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りょうちんのひとりごと
りょうちん
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2013年01月31日(木)
Vol.801 紋付袴の成人式

おはようございます。りょうちんです。

日本男子の正装とされる紋付袴を、身につけたことはあるだろうか。実は俺、たった一度だけ紋付袴姿で一日を過ごしたことがある。今から20年前の、俺の成人式。
以前から、凛々しい紋付袴姿に俺はずっと憧れていた。考えてみれば、堂々と紋付袴を着られる日なんて、人生で成人式か自分の結婚式の2回くらいしかない。そのわずかなチャンスを逃すはもったいないではないか。そう思うと、おのずと決意は固まった。成人式の式典に参加する友達はみんなスーツで行くと言っていたが、そんなの関係ない。さっそく貸衣装で紋付袴のレンタルを調べてみると、5万円ほどの貸出料金が必要だという。たった一日だけ服を借りるのに5万円もの大金を払うのは貧乏学生だった俺にはかなり痛い出費だったが、それでも成人式は一生一度のおめでたい日だからと割り切って、がんばってバイトの量を増やして奮発した。
成人の日当日。朝からどしゃ降りの雨。近所の美容室へ紋付袴の着付けに向かう。すでにきれいにヘアメイクをした人や艶やかな振袖に身を包んだ新成人が何人かいたが、男は俺だけ。昔から顔見知りの美容室のおばさんの前でパンツ一丁になるのは恥ずかしかったが、「赤ちゃんの頃から知ってるけど、成人式かぁ…」なんてお決まりの台詞を感慨深く言うもんだから、俺はもう照れるしかなかった。
友達の車に便乗して、式典会場へ向かう。当時の会場はボロい市民体育館。隣にある高校のグラウンドが臨時駐車場になっていたが、朝からの雨で足元はひどくぬかるんでいた。なるだけ紋付袴を濡らさないように泥がつかないように歩こうとするものの、履き慣れない草履では困難だ。車を降りて体育館に着くまでにはすっかり濡れて、泥があちこちに跳ねてしまっていた。底冷えのする体育館で久しぶりに会った旧友や恩師は、俺の紋付袴姿を見て「バカ殿みたいだな!」と憎まれ口を叩いたけれど、そうやって相変わらず俺に絡んでくれるのがうれしかった。
あれから20年。俺も2度目の成人式を迎える年になった。その後紋付袴を着ることはないけれど、紋付袴の成人式は俺の中で大切な思い出になっている。