ぴんよろ日記
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2008年07月31日(木) むろぼぼしに願いを

 お店ページの原稿が、なかなか進まない。こう言っちゃ何だが、「この程度」のものなら、普通はいくらでも書ける。でも、これはあくまで、誰のものでもない自分の本の中で、自分にとっての「真実」だけで書こうとしているので、難しい。しかも、水増しなし。たとえいいところがあっても、それを150%にはしないことを課している。あくまで100%の中で、いつも行く(行けなくなると生活に支障をきたす)お店への愛を語ることが、これほど難しいとは!
 こうしてみると、世の中にあふれているお店についての記述が、自分が書いてきたものも含め、どれほど「褒め」に偏向しているかがよくわかる。「シェフのこだわり」「隠れ家的存在」「開放感あふれる店内」「そんな女将を慕って訪れるリピーターが跡を絶たない」…だいたい嘘か、(ライターの)怠慢だ。「表通りに面してない、さほど広くない店」が「隠れ家」なら、世の中、隠れ家の方が多いっちゅうねん! だいたいみんな、そんなに隠れるほど表に出とるんかい!

 夜、ベランダで洗濯物を干していたら、ピカッ!と流れ星を見た。その足下で、愛車・スカイラインGTRカルソニック仕様(トイザラスで3000円。シートを開けるとおもちゃ箱)を乗り回していたヒコに言ったら、かなり強い印象を受けたようだ。走って部屋に戻り、ダンナに報告している声が聞こえてきた。

ヒコ「せんたくしよったら、こわいのでてきた!こわいの!」
 (私が「うわっ!」なんて、激しく驚いていたので、怖いものだと思ったらしい)
ダンナ「なんが出てきたと?」
ヒコ「むろぼぼし!」

 言葉って、ほんと、耳からおぼえるんだなぁ…。
 むろぼぼし、か…。
 蓑笠かぶった福の神みたい。だったら意味だって合ってるぞ!

 本づくりのゴールが、かすかに、しかし確実に見えた日の夜。「むろぼぼし」を見たのは、きっと偶然じゃないはずだ。




2008年07月30日(水) 見積もり。

 昨日の夜はさすがによれよれになった。新しい仕事も、やってみることにした。(やっぱり)思っていたのと違って、むしろ、私がやりたいことをストレートにぶつけてよさそうだった。自分についての見積もりを低く取っていたのは自分だったことがわかった。そのへん、たたきあげ自営業者の哀しさであろう。
 今日は一転、家にこもる日。コツコツがんばろう。



2008年07月29日(火) きりまわしの日

 今日は、授乳かよ!と突っ込みたくなるほど、2時間おきに用件が詰めてしまったが、乗り切れるだろうか。乗り切るんだろうな。割とこういう時はいけるのだ。しかもあわよくば、その間に小さな用件を詰め込もうとすらしている。今の状況では、外に出る日と家にこもる日をはっきりさせないと、仕事が切り回せないから、これでいいのだ。そして、1日としては忙しいが、それぞれの時間は濃いながらもゆっくり過ぎて行くだろう。ひとつは、長崎本・お店ページの最後の取材。いろいろ悩んだけど、ノスドールのお菓子にした。本田さんと久しぶりにお話できるので楽しみ。もうひとつは、まだ受けるか受けないか決めかねている仕事の顔合わせ。現時点での自分の想像の中では、私がやるべき(私にとっての)必然性がいまひとつないのだが、それは相手あってのことだから、なにがどう転んでいるかわからないし、とにかく、今日の話の中で考えようと思う。




2008年07月28日(月) これに勝るものが

 おいしいお肉屋さんやお魚屋さんで買うようになると、それまで良しとして買っていたお店の肉や魚が、どんどんかすんで見えてしまう。昨日も、いつものお店がどちらも休みだったので、これまで買っていたお店を覗いてみたが、「え、ここって、こんなにイマイチだったっけ?」という気持ちに襲われ、結局割り切ってスーパーで買ったりもしたが、もちろんおいしくなかった。よろこびが増えるほど、ある種の苦悩もまた増す。でももう、後戻りもできず。
 食卓の贅沢って、たかが知れている。「すてきな奥様雑誌」の広告を見るにつけ、食費を切り詰めることばっかり掲げてるようだけど、「いいものを適正な価格で買って食べる」ことに勝る日々の家庭の幸せや健康法が他にあるんだろうか?


2008年07月27日(日) エネルギー。

 暑いのでそうめん流しに行くが、今ひとつ。鮎の塩焼きを注文したら、土日はやってないという。土日に出さずにどうするんだ〜!
 夜はまた花火もあがるので、ダンナ母を呼ぶ。一人暮らしで(犬はいるが)ヒコだけが生き甲斐だから、たびたび来てもらうのはいいのだが、その「ものごとすべてを悲観・心配・卑下方面にねじまげる」エネルギーのすごさに、いつもながら参ってしまう。ふー。あのエネルギーをポジティブなほうに向けられれば、ちょっとした自己啓発セミナーくらいは始められそうだ。
 花火は、昨日のよりもおもしろいものが上がったので、満喫した。


2008年07月26日(土) 夫婦(めおと)厄日

 朝から掃除などして、ヒコをお迎えに。ベランダでプール遊びをする声が、道路まで聞こえていた。
 夜は保育園の夏祭り。行く前には、「ダンスを踊るから乞うご期待!」みたいなことを言っておきながら、いざ現場に着くと、ダンスどころか、私から離れようとすらしない。小さい組の子だって、親から離れてお友達と整列しているというのに。離そうとすると大号泣。立たそうとしても大号泣。汗まみれでしがみついてくる。大勢の人が苦手なんだろうか? くんちには出られるのだろうか? 楽しい夏祭りの会場に響き渡る泣き声を前に、不安が募る。最後にはケロッとして、輪投げやくじ引きなどして楽しんでいたが。
 その後、間に合いそうだったのでバスに乗り、港へ花火を見に行く。花火好きのヒコは、家から見るよりもはるかに大きくて腹に響く花火に大満足のご様子。屋台でラーメンとおでんを食べる。今日の「トマトのおでん」は、プチトマトだった。おいしかった。腹が落ち着いたところで、お客のお姉さんを露骨に見るヒコ。
 出張から戻っているはずのダンナも合流しないかな、とメールしてみたら「セスナが墜落したからまだ無理」という返事。ニュースを知らなかったので、なんのことやら分からない。しかも夕方来たメールには「痴漢に間違われた」とか「歯が折れた」とか、これまたなにがなにやら。私自身も、送っていた原稿の字数の計算を間違っていたようで大幅書き足しが発覚し、とにかく二人とも厄日だったようだ。おいしいものでも食べて仕切り直そうと決意する。



2008年07月25日(金) この角を曲がって青だったら

 またもや本日も取材なり。
 お店はぜんぶで9軒取材するのだけど、最後の1軒を決めかねている。そこで、ひとつ、候補にしているお店でお昼を食べることにした。その店を入れるかどうか決めるために。その店には、いつもは店主がいないのだけど(別の店もやってるから)、もし偶然に来てたら、そのまま話をして取材を頼もうと思っていた。
 お店に入ると、当然だが、店主はいなかった。でも、食べていたら誰かがやってくる音がして、どうもお客じゃなさそう。おおお〜、これは取材決定か!?と思って見たら、それは店主ではなく、ナンバー2の人だった。…ということで、やめる。
 ものごとを決める時って、わりとそんなものじゃないだろうか。
 「この角を曲がって、見えた信号が青だったら、あの人に会いに行こう」とか。
 そんなこんなで、お昼ごはんはおいしく食べたものの、そこを取材するのはやめにして、ボーッと歩いていたら、今まで考えてもみなかったお店が浮上してきた。おお、ありかも。ひとまず今日、2軒取材すれば8軒が終わるので、そこであらためて考えてみよう。
 取材は、元ワゴン車コーヒーこと「珈琲人町」と「ランプライター」。「人町」で汗だくになりながら写真を撮っていたら、それを、じーーーーっと見ていた若いお姉さんから「女の人がこんなふうに写真を撮っているのを見たのは初めて。感動して涙が出ちゃいました。」と握手を求められた。ひえ〜、私こそ、こんな経験は初めてです…。
 夜はケーブルの歓迎会。ヒコはお泊まり。こんな機会もそうないので、2次会はパスさせていただき、さっき取材したばかりのランプライターで、ミントがたっぷり入った爽やかなものを1杯だけ飲んで帰る。


2008年07月24日(木) 写り込め〜(念)

 本日も取材なり。「豆ちゃん」で岡野さんと会い、ランチを食べつつ、帰りに取材を申し込もうと思って話をしたら、「今でもいいよ」ということで、善は急げとなだれ込む。
 写真を撮るのが面白くなってきた。カメラマンが撮る写真は私には撮れないので、自分が撮れる写真を撮ろうという方針。シャッターチャンスは逃してしまう星のもとに生まれついているようだし、それなのにオートフォーカスレンズじゃないので、決定的瞬間を撮ることはあきらめて、なるべく、目に見えるもの見えないもの、いろんなものが心霊写真のように写り込んでいてほしいな、と願いながら、シャッターを押す。特に今回の一連の取材は、自分がいつも行っているお店なので、その「自分がいつも行ってて過ごしてる感」を大切にしてみた。
 ダンナが出張なので、夜はヒコと、昨日取材したばかりの「のだ屋」へ。ハンバーグを焼いてもらうあいだ、消防署へ行くという(ヒコにとっての)ゴールデンコース。


2008年07月23日(水) いまさら…。

 今日もお店取材。新大工の「魚和(いつもお刺身を買う魚屋さん)」「のだ屋」と行って、勢いづいて「カフェ平井」までがんばろう!と思って歩いていたら、夕方にでも取材のお願いに行こうと思っていた「ランプライター」の後藤くんとバッタリ会った。なんということでしょう! もちろん取材を申し込む。「カフェ平井」では、日常、あまりにも行っているので、もはやあらためて何を話していいのか分からない。目の前で作ってるところを何度も見たから、いまさら「桃プリンは自家製ですか」なんてことも聞けないし。今まででいちばんやりにくい取材だったかもしれない。でも、家に帰って撮った写真を見ていたら、いつも自分が身を置く空間が切り取られていて、特に平井は雑誌などでも見たことがなかったので、非常に不思議な気持ちだった。あー、こんなとこだったっけ、というような。あとは原稿をがんばろう。どの店も私の生活に欠かせないところだから、行けなくなると困る。だから、かなりがんばろう。



2008年07月22日(火) 早くも

 朝から「たけやま」、昼から「紅灯記」へ取材。どちらもあまりにも常日頃から行っているので、あらためて取材するのは不思議な気分。でも、どちらも意外な話など聞けてよかった。レンズに助けられつつ、写真もがんばって撮った。マウントアダプターひとつで、もう使えないかと思っていたレンズが、デジタルでじゃんじゃん使えるというのは本当にありがたいことだ。でも、自分はぜんぜんカメラマンじゃないな、と、写真を撮るたびに思う。シャッターチャンスの逃しっぷりには、我ながらあきれる。カメラマン、デザイナー、エディター、ライター…職業的に身近なあたりでも、すべて別人種だ。

 夕方、撮影した写真をパソコンに取り込みつつ「そこからもう1歩踏み込んで撮れなかったのか!」などと自分に突っ込みながらボーッとしていると、そんな(?)ライター仲間の福岡の小坂さん(「福岡喫茶散歩(書肆侃々房刊)」著者。ちなみに写真は私よりはるかにうまい。念のため)から、なんと「いま『たけやま』にいるんですけど…」という電話。すぐに家を出れば、次の仕事までの間、ほんの少しだけど会えるタイミングだったので駆けつけ、お互いの本についてササッと意見を交わし、別れた。本当にほんの少しだったけど、過不足なくメッセージは送り合えた感じ。一連の本づくりの流れの中で、久々のお店取材を始めた、この日、この時に現れてくれたことだけでも、勇気づけられた。ありがとう!

 夜は、龍踊の稽古を見に行く。いよいよ今日から始まるのだ。
 小学校のグランドに、ポワンと明かりがついていて、あっちでは子どもたちが囃子や子龍の練習、こっちでは大人たちが真剣な顔つきで棒を振り回し(龍を使っての練習は8月から)、そのまわりには、まだ楽器も持てない小さな子どもがはしゃいでいる。囃子や子龍を教えるのは、もちろん子どもたちの親ではなく、町の大人たち。必要な時は、容赦なく叱る。…なんだろう、ここは。この世なのか? 極楽ではないのか? 早くもちょっとだけ、目頭が…。


2008年07月21日(月) プレゼント

 休日。ダンナは仕事なので、ヒコと二人。しかし、雨だったこともあり、昼過ぎには閉塞感に包まれたので実家を訪ね、父と3人でジャスコに行ったりした。そうこうしていたら、夕方、ぽっかりと一人の時間ができたので、勢いで取材を申し込みに行く(今度出す本には、私がいつも行っているお店を何軒か載せることにした)。ドキドキしつつ2軒行って、どちらも快諾してもらえたのでうれしかった。家に戻り、シャワーを浴びて、祝杯をあげる。この間、ほんの3時間くらいだったけど、ものすごいプレゼントをもらったような気分だった。



2008年07月20日(日) 年中行事

 福岡に狂言を見に行く。去年もその前もその前もその前も…かなり定点観測的に行っている。前にも書いたと思うが、だからといって、1年のうちの他の日に、狂言や野村萬斎を観ることはない。母と妹と夏の1日、おいしいランチを食べ、狂言を観る、というのが、年中行事化しているだけ。祭りのようなものだ。3年前は私の腹が大きく、2年前はヒコが小さかったので、乳も張りつつけっこう無理して(ダンナに無理させ?)参加して、去年は乳も終わっていたのでワインも飲み、気楽にヒコをダンナに託して参加し、でも妹は沖縄から飛行機で飛んできた。今年はもっと気楽にヒコを預けて、しかも妹の腹が大きい…という具合に、「設定」は変わらないけど、その時々の移り変わりがおもしろい。来年はたぶん、妹が小さいのをつれて、ちょっと無理しつつ沖縄から飛んでくるだろうし、もっとなにか、違うことがあるかもしれない。
 ヒコとダンナは、車屋さんめぐり。夕方、再会した時には、どんなことがあったのか、逐一報告してくれた。もう悪いことはできない。
 「おとうさん、しろいぶーぶーのって、おうちのくるま、いらんっていったよ」
 勝手に買い替えを検討したようだ。

 それにしても、ETCの通勤割引は素晴らしい。
 というよりも、これくらいの値段が本当だろう。…と思っているのもお人好しだったりして。



2008年07月19日(土) 草に失礼。

 パソコンを開いて、メールの受信箱を見て、迷惑メールのボックスを見る。受信箱に表示された数の数十倍もの迷惑メールがだいたい入っていて、その9割以上が「真の迷惑メール」なのだけど、時々、初めて、とか、数年ぶりにメールをくれる人のものがあったりするので、いちおう、タイトルに目を通す。特に新しいパソコンは「迷惑」の基準が厳しいので、これまで何度も「迷惑じゃない迷惑メール」を捨てそうになった。タイトルに目を通すのも、本当はいやだ。そこに並ぶ文字を見ているだけで、人をだまそうとする意識が伝わってきて、気持ちが悪くなる。振り込め詐欺などの、ハガキで送られてくるものもそうなのだが、微妙に言葉遣いが狂ってたりする。たとえばブランド品や骨董品の偽物について、わかる人が見れば、具体的なポイントはともかく、パッと見て「なんかちがう…」と違和感に殴られるというような気持ち悪さ。「迷惑メール」のボックスに入っているだけでもいやなので、こまめに削除しているのだが、毎日毎日その作業をしながら、草むしりみたいだ…と思ったけれど、それは草に失礼というものだ。


2008年07月18日(金) それだけでのんびり

 「野茂引退」の文字を見て、自分でも意外なほど目頭が熱くなってしまった朝。ザッと雨が降った。今日もいろいろすることはあるけれど、自分のペースで動けるというだけでのんびり感が漂ってしまい、ヒコを送ってお諏訪さんにお参りし、「たけやま」でコーヒー。お昼は何を食べようかな。


2008年07月17日(木) 昨日、今日、…。

 ふた月ほど前から、一日使い捨てのコンタクトにしている。長年、二週間使い捨てタイプだったが、通販でまとめ買いすれば、一日100円ちょっとだったので、切り替えた。昔は高かったものだが…。洗わなくてもいいし、うっかり眠りに落ちそうになっても、布団の中で取ればいいのでうれしい。旅行に保存液のボトルを持って行く必要もない。
 しかし、最初の注文で、なぜか度数を間違って注文してしまい、開けてしまった一箱を使い切るまで、ちょっとだけちぐはぐな状態で暮らした。これが微妙絶妙に、体に不調をきたしてしまった。とにかく肩が凝るし、疲れた。目は大事だ。
 さらに、新しいパソコンがやたら疲れるので「なんだろう?」と思っていたら、ある日の新聞に「明るいパソコンを見続けるのは、電気を見つめ続けているようなもの」と書いてあったので、明るさをチェックしてみたら、ギンギンMaxに設定されていた。これまた疲れるに決まっている。
 と言いつつ、昨日の夜はコンタクトつけっぱなしで眠り、2時間くらいして起きて、そのまま朝までビデオ編集をした。この場合、昨日のコンタクトはつけっぱなしでいいのだろうか。それとも、これから夜まで眠る予定はないが、今すぐにでも換えたほうがいいのだろうか。


2008年07月16日(水) 籠る日

 朝ちょっとでかけたあとは、終日「ペコロスの唄地図」編集。ソフトにだいぶ慣れてきて、サクサク進める。これまで、時に発狂しそうになりながら調整していたことが、ボタン一発でできることが分かって、うれしいやら情けないやら。今まではなんだったんだ。作業はサクサク進んだが、内容としてはグーッと潜った手応えあり。そうこうしていると、ついに長崎本の「夏」のレイアウトが送られてきて、これまたグッとヒートアップ。一日家に籠っている日ほど、自分の中では面白い。そういえば「籠る」って字は、でっかいカゴに龍が渦巻いてる感じだな。
 「唄地図」に使う写真を借りに、ばあちゃんとこに行く。ちょうどばあちゃんの誕生日。ハハも来ていて、ヒコもいて、4代揃う。ばあちゃんのコロッケやビーフシチュー、なんてことはないそうめんまで、あまりのおいしさに、もはや首をかしげながら食べる。



2008年07月15日(火) 余地だらけ

 とある取材で、長崎大学へ。
 大学って、いいなぁ。勉強だけできるって、天国だ。…ということは、出てからようやく分かる。私も来週あたり「37歳、夏。勝手に大学生週間」ということにして、集中して本を読んだりしよう。来週ならなんとかできそうな気もするので。
 取材した薬学部の先生の机には、30年前のコンピューターが飾ってあった。「いくつもの過程を経てかけ算や割り算ができる」くらいのものなのだが、いまでも電源が入っていて、生きていた。それが本当に「生きていた」という感じがしたので、不思議だ。古い機械には、命があるように思える。先生に尋ねると、待ってましたとばかりに、中身を開けたりしながら説明してくれた。キーボード部分が、ガバーッと開いて、基盤があるのだが、それがちょうど、車のボンネットのようなイメージで作られているらしく、たしかに、ボンネットを開けた時の支え棒みたいなものもあった。さらには、コンピューターの外観が、なんだか「生き物くさい」と思っていたら、スターウォーズのダースベーダーをデザインしたものらしい。ダースベーダーが生き物かどうかは定かではないが、とにかく、そういう、コンピューターとは関係のないものからデザインされている…というより、たぶん当時はコンピューターそのものの効率的なデザインなどはまだなくて、あらゆるものを、どこか何かから借りてきてつぎはぎして作っていたのだろうけど、それがなんだかとても自由な空気を醸し出していた。いろんな意味で、余地だらけな感じ。いいものを見た。



2008年07月13日(日) 甘く冷たく優しく

 昨日の夜、〆切だった仕事が終わったので、ちょっと油断して飲んでしまい、二日酔い。昼過ぎまで使い物にならず。
 ちゃんと野菜を食べる暮らしをしようという気運が自分の中で高まっている今日このごろなので、「びわっちファーム」で野菜を買う。久しぶりの「びわっちファーム」。駐車場も広いし、やっぱりここが好きだ。ここに買い物に来るくらいの余裕を持って生活することを心がけよう。
 産直所にもいろいろある。中には、遠くのものも一緒に並んでたり、ぜんぜん新鮮じゃないものも混じってたりする「半産直」なとこもあるから用心だ。こないだ浜の町の「と○●れ」で買った人参なんか、たった1日室温に置いておいただけで、ドロドロじゃぶじゃぶに腐った。なにが「●れと○」だ〜!急いで買い物をした自分も悪いのだが、なかなかショックだった。
 今日のヒットは、手づくりの甘夏シロップ漬け。甘夏がおいしそうと思ったけど、皮を剥く気力もないから素通りしたが、これを見つけて大喜び。二日酔いの体に、甘く冷たく、優しくしみ込んだ。ありがとう、甘夏を剥いてくれた人よ!



2008年07月12日(土) ハイエナ…。

 はるちゃんは、町娘。
 おいしいものに目がなく、ドタバタと走り、自分の都合で寂しがり、なんだか股がゆるく、そこはかとなく品がない。「はるちゃんの存在感って、なんか見たことある」って考え抜いて、たどり着いた答えが「町娘」。時代劇の茶屋の娘みたいな感じ。
 この答えに満足していたら、昨日、それを上回りかねない表現が、ダンナの口から飛び出した。もぎくんのごはんを片っ端から横取りする様子を見てのことなので、ちょっと言い過ぎな感じもするけれど…「ハイエナ」。うううぅ…たしかに。鼻の低さとか、模様のまだらさとか、人は悪くないんだけど、これまた品がいいとは言えないところが、ドンピシャ。
 町娘、ハイエナ…そんなふうに思ってまで飼わなくていいんじゃないか?と言われそうだが、これがまた、異様に可愛かったりするので、生き物というのは神秘である。



2008年07月11日(金) 牛スジを信じる。

 仕事が切羽詰まってきたので、牛スジなど煮込み始めてしまう昼下がり。暑いが、家の中や陰は涼しい。
 牛スジ煮込み、今回のテーマは「入れすぎない」。ついつい、材料や調味料などをあれこれ入れすぎるので、ぐっと自制しつつ、煮込む。でも、大根とスジだけにするつもりで、こんにゃくを買うのも我慢したのに、ついうっかり冷蔵庫にあった人参を入れてしまった。バカバカ。
 もうひとつのテーマは「スジの力を信じる」。別に出汁を取ったり加えたりせず、これまでゆでこぼしていた下茹でのお湯をきれいに濾して、それで煮込んでいる。豚の角煮も、いろいろ試した結果、それがおいしかったので、スジも信じてみることにした。アクを取って濾したら、とても透き通ったので、いけると思う。あとはお酒と砂糖と江島醤油だけ。楽しみ。
 仕事仕事…。


2008年07月10日(木) ブックマーク。

 「ぴーぽー、なに?」「うーっていってるよ」という質問に即答すべく、「長崎市消防局からの情報発信」をブックマークしている。家にいる時は、サイレンが鳴るとすぐに見て、ヒコ司令官に報告する。司令官がいなくても、たとえば仕事で一段落したとき、ポチリと押してみたりする。すると、サイレンの音は聴こえていなかったのに、「ただいまヘリ支援が発生しています」という表示が出たりして、あぁ、自分にとっては静かな、今、この時も、世界は動いているのだ…と、ますますボンヤリしてしまう。


2008年07月08日(火) 「東望の浜」に潜る。

 灼熱の空のもと、岡野さんと「ペコロスの唄地図」収録、3回目。長崎の海水浴場にまつわるあれこれを語る。東望の浜やねずみ島が、明るく楽しい海水浴場というだけでなく、「男女」にとってもパラダイスだったというのは初めて聞いた。他にも、とっちらかった話をしつつ、しかし、それがすべて、最終的には大きなテーマにカチリ、カチリとはまっていく感じが面白い。失われた夏、記憶というもの、それらを抱えて生きるということ…。岡野さんは「東望に関しては、話すほど知らんとさねー」と気にしてらしたけど、私が表したいのは、「東望の浜とは、万人にとってどんな場所であったか」ではない。岡野さんにとっては「リアルタイムに存在していたけど『話すほど知らん』」場所であり、私にとっては「母は子どものころよく行っていたと話すけど、自分が生まれた時にはすでに埋め立てられていた」場所であり、岡野さんの知人にとっては、「お姉ちゃんと仲良くなる場所」であり…と、ひとつの場所が、人によって無数の像を持つというようなことだ。それを見てもらうことによって、東望の浜をちらりとでも知る人であれば、「その人にとっての東望の浜」がどんなところであったか思いめぐらし、それはつまり「その人にとっての夏」が、どんな記憶によって形作られているのかを引きずり出す…ことになればいいな、と思う。
 「東望の浜とは?」
 「大正時代から昭和40年代にあった、当時の長崎を代表する海水浴場。遠浅の砂浜」
 というような豆知識は、どうでもいい。知ってることなんてどうでもいい。どうでもいいというのが乱暴ならば、あくまで出発点だ。私にとって、岡野さんにとって、番組を見る人にとって、東望の浜はどんなところだったのか、どんなところではなかったのか、誰と行ったのか、誰と行けなかったのか、いくつもの夏はどんなふうに過ぎ、あなたはこの町でどう生きてきたのか、そんな長崎とは、なんなのか……すごーく恥ずかしげもなく大げさに言えば、そうやって、記憶やイメージの海にもぐるコーナーを目指している。特に今回は、岡野さんの創造の源のひとつでもある、岡野さんのお母さんを訪ねることもできた。これは大変に編集し甲斐のある回になりそうだ。

 でも、あまりの暑さに、タイトルを書いてもらうのを忘れた…。本当に暑かったのだ…。



2008年07月07日(月) 雄山?

 自分の器が小さいのだろうが、そしてもちろん、彼のことをすこぶるかわいく大切には思っているのだが、ヒコと一緒にいるということは、基本的に「あまり話し合いの余地がない指図と自己主張と愛情確認」にさらされつづけているということだし、自由行動はいっさい許されないので、2日も経つと、みるみる、いや、自分の器が小さいのだろうが、その器がますます小さくなるのがせつない。つかの間、お昼寝したとしても、そこには炊事洗濯掃除が首を長くして待っている。寝言さえも文句と命令。「布団着るな」とか言うし。「牛乳注げ」っていうから注いで来たら、見てもいないのに「コップが違う」と怒られた午前3時、君は海原雄山かね? すっかり目が覚めて悔しいので仕事でもしよう。


◇◆◇


 以前からずっと気になっていた南部鉄器のグリルパンを、どうしてもどうしても無性に欲しくなり、出島のそばの、古いビルの一室の雑貨屋さんに買いにいく。これまで3度ほど入って、そのつど、しげしげとグリルパンを眺めていたからか、お店に入って、他のものも見ずに買ったら、「前も見てらっしゃいましたよね」と、お姉さんに言われた。そうです。見てました。じっとりと。
 お店を目指している途中、普段はあまり通らない道を、なんとなく呼ばれるように通って、江戸町公園を抜けたら、道路を挟んだ目の前に、昨日お別れしたはずの「珈琲人町」の青いワゴン車が、JAFの車に乗って、たたずんでいた。出島前のバス停みたいなところで、JAFの人が休憩していたのだ。よほど縁があったのだろう。でもたぶん、今度こそ3度目の正直の、さよなら人町号、だ。(と言いつつ、どっかの解体屋で見かけたりして…)



2008年07月06日(日) うろ覚えられ

 梅雨明け。
 容赦なく夏な空のもと、ヒコと2人で3年ぶりに「くらた」(長崎市緑町にあるお好み焼き屋さん)へ行ってみる。相変わらずのユートピア。そして、暑さ。「3年ぶりです…」という私の顔を見て、おじいさんは、「見たような、見たことないような…」と、うろ覚えだった。「くらた」には、ずっと行きたかったのだけど、なんせ、暑い。「暑い」ではもはや足らず「熱い」ほどの室温なので、妊婦や赤子連れには、ちょっと、無理だった。バスの中からはいつも「おじちゃん、焼いてる焼いてる」と、確認しつつも、行くまでには至らなかったのだ。ようやく行けて、ヒコもすっかり気に入ってくれたし、よかった。
 バスで街へ。消防署経由。ちょうど清掃中だった救急車や、訓練に出動間際のレスキュー車に乗せてもらって大興奮。
 今日で最後の「ワゴン車コーヒー(珈琲人町)」へ。腹が大きい時によく飲んでいた「はちみつラテ」を飲み、写真を撮る。ほんとにさよなら、人町号。


2008年07月05日(土) 「夏」を待つ夏。

 ついに蝉が鳴いた。
 重くて黒い雲の群れが、次第に駆逐されていく。
 「夏には本が出る」とドキドキしていたが、その夏が来てしまいつつある。今は人の手にゆだねているところだから、まだ今ひとつ現実味はない。春夏秋冬の「冬」のまとまりは、組み終わったページがが送られてきたけれど、お手製本で作ったのとビックリするほどは違わないので、まだ静観という感じ。「春」も、こないだ作ったばかりなので、新鮮味は薄い。しかし、初めて形になる、かつ、思い入れも強い「夏」と、くんちのことを入れた「秋」が組まれてくると、がぜん興奮しそう。特に「夏」は、どんなページになるか、文章と写真やイラストを並べてどんな風になるのか、なんとも想像がつかないので、わくわくしている。もうひとつの「夏」を待ちわびている、夏の始まりである。


2008年07月04日(金) やわらかきものよ。

 はるちゃんは、やわらかい。
 抱っこした感じも、肉球も、毛の一本一本にいたるまで、線が細くて、やわらかい。今やすべてが太くてデカいもぎくんにも小さい頃はあったが、こんなにやわらかくはなかった。やっぱり女の子というのは、やわらかいものなのだろうか。右のヒゲは黒くて、左のヒゲは白いはるちゃん。耳の先がすこーし反っているのがお茶目なはるちゃん。落ちていたところを毎日通るたび、そのつどしみじみと、「はるちゃんは生きてるんだなぁ」と、不思議に思う。



2008年07月03日(木) ダメ!絶対!

 昨日は、文章作成も一段落、ということで、マッサージに行った。いつもの「オヤユビキング」へ。頭にびっしりとイボ状のコリがあったらしいが、たっぷりほぐしてもらって、目が見えるようになった。
 もまれながら、長崎のマッサージ事情を、いろいろ聞く。結局は「人」。同じ店でも玉石混淆ということなんだが、マッサージの心地よさとも相まって、よだれが出そうになるほど笑ったのが、「ほぐす気のないマッサージ屋もあるんですよ」という話。それはすごい!「ほぐす気のないマッサージ」って、どんなマッサージだ! マッサージだからまだいいものの「運ぶ気のない救急隊員」だったら大変である。

 救急と言えば、相も変わらず「救急車で運ばれていく人」のストーリーを作らされ続ける日々。今日は「外壁工事中に足場から落ちたお兄さん」を、最終的には「市民病院」へ搬送した。それを聞いたヒコが聞き返した。

 「しにんびょういん?」

 それ、ダメ!絶対!


2008年07月01日(火) 放電と法要

 ひとまず、今度の本の文章を書き終えた。基本的に、校正・修正ではあったけれど、やりだすともう、自分の中では、一から書いてる感じだったし、つい使っちゃう言い回しも、連載の1回1回なら読み流すけど、1冊にまとまるとなると、目につき、気になる。これを良しとしていたのか…と、時に腹立たしいほどであった。とにかく削り、直していった。ということでいま、ものすごい放電感。鶴の恩返しの鶴さんみたい。あとはまた、写真やイラストと合わされば、変えたいところが出てくるんだろうけど、第一段階としては、終了。自分がこれまで考えてきた長崎についてのあれこれを、とにかく濃縮して盛り込んだ。「成仏」への第一歩。初七日法要くらいは、今日で済んだと思う。なんまんだぶなんまんだぶ。
 昼は、大葉をどっさり刻んだペペロンチーノを作った。
 


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