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徒然帳 目次過去未来
2004年04月01日(木) ......確信 (キンシン)



キンタローはシンタローが、あの少年の元に行きたがっているのを知っていた。
ふと空を見上げたその瞳に写る青に、何を思い浮かべているのは容易に想像できた。
ずっと一緒にいたのだ。
同じものを見て、聞いて、それぞれ考えて。
彼にとってあの場所は楽園とも呼べるべき場所だった。
誰も彼も拒否していたのに、あの少年だけは違った。
心の奥に入ることを許した少年。


パプワ‥‥‥



「‥‥‥」
「どうした?キンタロー」
「‥‥‥」
キンタローは無言でシンタローを抱き締めた。

何時の間にか、誰よりも幸せにしたいと、腕の中の人物を想ってしまった。
彼の望みを統べて叶えてやりたいほどにシンタロ−のことばかり考えている。
それこそ毎日、毎日だ。

やがてそれは一方的なモノでは不満になっていった。
与えた分だけ欲しくなった。

心の奥で願ってしまう。
シンタローがいて欲しいと。ただそれだけを‥‥。
だがそれこそが難しいと知っている。
願う、祈る。
無駄になるぐらいくり返した。



でもシンタロ−の心は‥‥‥



「こうしていると落ち着くからもう少しだけ‥‥すまない」
「‥‥‥仕方ねぇな」
シンタロ−は苦笑しながらキンタロ−の好きなようにさせてくれる。
ちゃんと優遇してくれる優しい存在。

(一番を望んではいけないのかだろうか‥‥?)

今ではこんなにも優しいシンタローを手放せなくなってしまった。
こんなにも心地いい場所は知らないから手放せない。
きっとこれから探してもシンタロ−以上に優しい場所は見つからないだろう。出会えたこそが奇跡にひとしいのだから。

だから、きっと‥‥。
きっと、彼が泣いて懇願しても自分の側から離すことなど出来ないのだと、キンタロ−は確信している。


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