徒然帳
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2004年01月07日(水) |
.....七草の節供(ハオ葉)★ |
それは正月のある朝の事だった。 毎年、毎年の事なのだが、いかんせん人間というものは忘れやすく出来ている。記憶に強い出来事‥‥例えば夏休み、春休み。数日前まで正月に大晦日。冬の一大イベントのひとつ、クリスマスに限っては忘れようにも世間がその一色に染まってしまうが為に、否応がなしに記憶から削除される事はない。だから有名な、誰もが知る年間行事のなかで大きなイベントと称される記念日は忘れようがなかった。
けれど。 確実に忘れてしまうものもある。 そんなに大切じゃない為に。つい、うっかり‥‥なんて事はよくある事だ。 誰もが知る有名な日なのに、ホントに忘れてしまうような影の薄い日で、日頃から家事をしている人にかかわりがある為に、台所に立つことも少ない人には縁が薄い日だろうと、かなり昔に母親が笑っていたのを思い出した。
朝、起きて。 寝ぼけまなこで挨拶しながら食卓に座る。けれどこの日ばかりはいつもと違う様相がまっているのだ。 暖かい部屋のテーブルのど真ん中。 ぐつぐつと茹った土なべの中身。その中身を見て、 『ああ、今日は‥‥』と思い出す人が多いのではないのだろうか。
1月7日、七草がゆの日。 正月にたくさん餅や御馳走を食べて疲れたお腹を休ませる為に、消化の良いお粥と青い物を食べるというのが現在の一般的な解釈になっている。 そこに無病息災になるとか、寿命が延びるとかそんないわれもあるだろうが、きっと食べてるほとんどの人がそんな事は二の次であるのは事実だろう。
だって、七草囃子って知ってます? (私は知らんかった) しかも七草は前日に野山で摘んで来るのが習わしだそうです。 スーパーでお手軽に『七草がゆセット』なんつーもんが売ってる世の中で、しかも1月は寒い!そんな日に土手やら草木の生えた場所に好き好んで行く人間は稀少価値のごとく少ないだろう。
6日の夜に(日にちは正直さだかではない‥‥) まな板に七草をのせ、包丁で7回叩き。 『七草ナズナ、唐土の鳥が日本の土地に渡らぬ先に、セリこらたたきのタラたたき』
‥‥‥‥。 これって検索したけど最初と最後(セリ〜以降)の歌詞が違って伝わっているものが多くて、どれが正式なものかは判らずじまいでした。いや、判ってもやらないと思うからいいんだけどさ。 鳥は下界からやって来るもので、疫病を運んでくるとも言われているから無病息災を願う人達はこの唄を歌ったとされているらしいです。 ちなみに『鳥追い歌』と言って、こちらは庶民(とくに農耕)の人達が穀物関係で害となる鳥を追う為にしていた行事みたいです。
...........................駄文。
「平安の頃も七草ってあったんだろーか‥‥?」 「んーモノは違うけど七草の節句はあったよ」 「お、流石は千年ジジ‥‥」 「ん?何か言ったかい?!」 「おわっ!!背後から抱きつくなーー!!!ちょ、ちょーまて!!どこ、触っ‥‥‥!!!!!」 ズダンッ★ 「あっぶないなぁ〜〜〜」 「いきなり不埒な事するお前が悪いんよーーー!!!!」 「だって葉が変な事言うからだろう?」
※包丁握っている人の背後から抱きつく+愛撫は止めましょう。 葉君たまらず包丁を足元に落としてしまいました(笑)
「ほら、危ないよ」 そう言いながらハオは包丁を拾い上げて、葉に手渡した。 「それはお前が‥‥」 「はいはい。僕が悪かったよ。もう、しないからここにいてもイイよね?」 「む‥‥しないならいいけど」 「うん。しない、しない」
ニコニコと笑いながらハオは何気なくまな板に乗っているモノを見た。七草がゆだから当然まな板の上にのっているのは七つの草で、その予想をしていたハオは途端にその表情が変わった。 その見事なまでの変わりようは、いつもとは違って酷く驚きを現していて、葉はめったに見れない珍しいハオの表情を見る事となり、ちょっと得した気分になっていた。 (うわ、すっげぇ珍しいなぁ。ハオ‥‥何に驚いとんだ??) その彼が大きく目を見開いて凝視するのは‥‥‥
「ねぇ、葉。これって‥‥‥」 「ん、七草がゆの材料」 「‥‥‥‥七草?」 「あー‥‥適当な草っ葉っていうんが正解だな」 「適当って‥‥‥」 「だって刻んじまえば判らんし」 「確かに七草も刻めばただの緑色した菜っ葉類だね」 「ん、だろ?」
シレっと答えた葉がこれから調理しようとしていたまな板の上にあったのは、外国暮しが長くてすっかりと七草の日を忘れていたハオですら七草ではないだろうと判るような代物がのっかっていた。 セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ、春の七草と一般的には知られているが、これらを刻んでしまえば本当に菜っ葉でしかないだろう。 (ちなみに刻まれた菜っ葉を看破する事は私には出来ない/管理人) 数年前まではきちんとしたのを葉も用意していたが、フトした時にもしかしたら違うもので代用できるのではないかと考えて、ものは試しにと代用品を出したが誰からも文句は出なかった。そして結果、その年から毎年七草がゆは代用品で作られる事なったらしい。 葉が用意したのは正月に使ったセリ、三つ葉。チンゲンサイに多分スズナ、スズシロの代用品であろうダイコンがのっかっていた。
「煮込んじまえば判らんし、どうせ1日限りだから誰も文句言わんのは実正ずみだ」 「そうだけどね‥‥まぁ、時代が違えば中身も違うと思えばいいのかな?」 苦笑したハオに葉が不思議そうに訪ねた。 「さっきも何かそんなこと言っとったけど葉王の時は違ったんか?」 葉王の時。つまりは平安時代の事である。 「ああ、用意されてた七種がね。米、粟、稗、蓑、胡麻、キビ、小豆‥‥ってね。万葉集にもそれらしい事が詠まれていたらしいし。今の七草になったのは奈良時代って聞いた事があるよ」 「へぇー‥‥流石は」 「ん?流石は?」 葉君、にこりと笑うハオの笑顔の中の凄みに気づいたのか、先程の失言を思い出したようである。1度目の間違いには寛容なハオは二度目には容赦しない性格である。うっかりが多い葉はそれで泣かされる事が暫し。今年こそはそんなことは遠慮したい葉の目が心なし泳いでいたり。
「流石は、ハオだなぁっと‥‥‥」
※ちなみにこの七草がゆは当家のまんまだ。 (母よ‥‥‥T□T)
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2004年01月02日(金) |
.....晴れた日に(ハオ葉/別館にて掲載済)★ |
晴れた空は気持ちがいい。
真っ青に広がる色は気分爽快で清清しい。 グラデーションではなくて青色一色というところが開放感があると思うんよ。 白い色など何処にも見えない、そんな空。 心地よい風が吹いていて、さらに気分は上々。
こんな日はさぞかし洗濯物が乾くだろう。
「うん、すげぇ洗濯日和だな」
パンッっと音をたてた庭先で、葉は上機嫌に洗濯物を干してゆく。 もちろん鼻歌つきで、今日の動きは軽やかだ。 なんてたってここのところ雨続きで室内干しが日常となっていたのだ。雨の日の洗濯物ほど鬱陶しいものはない。そう答えたのは同居人で事実上の主であるアンナだった。
最初の1日目などは気にならなかった。 けれどこう……雨が続くと洗濯物は増えるいっぽうになる。乾かない洗濯物の他に新たに洗濯したものが増え、室内の至る所にロープを張って洗濯物を干していけば、生乾きの何とも言えない匂いが部屋に充満する事となる。 最近はやりの『生乾きでも匂わない〜』とテレビで宣伝している洗剤があれば良いのだが、麻倉家の使用している洗剤の購入金額はバーゲンセールの200円以下。もしくは新聞の勧誘からアンナが(脅して)せしめたタダの粉洗剤である。 日常品に金をかけるなどもっての他。財布の紐を握っているのがアンナであれば、普通の洗剤も買えない台所事情があったりするのだ。 アンナももちろん我慢していた。 けれど早くも3日目あたりから不機嫌モードになり始め、それが急降下していったのは言うまでもない。文句のオンパレードを聞かされていた葉は、更に不運な事に別事情でも悩まされ続けていた。
毎日のようにやって来てはデートに誘おうとする自称、未来王。 それは朝だろうが、昼だろうが、夜だろうが関係なくやって来るのだ。 OKするまで居座り続けて葉の耳もとで、しきりに「デートしよう?」と同じ言葉を壊れたレコーダーのように繰り返す行動は、雨で機嫌が悪く八つ当たりをされていた葉にとっては拷問に近い。 いうなれば、前門のアンナに後門のハオだろうか‥‥。 毎日、毎日。アンナの八つ当たりを受けて、それをやり過ごすと今度はハオの執拗な誘い文句。これでは日頃『温厚』である葉でも気が滅入る。
総てを放り出してにげだそうか‥‥‥。 本気でそんな事を考えていた矢先にテレビでは後数週間は悪天候。崩れたままだと報じていた天気予報を裏切って、見事快晴になってくれたのだった。 神様があまりに葉を不憫におもったのかどうかは定かではない。
朝起きた時の葉の機嫌の良さは半端ではなかった。 (これでアンナから解放される〜〜〜〜) 憂い事の半分が解消された嬉しさだろう。 朝からマメに動く葉の姿は真面目な主婦のようであった。
微かな湿り気と共に洗剤の香りが広がって風に流されてゆく。 久しぶりに見た太陽は眩しすぎな感じだが気持ちいい。 ハタハタと揺れる洗濯物も気持ちいい。 洗濯カゴを片手に葉は笑顔であった。
「やぁ、今日はずいぶんと機嫌が良さそうだね」
そんな何処にでもある日常の一コマ。 もちろん割って入ってきたのは日常的ではない登場をしたハオである。 空間から突如現れては、その度にいつも葉に『普通にやって来い』と言われている。なのでいつものように言われる事を条件反射のように想定したハオは、葉の珍しくも歓迎した言葉に思わず固まってしまった。
「おう、良く来たな!」
今日の葉の機嫌の良さは半端じゃない。 だから次に続けられた言葉にハオは驚愕をあらわにした。
「じゃぁさっそく、デートでもすっか?」
晴れた日は洗濯日和。 そしてなにより、デート日和?
開放感のあまりに葉は物凄く寛容になってしまったらしい。 その後、後悔する事になるのは数時間後だったらしいが……。
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