ぴんよろ日記
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2015年11月09日(月) 35年越し

 図録によれば、昭和55年5月27日ー6月8日。。
 あ、いまのヒコとおなじ年だ。小学校4年生。10歳になる年。
 今はもうなくなってしまった美術館で「川原慶賀展」を見た。
 長崎の古いものごとが好きな親に連れられて、薄暗い展示室で、ものすごく細い線で描かれた、昔の長崎の風景を見た。
 何の絵を見たのだろう。何枚も何枚も見たのだろうけど、具体的に何の絵だったかと言うよりも、その細かさと、くり返し襲ってくる「笑える感じ」を憶えている。
 それから、何度も何度も、展覧会の図録をめくった。そしてそのたびに笑った。ゲラゲラではなくて、くくく…という、含み笑いのような。
 そうして35年が経った。その間には、慶賀さんの番組の手伝いをするというような幸運もあったけれど、とにかく、あいかわらず、何十年も前の展覧会の図録を見てはクスクス笑うということを繰り返していた。
 学術的なことは、正直、今もわかってない。ある絵をパッと見て、フィッセル、ブロンホフ、シーボルト…誰のコレクションなのか言い当てる自信は50%くらいしかない。
 でも、とにかく慶賀さんの絵を、まとめたかった。もうひとりの、大好きな江戸時代の長崎人である、野口文龍さんの「長崎歳時記」と並べて、ある時期の…たぶん、長崎がいちばん「長崎らしい」ころだった長崎の人たちの、生活のアルバムとして。そしてそれは、これからどうなっていくかわからないこの国と人々の、あるひとつの「山河」として。
 いろいろ難しいこともあるから、最後まで気は抜けないけれど、どうにかこうにか、それが本というひとつの形になるのではないかというところまで、なんとかこぎつけた(はず)。
 実際に手にしたら、どんな気持ちになるんだろう…と思いつつ、まだまだ膨大な、35年越しの作業に身を投じる日々。(なんという至福!)


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