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りょうちんのひとりごと
りょうちん
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2018年08月31日(金)
Vol.872 キューバで出会った女神

おはようございます。りょうちんです。

昨夏、俺らはキューバに行った。トロントで乗り継ぎ、ハバナまでは羽田から19時間。初日は宿泊予定地であるバラデロへ向かう予定だ。空港から始発駅があるカサブランカまでは、タクシーを飛ばした。
まずはここからハーシー線でマタンサスまで電車で行きたい。ただこのハーシー線は1日3便だけだから、早朝の便の次はお昼過ぎだ。簡素な駅舎に停車している小さな電車と数人の乗客が見えて、俺らは安心した。脆弱な電力事情を考えれば、電車が動かないことも十分に考えられたからだ。座席に座っていると、男性が話しかけてきた。どうやらこの電車、理由は不明だが終点のマタンサスまでは行かず途中のハーシー止まりらしい。ハーシーからはタクシーでマタンサスまで行ける、とも教えてくれた。
奇跡的に定刻通り出発した電車はハーシーに着くと、乗客全員が降ろされた。俺らは駅周辺を散策する。それにしてもハーシー、昔のチョコレート工場の跡地がある他に何もない。駅にいた人たちも、電車が戻って行ったあとはどこかに消えてしまった。教えられたタクシーも走っている気配はなく、時々来るバスもどれに乗ればいいかわからない。ホテルも店もない田舎の駅にぽつんと取り残された俺らは、途方に暮れるばかりだった。
踏切脇に立つおばさんに藁をもつかむ思いで声をかけ、マタンサスまで行きたいと伝える。彼女こそ女神だった。マタンサス行きのバスはここからはないが、少し先のサンタクルースからならバスが出ていると教えてくれた。そして踏切で止まった車に声をかけ、運転手と何やら交渉を始める。やがて俺らに向かって後部座席に乗れと促し、俺らのためにヒッチハイクしてくれたのだ。こうして俺らは思いがけない方法でサンタクルースまで行き、マタンサスを通り無事に目的地のバラデロまで行けたのだった。
幸先の良いスタートが切れて、その後も旅はずっと幸運続きだった。名前も聞けず写真も残せなかった彼女に改めてお礼を伝えるのはもう不可能に近いが、キューバで出会った女神のことを俺は一生忘れないだろう。