪いわけじゃない」 それとも慰められたかった?
「ハオの分まで生きなさいよ」 強い彼女の言葉にどう思ったのかな?
はっはっはっは‥‥‥。 違うだろ? むしろ余計に苦しくなったんじゃないかい? 僕を想っているから尚更に‥‥‥。
あいつらの前では笑っててもホントは泣き続けているんだろう? 可哀想だね、葉。 僕に縛られちゃったんだね。
「もう十分、苦しんだだろう?」 「お前が苦しむ必要はねぇよ。忘れろよ、な」
お前を慰める数々の言葉‥‥‥ でもそれは慰めなんかじゃないんだよ。 人間はそうやって心の傷を広げないようにしようと、口にしているけど逆効果だったろう。
悲しみと悔いを促す楔一一一 戻れない事を突き付ける刃一一一一 君を慰めているように見えても、けっしてそうじゃない。 そこにあるのは相手のエゴしかない。
自分の嫌いな相手をいつまでも想っていて欲しくない一一一そんな、勝手な思いが含まれているんだよ。まぁ‥‥葉は鈍いから気づかないんだろうけどね。
馬鹿げているよね。 でも僕も同じ思いで言葉を紡いだことがあるから、人のことは言えないんだ。 だって、葉は言葉の裏を読まないからさ、心配だったんだよ。
『ハオ‥‥‥すまん‥‥』
ああ、また泣いてるね。 ふふふ‥‥‥でも嬉しいよ。 ヤツラの言葉は君には届いてないって証拠だからね。
でもさ、謝罪ってのはいただけないね。 そんな暗くて鬱陶しい感情をもらうなら、もっと違う言葉があるだろう?
僕を想うなら違うほうがいい。 ねぇ、心の中でしか言わない言葉を言ってごらんよ。
あいたい、あいたい もういちどあいたい‥‥‥
はおに、あいたい
僕に逢いたいと想ってくれるのなら叶えてあげるから。 君が言葉にしたら願いを叶えてあげる。
はやく、言っちゃいな。 一一一一あいたい、と。
でも、その時は覚悟して。 僕はお前を捕まえて閉じ込めてしまうから。 でも、僕を呼んで後悔をするのなら呼ばないで。 みんながいいなら呼ばないで。
今度こそ君は壊れてしまうから。
だからそれでもいいと言うのなら‥‥‥待っている。 君が僕を呼ぶまでは‥‥‥‥
僕はたゆたうように、見守っているよ。
この先の未来で待っている。 泣き続ける君を一一一一
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2005年08月24日(水) |
.....楽園2/お試し版(スレナル*死にネタ) |
うずまきナルト。 4代目火影に本人の意志もなく九尾を封印された器である。 全ての厄災を封じて英雄にと望まれながらも、決して認められなかった存在。憎しみを肩代わりされ、暴力と殺意の中で生きることを宿命付けられた哀れな子供。
一一一一一生け贄にされた、存在だ。
ナルトを殺したのは里の上忍。それも担当上忍であった。 引き金を引いたのは、紛れもなくナルトのかつての仲間だったけど、そう仕向けたのは一人の男だ。 全てをナルトの所為にして、憎しみをぶつけた愚か者。 うずまきナルトを最後まで九尾として見ていた者だ。
はたけカカシ。 幾度となくナルト殺害を企てるも3代目によって阻止されるが、決して諦めることをしなかった害虫。そもそもうずまきナルトの身辺の警護と監視を請け負ったにもかかわらず、四六時中、カカシはナルトに殺意を向けていた。集団でリンチされようが、他の上忍がナルトを襲おうが止めることを一切、しなかった腐れ忍者。任務に私情を挟んでしまう最低な忍者だった。 時にはナルト襲撃を煽って眺めていた時もある。 自分が正しいと、盲目的に信じて突き進んだ莫迦その一だ。
彼によってナルトは死んだ。 そう、教え子に刃を持たせてそそのかした諸悪の根源である。
カカシは笑っていた。 その笑顔は気味が悪いほどに浮かれている。 よっぽどナルトを殺したのが嬉しかったのだろう。素顔を晒し、直接手を下した教え子をねぎらっていた。「よくやった、お前達は自慢の部下だ」と誉めちぎっている。
ぽつりと言う。 仮面を足元に投げ捨てた少年、シカマルが地を這うような低い声をだした。 「…………アレ、殺したいわー俺」 賛成するのは絶対零度の瞳をする少女、イノだ。 「できれば死なせてくれと懇願するような苦痛をあたえた後にね」 どうやって苦しませようかと、すでに二人の頭はシュミレートが始まっている。 瞬殺は容易いが、そうはさせない気満々だ。 頭脳をフルに回転させるシカマルの目はマジだった。 薄ら笑いを浮かべるイノもマジだ。 そんな二人の言葉をサクっと切って捨てたのは少年、チョウジだった。 「でもボクはあの二人の方を消したいけど」 優し気な顔のチョウジの指摘にシカマルとイノが顔を見合わせて頷いた。 「………………確かに」 「……………そうよね」
大人達に言い包められて、疑いもせずに敵視したかつての仲間。……いや、仲間などと言う言葉を使いたくはない。ナルトの仲間であった事実を抹消したいぐらいだ。
3代目が亡くなって『九尾』が公になった。 それは確かにあの上忍が裏で糸を引いていたのだろう。準備を整えて機会を伺っていたに違いない。木ノ葉崩しが成されて数カ月。五代目が就任したどさくさに紛れてナルト殺害は成された。ただ、事を起こすには短い期間だ。念入りな準備が必要なことは確かだった。
実行犯の二人の子供。 まだ殺しの【この字】も知らないようなド素人の下忍である二人には、荷がかちすぎる。いくらそそのかされても「はいそうですか」と簡単にはいかないだろう。それこそ準備が必要だったはずだ。精神的なコントロールをさせるために……。
うちはサスケ。 復讐心に燃える彼をそそのかすのは簡単だったろう。 そこに覚悟をさせればいいだけだ。 案外、うちはを滅ぼした原因はうずまきナルトにあったとかなんとか言い包めたのかもしれない。九尾に関しては木ノ葉の里では禁忌中の禁忌だから、理由の後付けはいくらでもできる。 クナイを深々と、突き刺した彼の目に復讐の色が宿っていたのが見えた。
「お前さえいなければッ!!」 勝手な言い分、勝手な怒り。 どんな捏造の話を聞かされたのか、一度、聞いてみたい。
(確かイタチさんは火影の命令で動いただけだよな?) (そうそう。根底にあるのは私達と同じよ) (うちはの中であの人だけはマトモだったよね)
真実を知らないということは時に愚かである。 戸惑いながらも自分のやったことに自信を持っている少年を見ながら、三人は蔑んでいた。 一一一一一守れない言葉は言うな、と。
三人は次に少女を見た。
春野サクラ。 普通の家に生まれた普通の少女。 特に秀でたものは持ち合わせていないと評価する。 天才的な頭脳と言うが、ソンナモノはシカマルに比べるまでもない。くの一でもあまり成績を振わなかったくせに何かと張り合ってきた少女は、なにかと浮かれ気味でその姿を見る度にイノは、忍者に本気でなりたいのかと、しばし首をかしげる場合が多かった。
それでも努力家であることをイノは認めていた。 血に頼らずに這い上がろうとする根性を好んでいた。
『がんばりなさいよー』 『う、うん!』
あの頃はまだ幼かった。 自分も彼女も。
「だけど所詮は普通の家に生まれて育った里の人間ってことね」 彼女も里の大人達の影響を多大に受けた子供なのだ。 ナルトを阻害するのをあたり前と考える人間なのだとイノは知る。 大嫌いな、里の大人と同じ行動に走った結果が、めのまえのこれだ。
彼女はナルトの心を傷つけた。 言葉というナイフで突き刺したのだ。
『このバケモノッ!! 私達を騙してたのねッ!!』
疑いもせずに降りおろした凶器にナルトは殺された。 否定されたナルトは抵抗すらしなかった。 ………信じていたのだ。
なぜ、こうも信じたのか。 ナルトにかけた言葉はなんだったのか……。
一一一一一ナルトが何を隠しているか知らないけれど、私達はそんなに信用ない?!!
一一一一一どんなお前でもナルトはナルトだろ?
一一一一一いつか話してくれ‥‥‥
そう、言った二人。 それを信じたいと、ナルトは言った。 あの言葉を最後まで信じてみる、と。
『俺が死ぬ時は一一一一』
条件は満たされて、ナルトは死んだ。 己に厳しく課した彼の言葉が甦る。
『もしも俺が死ぬ事になっても手はだすなよ?』
静かに、静かにただそれを約束させた。 三人は抵抗したが、結局はナルトに逆らえない。 彼の意志を踏みにじることが出来なかったからだ。
側にいるのは自分の意志だった。 それを黙認してくれたナルトの言葉。 はじめての要求だったこともあって、三人は渋々ながら了承した。
『お前らは黙って見ていろ』
一一一一一一時が来ても。
その言葉どおりになってしまった。 彼の望みどおりに………。
「約束……するんじゃなかったぜ」 「ナルトのばか………」 「ホントに好きにして逝っちゃったね」
残った者達は、突きつけられた現実を受け入れるしかなかった。 例えそれが永遠の離別だとしても一一一一。
彼が、そう望んだから。
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2005年08月23日(火) |
.....楽園1/お試し版(スレナル*死にネタ) |
ずっと思っていた。 こうなればいい、こうならなければいいと。
けれど残酷な現実が、夢を打ち砕く。 一一一一一所詮は戯れ言。
解っていた。 そんなことちゃんと、わかってた。
わかってたから、大丈夫………。
そっと、少年は目を閉じた。 蒼天を映した色は二度と浮かぶことはなかった。
「ちょっと! それホントでしょーね!!」 「こんな嘘、冗談でも言うわけねーだろっ!!」 「二人とも! 喧嘩しないでよー!!」
物凄い速さで三つの影が駆け抜ける。 建物を飛び越し邪魔なものを蹴散らして、黒いフードに仮面を被った姿が木ノ葉の里へ向けて、疾走している。あまりにも速すぎて一般人どころか同じ同業者でも見抜けないほどの瞬足は、まさに暴風。あっという間に里の入り口へと辿り着いた。 門をくぐることはしない。そのまま飛び越して先へと進む。 警備していた暗部はその姿を見ることはなかった。 止まることはしない。 行く先はすでに知っているからだ。
「くそっ! 莫迦共がッ!!」
先頭を走る影が吐き捨てた。 たった一つの知らせで全てを見通した。 予測じゃない。結果だ。 解り過ぎる事実に、普段はめったに感情を現さない少年が憤慨する。仮面から覗く瞳に苛烈なまでの炎が踊り狂っているのが見える。そこには全てに向けられた憎しみしかない。 追従する二つの影も同じだ。 「ここまで愚かだとは思ってなかったわ」 冷たい少女の声が答える。 「ボクは始めから反対したよ……」 普段どおりの口調で答えるのは最後尾の少年だ。
ただ、彼等には温度差があり過ぎるだけ。 先頭の彼が灼熱の炎なら、少女はは凍える刃だ。 その瞳に人間的な感情は見あたらない。 最後尾の彼は怒りではなく、哀しみに満ちている。 怒りを向ける対象など論外だとばかりに眼中にない。 彼にとっては唯一人だけ。その人以外は考える価値もないから、感情を向けることはなかった。 それぞれ違う温度差を持ちながら三人はまとまっている。 一人を中心に、動いていた。
「失うわけにはいかねーんだよ!」 「あたり前よ」 「全てを引き換えにしても守らなくちゃ」
脳裏に浮かぶのは何よりも大切な存在。 自分達の全てと言ってもいい。 命すら捧げた至高の存在。 彼にだけ、屈するのを認めた。
そう、火影にすら膝をつくことはなかった自分達。 契約によって築かれた火影との関係は対等で、一一一一唯一無二の存在は、彼だけだった。
『好きにすればいい』
そっけない態度で縛ることをしない彼。 彼になら縛られても構わないと思い願っていたが、決して彼は他人を支配することはなかった。自身は理不尽なまでの怨嗟の鎖に縛られていたというのに……。 憎しみと暴力に晒されても、彼は一度として憎しみを向けることはなかった。
強い人。 強くて、儚いまでに未練のない人であった。 暗闇に落とされても染まらずに立っていた孤高の人。 凛と、独りで立つ強さを持っていたが為に、他人を必要としなかった。
『俺は一人でも平気だ。お前らが付き従ういわれはない』 そういって、突き放す。 自分だけがいつもいつも血を流して痛みを享受していた。
まぁ、そこで諦めるほどの根性なしはいなかったが…。 三人ともが主張した。
『お前が強いのは知ってる。側にと、望んでるのはこっちだと承知して、俺達はここにいるんだよ』 『うん。好きにしていいって言ったから好きにしたの。付きまとうのも従うのも自分の意志で決めたの。ここにいたいって、そう思ったから』 『だからさ、気にしないでよ。ボク達も好き勝手にやるからさ』
はじめての主張が三人とも同じという奇跡に笑った。 三人で居たのは単なる親同士の付き合いからで、本当に相性が良かったわけじゃない。だらだらとしていたらこうなっていただけだ。 普段はけっこう三人ともバラバラだし。性格なんてまったく違うし。意見も対立することも多く、三竦みの状態になるのが常であった。
そんな彼等がまとまったのは偶然という奇跡に他ならない。 たった一人の彼の側にいたいと、考えが同じになったのは同じ時期という一致にこの時ばかりはお互いに吃驚したほどだ。この一線だけは譲れないと主張したものが同じという奇跡。こんな奇跡はこれから先ないだろう。こんな幸せは、きっと、ない。
だからこそ失うのを恐れた。 奪われるのを恐怖した。
「「「ナルトッ!!」」」
差し出した手は空を切った。 掴もうとした指先がすり抜け、大切な存在を掴むことはできなかった。
一瞬だけ三人の方へと、視線が向いた。 その口元が笑んでいたのがせめてもの救い。
一一一一一一一、一一一一。
声にならなかった言葉が心の奥に堕ちた。 それは三人だけに贈られた言葉だった。
静かに佇む三つの影は、二度と起き上がることのない少年を見つめていた。失ってしまった金色の少年だけを……。
「やったぞっ!! 狐は死んだッ!!」 「これで安心して眠れるわッ!!」 「ああ……ありがとう!! 貴方達ッ!!」
歓声が広がり大きくなる。それは木ノ葉を揺るがすほどの大きなものとなった。歓喜の歌声。勝利に浮かれる愚か者達の雄叫びだ。 肩を叩きあいながら喜ぶ上忍達。 抱きしめあう里の大人達。 笑顔で話会っているのは大人の影響を受けた子供達だ。
「さすがは『うちは』ね。里の英雄だわ!」 「あの忌々しい狐を殺してくれた!」 「敵討ちはようやく、成されたぞ!!」 「凄いねー、やっつけちゃったよv カッコイー」
「…………。」 「…………」 「……………。」
彼はいつだって痛みを受けていた。 恨みも泣き言もいわず耐えていた。
それを一一一一一
殺された。 殺された。
理不尽に、奪われた。
「なんで!? なんで笑ってるのよ………サクラ」 「サスケのヤロー……自分の言った言葉も忘れやがったのか!?」 「………担当上忍も笑ってるね」
かたりと、仮面が落ちた。 怒りを露にする顔。 能面のような顔。 悲しみに耐える顔。 三つの影は今、静かに倒れているナルトの方へと歩きだした。
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