長い長い螺旋階段を何時までも何処までも上り続ける
一瞬の眩暈が光を拡散させて、現実を拡散させて、其れから?

私は、ただ綴るだけ。
音符の無い五線譜は、之から奏でられるかも知れない旋律か、薄れた記憶の律動か。








2005年11月28日(月)

 私の願いは叶わない。其れが解っているのに、其れでも望み続けるのは――生きていたいからじゃない。生きることの意味を、目的を、探そうとしているのでも見つけようとしているのでもない。私は決して孤立している訳ではない、だけど常に孤独で、一人で、其れだけは変わらない。誰かを恨むのでもなく憎むのでもなく――唯、そう、いつか……と信じながら生きているだけ。暇潰しなのだろうと思う、大学に通うのも、院に行こうとしているのも。留学も、旅行も、或いは些細な日常でさえも。対等ということは無くて、高み好きの連中と馬が会うわけも無くて、そうと言っても自分のレベルを落とすつもりも無くて。だから、暇潰し。オンラインの付き合いは疾うの昔に辞めた。オフラインの、現実の付き合いでさえも、最低限にした。上辺だけの付き合い、唯騒ぎ立てるだけの学生達、生産性の無い無意味な会話は暇潰しにさえならなく、其処から何かが生まれることも発展することも皆無だ。何もかも、私の領域とは別次元で行われ、私は影響されることもすることも無く、領域の外側から本当の意味で私を干渉するものも無い。揺さ振られたところで私の根幹が揺らぐわけでも崩れるわけでもなくて、そう、其れは、揺さ振りは一時的なもので、永遠ではないし未来に繋がってもいない。いつか。いつか……そう信じることだけが許されたことであるかのように振舞うつもりも無い。最後まで足掻いて良いと許されるのであれば、見苦しく足掻いてやろうと思う。変化は望まない。私が望まなくたって世界は勝手に変わっていく。だから私は――唯ひとつのことを、信じ続けるしかないじゃないか。



2005年11月24日(木) ヒトリ

 きっと私は(私がそう望むから)一生を一人で――独りで、過ごすだろう。其れは寂しい事とか悲しい事ではなくて(先ず第一に私自身が望むことだからそんな筈は無くて)、強くあらねばならないと私が強く望んでいるからで、女は所詮女だという蔑視に(つまり弱いままでも良いという社会的観念と或る程度の強さが無ければ生きていけないという現実の狭間に在りながらも生き続けているという事に)甘んじたくないからで、守りたいものを――守るべきものを、否、単純に守るものを守る為に、一人の方が都合が良いからだ。隣に、傍に、誰かが居る事が「一人ではない」のではない。私の隣に誰かが常に添っていようとも、私はずっと一人でしかない。



2005年11月20日(日)

 朝、眼が醒めて窓を開けて、庭の芝生は一面が白い絵具を撒き散らしたような――どちらかと言えば消火器を使用した跡のような、薄く、未だ緑と少し茶色の草の絨毯の上に雪がふわりと被さっている。午後になると其れも消えて、日蔭になっていたところだけは残っていて、朽葉の生命力にも負けじとしている。灰色の空だけが、北国の冬の始まりを告げる。


 太陽が沈んでしまう時刻が早くなるにつれて、昼間の太陽の高さが低くなるにつれて、冬は例年通りに厳しくて、長くて、寒くて、白くて、温暖化とか異常気象とか叫ばれていても数値で其れが確認出来ても体感するのは難しく、結局は北国の冬は冬であることに違いは無い。雪と氷と、大地は白く空は灰色で、影は淡暗青で、闇は深く黒い。冬の終わりの先に待つ春でさえ、其れは確かに待ち遠しいけれど、実際に眼で見るのは何よりも早く手軽に情報伝達されるブラウン管の先にあるテレヴィだったりする。雪の目深な睦月や如月、冬の最中に、梅が咲きましたという便りが届く。北国の梅は皐月だよ、桜と並んで咲くの。……季節感も時間の感覚も、ずれている。日の出の時刻も日の入りの時刻も、太陽の高さも、気温も、湿度も、私の眼で見る世界とディスプレイの向こうの世界とは異なっている。

 兄貴様が五ヶ月間の療養を終えて房総半島にある県に転勤になって、兄貴様は如何か知らないけれど私は 今までの 生活を取り戻しつつある。私の、大学生活。本来居る筈の無い人間が同じ家で食住を共にするということが私にどれだけの負担を課していたのか――今となってはもう解らない。只、気が楽になったのかしらと朧に考えるだけ。当時頭で考えていたことと、思考とは切り離された精神状態とは、全く別次元だった。他者の影響は受けまい――そう意識したところで、私は自分が如何に弱い人間であったかを思い知らされるだけ。
 強くなりたいと願う気持ちは今でも何一つ変わらない。
 一番星が寂しげに輝いている夕刻のオレンジ色と白い空から藍色の空へと移りゆく時間帯、都会の空は幾等待っても天の川が見えるわけではなく、一番星は何時までも孤独なのかも知れなかった。天は平面上に星を見ているだけで、実際には隣接する星と何百光年離れているか知れないのだから。矢張り、星は何処までも孤独なのだ、きっと。










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