ヲトナの普段着

2004年11月11日(木) いつもありがとう /オリジナルカードプレゼント・ネットの匿名性について

 感謝の気持ちを表す方法にも色々あると思うのですが、僕は昔から「金かけず」を心がけていました。だから高価な品物を贈った覚えなどありません。僕と付き合う女性は、モノに恵まれないのを覚悟しなければならなかったんです。されど、手はかけてきました。絵や文字、写真、音楽と、その時々に自分のなかから出てきたものを、僕の感性で贈ってきました。
 
 
 ヲトナごっこを開設して二年と九ヶ月、サーチエンジンとリンク集には登録しているものの、ろくな宣伝もせずにここまでやってこられたのは、ひとえにこのサイトを開いてくださる皆さんのワンクリックであると思っています。数字が全てだなどとはさらさら思っていないのですが、日々累積していく数字はやはり、作者にとって何よりの励みとなります。
 
 書き物や写真を公開して感想をいただく。拙い個人サイトの流れとしては、それで充分なのかもしれませんけど、これまでのご愛顧と今後のために、僕からの贈り物を用意させていただこうと思いつきました。昨年の秋にデジタル一眼レフを手にし、サイトにも写真コンテンツを取り入れてきましたが、一年間という期間に撮ってきた写真たちのなかから、何枚かを選りすぐってポストカードにし、それをご希望の方にお届けしようというものです。
 
 プレゼントですので、費用は一切かかりません。お申し込みだけいただければ、あとは配達を待つだけです。ただし郵送しますので、本名とご住所を記入していただくことになります。当然のことですが、個人データは僕の責任において厳重に管理させていただきますし、当企画以外で使う意図はありません。と書いても、抵抗を感じる方は多かろうと想像しています。それがネットというものでしょうから。
 
 
 インターネットと付き合うようになって丸七年。サイトを作るようになって六年半が経過しました。僕個人は、ここを「仮想空間」と捉えたことは一度もなく、それだけに、過去幾度となく仲間とぶつかってきた経験もあるわけですが、いまになっても、やはりこの匿名性が持つ悪質だけは嫌で嫌でなりません。
 
 リスクを負うことで初めて責任も生じるはずなのに、それを避けて通ろうとする人たち。ルールとモラルすら身につかぬまま、本来自分で守らねばならぬはずの己の身を、ネットの匿名という名の防御壁に守ってもらう人たち。そして、ネットワークを隔てた向こう側にいる生身の人間の心を、ゲームのなかのキャラクターのように手軽に扱う人たち。
 
 もちろん、彼らが存在する背景には、それを悪用する輩がいるわけです。ですから、匿名性を盾にする行為そのものを否定しきれるものではないと、僕も感じてはいます。けれどそれはやはり、本末転倒であろうと思うんです。インターネットは、あくまで人と人とを繋ぐツールであって、仮想という世界などではない。道具である以上は、それは人が使うものであって、正しい使い方もあって、一歩誤れば確実な殺傷能力を持つ道具なのだということを、僕らは肝に銘じる必要があります。そして同時に、自分の行動に責任を持つ、言い換えると、リスクを背負う必要があるのだと僕は思っています。
 
 
 こんな論議は、もう幾度も繰り返してきました。そのたびに、そんなに堅苦しく考えなくてもとか、仮想で楽しめるのならそれでいいじゃんという声を耳にしてきたものです。そのときは、僕もそうかなと思って手を引いたこともあった気がするのですが、今になってみると、やはりそれは間違いであったとつくづく思います。
 
 最近、ネットが関係する犯罪が、遂に小学生にまで及ぶようになりました。現状や背景をつぶさに解説する番組もあったようですが、残念なことに、僕が思う核心に触れたものは皆無でした。それが現代社会の実情なのかもしれませんけど、じつに悲しく怖ろしい現実だと思います。
 
 社会を構成するのは人間です。人と人とが結びついて、社会は成り立っています。そこで最も必要となるものは何か。それは、紛れもなく人間関係の構築でしょう。いわゆる人付き合いというやつです。僕らは幼い頃からそういう社会のなかで生活し、人に揉まれて、傷ついたり傷つけたりしながら成長していくんです。自分を守ることも、他人を守ってあげることも、そういう経験のなかから学んでいくのだと思います。
 
 しかしネットという場では、匿名性という特異性がそれを行ってくれます。関係を簡単にクリアすることも可能です。そんな場に人間関係に拙い子どもたちを放り込めば、きちんとした友だち関係を構築できずに暴走するのは、火を見るより明らかというものでしょう。世の中から成人として認められた大人ですら、ネットではまともな人間関係を構築できずに右往左往しているのですから。
 
 かくいう僕も、サイトではハンドルネームを使っていますし、住所や電話番号を掲載するようなこともしていません。「なんだ、お前も変わらないじゃん」と言う人もいるでしょうね。「アホか」と僕は胸を張って蔑視してさしあげます。求めがあれば、僕はすべてを露呈します。文字にせよ写真にせよ、それらを複合した作品にせよ、僕は自分の責任において全てをここで公開し、自分の責任において管理するからです。しかし現代社会というのは、個人データを売買する大馬鹿者まで存在している。だから僕は表立って個人データを出しはしません。悲しいですけどね。
 
 
 僕は、今回のようなプレゼント企画に際して、個人データを出すことを戸惑う心を責めるつもりは毛頭ありません。たしかにここは怖いところですから。むしろそういうネットの体質そのものに反吐を吐きたい気分ですし、それを悪用する輩に殴りかかりたい心境だということです。
 
 ですから、端からこんな物言いもお門違いかもしれませんが、応募数は少ないだろうと見込んでいます。別に売れっ子カメラマンというわけでもありませんし、将来有名になると約束された男の写真でもありません。いまこのときを、ヲトナごっこというサイトを通じて自己表現している、単なる普通のおじさんが作るポストカードです。ただ、もの凄くいい出来だと僕は感じてますけど……。
 
 最後になりますが、ポストカードは当サイト内にある写真集「OneDay」のイベントとして考えたものですので、ヌード写真は一枚も含まれておりません。この一年間僕が写真を撮ってきて、自分で気に入った風景をカードにしたものです。ご希望の方は、ヲトナごっこトップページの右上にある「Photo Card Present」という画像アイコンをクリックし、そちらからご応募ください。締め切りは今月25日です。あまり多数だと懐具合が寂しくなるのですが、それでも、多数のご応募をお待ちしております。



2004年11月08日(月) 作者徒然抄 ことしの秋 /僕のまわりにあるもの

 読めるというのは悲しいことで、書きたいだけに苦しくて、それはときに己の限界をみてしまう結果にも繋がるように思えます。憧れて、夢をみて、自分を信じてひたすら書き続ける力があればいいのですが、読めるだけに目指す世界の遠さに目が眩み、同時に己の拙さに捻じ伏せられ、悶絶する寸前でふと我に返るのが、僕にとっての小説なのかもしれません……


【この続きは「ヲトナごっこ」をご覧ください】


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