月のシズク
mamico



 静かな生活

ここ最近、自分でも驚くほど静かに生活している。
ちょうど季節の変わり目だからだろうか。

人に会うのも億劫で、会社から早めに帰った日も部屋で本ばかり読んでいる。
テレビも見ないし、CDもラジオも聴かなくなった。
ごはんを食べて、お風呂に入って、本を読む。
そしてときどきパソコンを開く。

とてもとても静かな生活。
穏やかな生活、というのは少し違うと思う。
音もなく、自分の気配だけを感じながら生きる日々。




2001年08月31日(金)



 夕立

部屋に戻って玄関のドアに鍵をかけたとたん、
バラバラバラと激しい音が響く。

ヒョウが降っているのかとおもって、もう一度鍵を開けて外をのぞく。
眼に見えるくらいの大粒の雨が、お向かいのトタン屋根を打ち鳴らしている。
たっぷりと湿り気を帯びた空気がかき乱される。

こうして少しずつ、夏は秋に追い出されてしまうのですね。





2001年08月28日(火)



 墨汁の匂い

長野の山あいに住む叔父からメールが届いた。
「初めてのメールです」と書かれた電子文字に、叔父の達筆な書が重なる。
たっぷりと墨を吸った筆で勢いよく、丁寧に書かれた文字。
うっとりするほど美しく、私は叔父からいただいた封書の宛名をときどき眺める。

叔父のメールは手紙のときと同様、四季の移ろいがつぶさにしたためられ、
簡潔で勢いよく、そしてちょうど良い体温を感じる。ぬくもりのある言葉。
感じることや想うことが似ているのは、どういう因果なのだろう。

初夏に訪ねたときに嗅いだ新鮮な土の匂いや、薄緑色の山々を思い出す。
ああ、ほんとうにメールって便利なこと。
ぐにゃぐにゃした私のイマジネーションは、
自由自在に世界を見せてくれるようだ。




2001年08月27日(月)



 夏休み終了

バリに引き続き、里帰りからも戻って参りました。
誰とも会わず(出不精大発揮)祖父の庭に散水したり(広いと一苦労)
親孝行と称して食事を振る舞ってみたり。とろとろと過ごす日々更新。

夏休み中の日曜の夕方ともなると、羽田空港は行く人、戻る人で
ごったがえしていますね。さながら年始年末、お盆の海外ラッシュ
のようでもありましした。空港っておもしろい場所ですよね。
なんだかしあわせ。

さ、明日からが私の現実。
がんばりまっしょい。




2001年08月26日(日)



 腐っています

バリから帰ってきて、当然のことかもしれないけれど、
生活ペースがうまく掴めずだらだら腐っています。

来週まで長期休暇を頂いているので早起きする必要もなく、激しく降る雨
を眺めつつ数時間経過。悪臭を放つ寸前のウェットスーツを引っ張り出して
浴室で洗ったり、お香を焚いてみたりするけれど、なかなかしゃんとしない。
気が付いたら、朝もお昼も食べ忘れ夕方になっていました。

後輩くんたちが吉祥寺に集結するというので、何とかお化粧をして
支度をしてみる。2週間、全くお化粧をしていなかったので、手順が
思い出せずやたら時間がかかってしまった。

なじみのメキシカン・バーに行って、なじみのスタッフと話していると
やっと私が戻ってきたかんじ。そっか、帰ってきてからぜんぜん人と
喋ってなかったもんな。

気が付いたら5時間近く飲み、喰い、喋り、いつものようにお店を最後に出た。
ああ、やっと東京に帰ってきたなというかんじ。
さ、明日からもっとしゃんとして生きなきゃ。

ちなみにキーボードを打つスピードも減速気味でございますのよ。



2001年08月23日(木)



 桃の季節

最近、自分でも呆れるくらい桃ばかり食べている。
果物ナイフで薄く皮を剥ぎ、大きめにカットしていただく。
あるいは、丸のまま手をぐちゅぐちゅに濡らしながらかぶりつく。
甘い汁がひじまでしたたって、そこらじゅうベトベトになるのもかまわず、
かぶりつく。

いくら四季折々の食べ物が一年中手に入るようになったとはいえ、
たべものの旬はやはり短い。春先はイチゴばかり食べていたし、
少し前までは枇杷を、もうすぐ梨と葡萄ばかり食べるのだろう。
残暑が厳しくなると、私の主食は完全に果物だけになってしまう。
夏ばてをしないはずがない。

そして今夜も、手をぬるぬるにしながら桃に歯跡を残す。
甘い水がしたたって、部屋中がその甘美な匂いに満たされる。

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そして今年も、あの8月6日の朝を思って長い祈りを捧げる。




2001年08月06日(月)



 夏の音

夕方、カーテンを半分閉めてうとうとしていたら、澄んだ音が響いてきた。
チリーン、チリ、リーン

ベランダにつり下げた風鈴は、先週末に銀座の風鈴屋さんの屋台で買ったものだ。
正しい呼び方は知らないけれど、風鈴をたくさんぶら下げて、白足袋のおじさん
が歩いて売るあれだ。会社の同僚たちとほろ酔い気分で東京駅に向かう途中に
聞こえた風鈴の音に、私の歩みは完全に止まってしまった。

そんな私を見て呆れた(哀れに思った?)上司が気前良く買ってくれたものだ。
おじさんに耳元で鳴らしてもらったその音は、少し低めのDis(レ#)だった。

風が揺らす風鈴の音は、気の早い夏の終わりを告げているようでせつない。
あまり関係ないけれど、詩は半身浴をしながら読むのに適していると思う。
英語の詩も日本語の詩も、もちろん声を出して読むのだけど。



2001年08月05日(日)



 Junk Music

またまたオンガクの話です。興味のないひとは、引き続き読み飛ばしてください。

新宿のPIT INNで「渋サ知ラズ」というバンド?グループ?集団?
のライブを聴いてきました。ホーンセッションとリズム隊、多種多様な
ダンサーズの総勢20名近い集団です。とにかくジャムがうまい。
ああ、やってるやってる、というかんじ。ダンスは、暗黒舞踏あり、
キャバレーあり、民族ダンスあり、白塗りありでちょっと怖い。

地下の小屋はクーラーが微妙にしか効いてなくて、演奏者も客も
水を浴びたように汗だく。おまけに空調も奇妙にしか回っておらず、
酸素が薄くてめまいがした。

いろんなオンガクを聞くけれど、これはいい意味でのジャンク・ミュージック
だと思う。「がらくた、廃物」ではなく、音も文化も人間味もブレンドされた
ジャンクな音楽。わたくし、わりに嫌いではなくってよ(笑)。



2001年08月02日(木)



 Energetic Music

またオンガクの話です。興味のないひとは読み飛ばしてください。

池袋の芸術劇場で佐渡裕指揮、PMFオーケストラの本番を聴いてきました。
聴く前から、チケットを取ってくれたトモダチに何度も
「めちゃめちゃすごいブラ1が聴けるかも」と洗脳されていたのですが、
実際に聴いた感想は「やばかった」です。やばいくらい感動的な演奏。
素晴らしい演奏の後には、ボキャ貧になってしまう私ですが、
ほんと、やばかった。

佐渡さんはフランスで今もっともホットな指揮者で、バーンスタインや
小沢征爾らに師事していた。テレビの特集でも何度かとりあげられていたので、
ご存知の方も多いかもしれない。とにかく熱い男で、それはそれは
ダイナミックかつ繊細な指揮をなさる。

PMFオーケストラとは、世界各国から厳しいオーディションで選ばれた、
次世代を担う若手音楽家によって構成されている。毎年編成が変わり、
夏季限定の若いオーケストラ(ほとんどが10代、20代)なのである。

遠目からも肌はぴちぴちしているし、眼の輝きに光が入っている。
ああ、これが若さなのかと思い知らされる。普段は座らないバルコニー席
(ステージ横上方の一列)から舞台をみると、演奏家たちの表情や佐渡さんの
指揮する指先、オーケストラ全体から発せられるうねりのような呼吸が体感
できる。こりゃすごい。そんなオーケストラが奏でるブラームスの交響曲
第一番は、音の深さ厚さ響きが立体になって迫ってきた。
それになんといっても、若さからこぼれ落ちる飛沫のような情熱。

少し前に、某有名国立大学のブラームスを聴いたが、あれは老いた若者の
演奏だった。ラジオ体操のような指揮と、熱のカケラも感じられない演奏。
なのに客席は超満員。拍手する気にもなれず、そそくさと退席した。
つまらなく平面的なブラームスだった。

もちろん成熟、熟成した音楽も世の中にはたくさんある。
でも若いうちから変に熟した音楽は、逆につまらなく感じることもある。
あの全身から発せられる強いエネルギーや、まっすぐな音は
やはり若さの専売特許だと思うのだ。

こんな音楽を聴くと、ますますブラームスを愛してしまいそうだ。




2001年08月01日(水)
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