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2002年10月30日(水)   ハリー・ポッターと炎のゴブレット(下)/J.K.ローリング


読み終わっていましました。これでまた第5巻"不死鳥の勲章"まで1年以上待たなければいけないわけですね。
第1の課題をすばらしい技でクリアしたハリー。元に戻ったロンとの関係に安心感を感じるハリーに課される第2、第3課題は…。そして"あの人"との直接対決の行方は。
これまでの1〜3巻とは全然違う印象。今回はもう展開が早い早い。まるでクィディッチ。伏線もばりばりはってあるし、もっとずっとおもしろくなっていると感じました。
これだけ売れているのに質が落ちないなんて、著者のローリングさんすごい。
否応なく巻き込まれていく"三大魔法学校対抗試合"。その影にはやはり、あのヴォルデモート卿。まさかあの人が、ヴォルデモート卿の配下の魔法使いだったなんて…。こんなに騙されっぱなしで、よくハリーは人間不信になりませんね。
ハリーとケンカしてしまったロンの気持ちとか、屋敷しもべ妖精への扱いに憤るハーマイオニーとか、やっぱりかっこいいシリウスとか、出生の秘密が明かされるハグリットとか、予想どおりだけど意外だったスネイプ先生の過去とか、犠牲になってしまったハンサムな彼とか、怒髪天なダンブルドア先生とか、やっぱりすごかったハリーとか、もう見所もりもりでした。今回は泣きますよ、きっと。
物語も、これまでのような完結した終わり方じゃなくて、続くってかんじで終わってますし、いよいよ魔法界全体が動き出しますね。
私的には、帯にあるハリーの恋よりも、ロンとハーマイオニーの関係の方が気になるんですが…。どうなっていくんでしょうね。



「二人一緒に取ろう。(略)二人引き分けだ」


J.K.ローリング:ハリー・ポッターと炎のゴブレット(下),p.427,静山社.



2002年10月29日(火)   君の夢はもう見ない/五條瑛


'99年から不定期に雑誌掲載されたいた連作短編、中文研シリーズの単行本化。待ちに待ちましたよ。
もと"会社"のスパイで、現在は中華文化思想研究所の所長を務める仲上。彼のもとに来る数々の手紙には、かつての相棒ラウル・ホウが再び動き出したことが記されていた。
過去にラウルと袂を分かった原因は何なのか。仲上は再びあの世界へ戻ってしまうのか。
この著者、五條氏は雑誌掲載時よりかなり加筆されて単行本化する方なのですが、今回もかなり加筆されていますね。1つ1つバラバラだったトラブルが、ラウル・ホウというキィワードできれいにつながっています。
でも、そのトラブルがどうのっていうよりもむしろ、仲上さんとラウルの関係が気になる。"ふたりで一人前"なんて言うほどのコンビを組んでいた頃のお話も読んでみたいですね。
8つの短編が収録されているのですが、一番好きなのは"薔薇の行方"かな。京劇俳優さんの手の描写がとってもきれいで艶かしくすてきです。
で、にやり、としてしまったポイントは、鉱物シリーズでは情けない葉山がちょっとだけ出てて、しかもラリーさん視点では優秀そう(失礼な)に書かれてること。



懐かしくないと言えば嘘になる。
お前に惹かれていたんだ。おそらく、お前が俺に惹かれていたのと同じほどに。(略)
だが、いまとなってはあれは夢だ。ただの、夢。(略)
俺は戻らない。お前の夢も見ない。もう二度と――。


五條瑛:君の夢はもう見ない,p.329,集英社.



2002年10月27日(日)   ハリー・ポッターと炎のゴブレット(上)/J.K.ローリング


ハリーは14歳になった。そしてまたホグワーツの新しい1年がスタートする。
およそ700年前まで続いた"三大魔法学校対抗試合"が今年復活するという。各校の代表選手はたった1名、しかも17才以上が選手資格。ホグワーツの代表はいったい誰に?
(下巻に続く)



「君が最高だったさ、だれもかなわない(略)」


J.K.ローリング:ハリー・ポッターと炎のゴブレット(上),p.552,静山社.



2002年10月14日(月)   双樹に赤 鴉の暗 薬屋探偵妖綺談/高里椎奈


薬屋さんシリーズ第9段。
何をやってもうまくいかないサラリーマン唐沢のもとに現れたふたりの子鬼。ある事件の結末に疑問を感じ、真相を知ろうと動く高遠。座木の硝子細工を壊してしまい、どうにかしようとする秋とリベザル。
変わってしまうものもある、変わらないものもある。自分は?自分の中にあるものは?
私、あらすじ書くの下手で苦手なんですけど、このシリーズあらすじ書くのが難しい。わけわかりませんね。何書いても、ネタバレしそうだし。
ラストの感じで、もしやこれでこのシリーズ終わり?とも思ってしまったんですけど、どうなんでしょう。
好みの分かれるシリーズだとは思いますけど、私は好きなんですよね。ぼやっとして、はっきりと書き切らない、ご想像にお任せってかんじの雰囲気が。
このお話、時間軸の関係が難しいですけど、これって結局、過去と現実が交差しているんですよね。でもって、唐沢さんのお姉さんが高遠のお母さんてことなんですよね。で、その間も、やっぱり秋は変わらず秋なわけで。
変わるものと、変わらないもの、どちらが善いか悪いかってことではないんですよね、きっと。でもちょっと痛い話でした。



「正義って本来は自分の中に持ち続ける物で、大切なのは自分が己の正義を裏切らないことじゃないのかな」


高里椎奈:双樹に赤 鴉の暗 薬屋探偵妖綺談,p.234,講談社.



2002年10月08日(火)   エンジェル/石田衣良


純一が意識を取り戻したとき、自分は何者かに殺害され、埋められていた。純一はそれを空中から見ていた。
死後の純一には殺される前2年間の記憶が全く思い出せない。
なぜ自分は殺されたのか。誰に殺されたのか。純一はそれを知るため、死後の生を送る。
死後の生なんてすごくドロドロとしていそうなのに、淡々と語られるお話。
でも、淡々としているからこそ、さらりと流れていく場面場面が印象的で深いです。
純一が過去にフラッシュバックして、自分の生まれる瞬間を見る場面があるんですけど、どんな気持ちなんでしょうね。これからその子におこることを全て知っている自分が、自分の誕生を見る、というのは。うれしいとかいうより、多分切ないんじゃないかな、と思うのですが。
もし純一みたいに、死んでから自分の過去を見れるとしても、私は見たくないですけどね。



ぼくは死んでしまった今、初めて思うぞんぶんに生きている。(略)
もっともっと生きたい。正確には、もっと死んでいたい。
死のなかの「生」の醍醐味を見極めたい。(略)
死後の生がいつまでも続くことを、純一はひそかに望んでいた。


石田衣良:エンジェル,p.245-246,集英社.



2002年10月06日(日)   永遠の娘 ハイスクール・オーラバスター/若木未生


シリーズ22冊目。
炎将配下の手によって、泥に感染した術者たち。しかし、泥の砦の完成を前に、直接対峙する炎将と加羅王。
<炎将篇>クライマックス。
結局、いつか誰かの手で消されてしまうだろうとは思っていましたが、まさか加羅王じきじきに手を下されるとは。
それが忍さまなりの誠意なんですかね。でも諒ちゃん言わせれば、"ただのでしゃばり"か(笑)。
ハルオ、最後まで誇り高い人でした。今後彼がもう出てこないと思うと、寂しいし、もの足りない。
でも、妖者にとっては、"ひとときの記憶が、永久の形見"。
猫ちゃんだけにはその形見が残ったはず。それが羨ましくもあり…。
で、次は加速度的に暴走している里見さんですね。もう、どんどんぶっ壊れちゃって下さい。大好きなんで、何してもOKです。



この世に、あらかじめ、望みどおりになるものなどはない。
だからこそ、望みながら生きるのだ。はかない望みを果たすために、か弱き力を尽くし、生きるのだ。すべてが苦難であるから、僥倖をよろこぶのだ。
そうして、真に奇蹟の意味を知り。
貴きものを見る。


若木未生:永遠の娘 ハイスクール・オーラバスター,p.194,集英社.



2002年10月04日(金)   地底に咲く花/五條瑛


ミステリー・アンソロジーに収録されている短編。
安い風俗店で出会った青いマニキュアの女。女は誰かに似ていた。
短編でもやっぱり五條テイストです。
隠れなきゃ生きていけない人間もいる。でもそのことで相手を哀れんだりするのは違うんだな、と。
気づかないフリしているのが、一番優しいんでしょうかね。それもなんだか虚しいですけど。



「(前略)人目につく場所がダメなら地の底で咲くしかないじゃない。どうせ誰も見ることができない花なら、地上にはない珍しい色がいい」


五條瑛:地底に咲く花(紅迷宮 結城信孝編 収録),p.73,祥伝社.



2002年10月01日(火)   あなたは虚人と星に舞う The Night Watch against The Star-Crossed Star/上遠野浩平


史上最強の戦略兵器<虚人>の部品で創られている世界。その虚人のコア(操縦者)として創られたキョウ。キョウは目覚めた瞬間から、世界を消滅させないために人間と殺し合う運命にあった。
ナイトウォッチ・シリーズの第3弾。
このシリーズって、表紙裏に"三部作"ってあるんですけど、この3作目で完結なんでしょうか。確かに、3つの作品のリンクがわかったし、微妙にブギーさんを仄めかしてあったりして、終わりって言われればそんなかんじもするんですけど…。続きそうな雰囲気もあるし…。
このシリーズ、上遠野師氏の作品のなかでは、一番好みなので残念。特に、この方のタイトルがすごい好きです。

*ぼくらは虚空に夜を視る The NIght Watch into The Night Yawn
*わたしは虚夢に月を聴く The Night Watch under The Cold Moon
*あなたは虚人と星に舞う The Night Watch against The Star-Crossed Star



「意味があるとか、ないとか――真実であるとか、虚偽であるとか、そういう単純なものじゃないのよ、世界は。(略)世界にはきっと、存続し続けることそのものに、なにか価値があると思うのよ。(後略)」


上遠野浩平:あなたは虚人と星に舞う The Night Watch against The Star-Crossed Star,p.184,徳間書店.






ゆそか