今日の日経を題材に法律問題をコメント

2008年05月30日(金) アデランスの株主総会で現経営陣の再任否決

 日経(H20.5.30)11面に、アデランスの株主総会で、現経営陣の再任を否決したと報じていた。


 業績不振で株価が低迷していたことが理由のようである。


 大株主が投資ファンドという特殊事情はあるが、会社の実質的所有者である株主から経営能力なしと判断されたのであるから、一般論としては取締役を退任するしかないだろう。


 取締役というのはそうものではないだろうか。



2008年05月29日(木) 我那覇問題について

 日経(H20.5.29)スポーツ面で、スポーツ仲裁裁判所(CAS)はサッカーの我那覇選手に科された6試合出場停止処分の取り消しを命じた続報があった。


 この問題はそもそも事実関係がよく分からない。


 スポーツ新聞が「我那覇選手が疲労回復のためににんにく注射を受けた」と書き、これが問題の発端となったようである。


 しかし、「ドクターの治療に従い、ビタミンB1を混ぜた生理食塩水を点滴投与された。」と書いているページもあった。


 Jリーグは、処分をする際に、ある程度の裏づけをもって事実関係を確定したのであろうか。


 そこが曖昧だとすると、Jリーグの主張は根本から揺らいでしまう。



2008年05月28日(水) 公務執行妨害事件で、大阪高裁が逆転無罪判決

 日経(H20.5.9)社会面に、速度違反取り締まりの巡査を押し倒したとして、公務執行妨害と傷害の罪に問われた男性に、大阪高裁が逆転無罪の判決を言い渡したという記事が載っていた。


 公務執行妨害で逮捕された被告人からは、「暴行していない」とか、「警察の方が暴力を振るった」という主張がときどきなされる。


 ところが公務執行妨害の事案では、大抵は、周りにいる人は警察官であるから、被告人に有利な証言をするはずがない。


 そのようなこともあり、被告人の主張が認められることはほとんどない。


 記事の事件でも、「逆転無罪判決」であるから、一審では、「警察が先に暴力を振るった」という被告人の言い分は認められていないのだろう。


 それゆえ、被告人の言い分を認めた大阪高裁の判断は珍しい。


 東京高裁であれば有罪としたかもしれない。


 そんなことをいうと、知り合いの東京高裁の裁判官から、「証拠に基づいて判断しているだけであり、東京高裁と大阪高裁で違うはずがない」と怒られるかもしれないが・・。



2008年05月27日(火) 長崎市長射殺事件で死刑判決

 日経(H20.5.27)1面で、長崎市長が射殺された事件で、長崎地裁は、被告人に死刑を言い渡したと報じていた。


 弁護側は、「空に向かって発砲して騒動を起こそうと思ったが、前市長を追いかけるうちに積もった不満がわき上がり、我を忘れて撃った」として計画性がないと主張していた。


 また、大学教授のコメントでも「計画性の認定が、事実と証拠でなく、推認に基づいており審理不十分」とあった。


 しかし、拳銃を用意しておきながら「計画性がなかった」とはいえないだろう。


 計画的犯行とした裁判所の判断に問題はないと思う。


 もっとも、被害者が一人であったから、これまでの量刑基準からすれば「重いなあ」という印象は受けた。


 裁判官によっては無期懲役とする裁判官もいるのではないだろうか。



2008年05月26日(月) 日本の刑務所の処遇は甘いか

 日経(H20.5.26)5面に、「インタビュー 領空侵犯」というコラムで、外資系証券会社の外国人(アメリカ)が、日本は外国人を広く受け入れるべきと主張していた。

 その上で、「但し、日本では外国人が罪を犯しても、刑務所で働いてお金をもらって自国に帰れる。米国ではこんなことはない。日本的な刑罰は外国人には効果ない。」と答えていた。


 要するに、日本は外国人を広く受け入れると同時に、治安対策については厳格に対応すべきだということだろう。


 その総論には賛成だが、「外国人が罪を犯しても、刑務所で働いてお金をもらって自国に帰れる。」という部分は誤解を招く表現ではないかと思う。


 受刑者が刑務作業で支給される作業報奨金は、平均して一か月(1日ではない)4000円程度だからである。


 もっとも、外国での生活水準を考えると外国人には多すぎではないかとも思える。


 ただ、外国人受刑者のうち、中国、韓国・朝鮮、フィリピンで60%を占めており(残りの40%にはもっと生活が豊かな国の受刑者もいる)、それらの国では月4000円が「多すぎ」とはいえないのではないだろうか。


 ちなみに、1993年の調査だが、ドイツで月1万3千円弱、ベルギーで月1万5千円ないし1万8千円、デンマークで月2万円弱が支給されているという報告がある。


 また、アメリカの下院では、日本で服役した米国の青年が低賃金で強制労働をさせられたとして問題になったそうである。


 確かに、日本の刑事政策では、できるだけ実刑を避け、刑務所に入っても仮釈放をなるべく早く認めるなど、社会内で処遇することを重視してきていた。


 しかし、刑務所内での処遇自体については、日本がとくに甘いということはないと思う(むしろ、刑務職員による虐待が問題になっているくらいである)。



2008年05月23日(金) 現職裁判官 恋愛感情を抱いていたことは否定

 日経(H20.5.23)社会面に、ストーカー容疑で現職裁判官が逮捕された事件の続報が載っていた。


 ところで、昨日の夕刊によれば、この裁判官は、メールを送ったことは認めているが、被害女性に恋愛感情を抱いていたことは否定しているそうである。


 ストーカー規制法が対象としているのは、「恋愛感情等を満足させる目的」でつきまとう行為である。


 そのため、「恋愛感情を満足させる目的はなかった」と主張することによって処罰を免れようとしているだろう。


 客観的事実は認めつつ、故意や目的という主観的要件について、「そんなつもりはなかった」と否認する被告人はしばしばいる。


 しかし、そのような被告人に対して、逮捕された裁判官は「不合理な弁解に終始し、まったく反省していない」と厳しく断罪していたのではないだろうか。



2008年05月22日(木) ストーカー規制法違反の疑いで現職裁判官を逮捕

 日経(H20.5.9)社会面で、女性に面会を迫るメールを送ったとして、ストーカー規制法違反の疑いで、現職裁判官を逮捕したと報じていた。


 この裁判官は、女性に面会を迫るメールを十数回送ったそうである。


 メールを十数回送ったようなケースでは、まずストーカー行為をしないように警告することが多いと思う。


 ただ、「警告」は被害者が「警告」を求める申し出をしなければならない。


 この事件では、被害者は「警告」の申し出ではなく、「告訴」しているようであるから、警察は「警告」の措置はとれなかったのだろう。


 それにしてもメール十数回で「逮捕」というのは厳しい。


 この裁判官は否認しているのだろうか。それとも裁判官だったからであろうか。



2008年05月21日(水) マクドナルド社が店長に残業代を払う新報酬制度を導入

 日経(H20.5.21)1面で、マクドナルド社は、管理職であることを理由に残業代を払っていなかった店長らに、残業代を払う新報酬制度を導入すると報じていた。


 東京地裁が店長への残業代支払いを命じる判決を言い渡したことなどを受けて、方針を転換したとのことである。


 ただ、残業代支払いを命じた東京地裁判決の控訴審は取り下げず、訴訟を進めるようである。


 しかし、店長に残業代を支払うように方針を転換したことは、控訴審でマクドナルド社に不利な事情になることは間違いない。


 ここはさっさと控訴を取り下げたほうが潔いのではないか。



2008年05月20日(火) 「万引き映像」の放映は肖像権を侵害するか

 日経(H20.5.20)社会面に、三浦和義元社長が、コンビニで万引きしたとする防犯ビデオがテレビ局などで放映され肖像権を侵害されたとして、映像を提供したコンビニ会社や、販促ビデオとして使用していた防犯システム会社を訴えたと報じていた。


 ニュースでその映像を見たとき、「こんな映像を流して大丈夫かな」と思ったが、案の定、訴えられた。


 おそらく三浦元社長の訴えは認められるのではないかと思う。


 もともと、防犯ビデオはプライバシーや肖像権の侵害ではないかという議論がある。


 ただ、防犯対策という目的の正当性があることからビデオ撮影が認められているに過ぎない。


 それゆえ、防犯ビデオを防犯以外の目的に使うことは、たとえ万引きをしている映像であっても許されないであろう。


 過去に、お笑いタレントがアダルトビデオを物色中の防犯ビデオが流出し、写真誌に掲載された事例で、東京地裁は肖像権侵害を認めている。


 防犯ビデオの設置数はこれからも増えるだろうから、防犯ビデオの流出して肖像権侵害が問題になるケースは今後多くなるのではないだろうか。



2008年05月19日(月) 「執行猶予付きで保釈」ということはない

 日経でなく、ヤフーネットニュース(H20.5.19)で、「執行猶予付きで保釈直後の兄を刺殺 60歳弟を逮捕」という見出しの記事があった。


 記事によると、「殺された兄はひき逃げ事件を起こして起訴され、千葉地裁で執行猶予付きの有罪判決を受け、保釈されたばかりだった。」とのことである。


 しかし、執行猶予になれば当然に勾留は失効する(刑訴法345条)。


 それゆえ、執行猶予判決によって釈放されることを「保釈」とは言わない。


 かなり恥ずかしい誤りではないかと思う(いずれ訂正すると思うが)。



2008年05月16日(金) 三和ファイナンスに業務停止命令

 日経(H20.5.16)1面に、金融庁が、消費者金融準大手の三和ファイナンスの一部店舗に業務停止命令を出したと報じていた。


 いよいよ危ないかなあという印象である。


 過払い金返還の交渉において、とくに争いがない場合、他の消費者金融では、訴訟前か、訴訟しても第1回目の直後ぐらいには和解ができている。


 しかし、三和ファイナンスの場合は、ほとんどすべて訴訟になり、しかも訴訟後も和解はできず判決となる。


 判決となっても任意に返還しないため、強制執行するしかない。


 どうも、自ら処理する能力を失っている感じである。



2008年05月15日(木) 緒方元長官 無罪主張

 日経(H20.5.15)社会面に、朝鮮総連本部を巡る詐欺事件で、緒方公安調査庁元長官の初公判が開かれ、緒方被告が無罪を主張したという記事が載っていた。


 緒方被告は、公判廷で、「合法的な取引の途中に、朝鮮総連の被害届もないまま、なぜ捜査をしたのか。」と検察を非難したそうである。


 その言い分はもっともなように聞こえる。


 ただ、緒方被告は捜査段階で自白している。


 捜査段階で自白した場合、公判で「任意の自白ではない」と主張しても、ほとんど通らないことは元検察官であれば知らないはずがない。


 なぜ、検察が、契約の途中の段階で早々に捜査を開始する必要があったのかよく分からない。


 しかし、捜査段階で自白している以上、緒方被告の主張は通らないと思う。



2008年05月14日(水) 過払い金返還額の全額を弁護士報酬に充てる弁護士

 日経(H20.5.13)7面に、「多重債務者が1年に3割減った」という記事があったが、その記事の最後に、「過払い金の返還を請け負う弁護士の一部で、返還額のほとんどを報酬とする事例がある」と書いていた。


 東京の弁護士会主催の法律相談での報酬基準では、交渉で返還を受けた場合には返還額の20%以下、訴訟になった場合には返還額の25%以下というのが一応の基準である(私の事務所では訴訟になっても20%以下にしているが)。


 したがって、返還額の全額を報酬に充てるというのはひどい。


 もっとも、現在、弁護士会の報酬規定が撤廃されて、弁護士報酬は自由に決められることになった。


 そのため、高額であっても優秀な弁護士だから支払うという人もあり得るわけで、高額だから問題とは直ちにいいにくい側面もある。


 しかし、弁護士職務規定では「適正かつ妥当な弁護士報酬を提示しなければならない」と定められている。


 過払い金請求で全額を報酬に充てるというのは到底「適正かつ妥当」とはいえず、懲戒請求の対象となると思われる。


 少なくとも、全額報酬に充てるという弁護士に当たったら、弁護士会に相談すべきであろうと思う。



2008年05月13日(火) フランチャイズチェーンの加盟に関する紛争

 日経(H20.5.13)社会面に、大衆食堂のフランチャイズチェーンの元オーナーが、フランチャイズ本部などに対し3億2200万円の損害賠償を求める訴えを提起したという記事が載っていた。


 訴えによれば、「サポート体制があり、素人でも経営できる」と勧誘を受けて加盟金を支払って加盟したが、十分なサポート体制もなく経営が悪化したということのようである。


 フランチャイズチェーンに関するこのような紛争は結構ある。


 本部は、加盟店を増やしたい、加盟金が欲しいという動機があるから、売り上げ予測など経営の見通しについてオーバートークになりがちだからである。


 ただ、加盟店になろうとする側も、店舗のオーナーになるのだから、本部の言い分を聞くだけでなく、自ら調査するなどして慎重な判断をすべきであろう。


 そのため、この種の紛争では、本部に違法性(保護義務違反、情報提供義務違反)がある場合でも、加盟店側にも過失があるとして過失相殺されて、全額の請求は認められないことが多い。



2008年05月12日(月) 破産事件の予納金が高額化?

 日経(H20.5.12)社会面に、破産事件で、裁判所に申し立てる際に必要な「予納金」が、東京地裁で高額化の傾向を示していることが弁護士の調査で分かった、と報じていた。


 破産の場合、破産者自身が破産を申し立てるのが普通であるが、大型詐欺事件などでは債権者(被害者)が破産を申し立てることがある。


 その場合には管財人は会社資産を回収するために様々な活動が必要であるなどの理由から、予納金は通常より高い。


 記事によれば、その予納金が最近高額化しているとのことである(私にはそれはあまり感じないのだが)。


 ただ、もし高額なため被害者が迅速に破産を申し立てられないのであれば、予納金の金額を低くして、回収した資産で管財人費用に充てるなどの運用をしてはどうかと思う。



2008年05月09日(金) 終身刑の新設を検討する超党派議員連盟

 日経(H20.5.9)社会面に、終身刑の新設を検討する超党派議員連盟が設立準備会合を開いたという記事が載っていた。


 設立の趣旨は「無期懲役と死刑との間には天と地の差がある」として、終身刑の創設か、無期懲役の仮釈放までの期間延長を検討するとしている。


 確かに、無期懲役の場合、10年を経過すれば仮釈放が可能となるから、死刑と無期懲役とでは刑の開きは大きい。


 ただ、実際の運用では仮釈放までの期間は以前より延びてきており、平均すれば仮釈放まで25年くらいになっているようである。


 しかも、4年前の改正で有期懲役の最高が20年から30年になったことに伴い、無期懲役の仮釈放までの期間はさらに延びると思われる。


 そうすると、現在の運用においては、「無期懲役と死刑との間に天と地の差がある」というほどではなくなってきているように思う。(大きな違いであることは間違いないが)


 したがって、議論のある終身刑を創設するのではなく、現在の運用を是認する方向で、例えば仮釈放できるまでの期間を20年以上とするなどの法改正をすることが現実的な方策ではないかと思う。



2008年05月08日(木) 秋田連続児童殺害事件の弁護人が交代

 日経(H20.5.8)社会面に、秋田連続児童殺害事件で、一審で無期懲役の判決を受けた畠山被告の弁護人が控訴審で交代し、高裁は新たに2人の国選弁護人を選任したと報じていた。


 しかし、一審の弁護人も国選弁護人であったと思う。


 国選弁護人の場合、審級ごとに弁護人は変わるから、高裁が新たに国選弁護人を選任するのは当然であり、記事になるようなことではない。


 にもかかわず、わざわざ弁護士の交代を記事にしているのは、一審の弁護人に何らかの問題があったからなのだろうか。



2008年05月07日(水) 船場吉兆の料理の使い回しは契約違反である

 連休中の記事であるが、日経社会面で、船場吉兆本店の料亭で客の食べ残した食事を別の客に出していたと報じていた。


 これについて、厚生労働省は「食品衛生法には反しない」としている。


 確かに行政法規には反しないかもしれないが、契約には違反しているだろう。


 というのは、店と客との間には、飲食物の供給契約が締結されており、その内容として、店がその客のために調理した物を提供すること、言い換えれば、他の人の食べ残しでない料理を供給することが含まれているというべきだからである。


 続報によれば、船場吉兆の全店で使い回しが行われていたとのことであり、ひどい話である。



2008年05月02日(金) 児童虐待は増えている気がする

 日経(H20.5.2)社会面に、児童虐待で施設に保護された子供が親元に戻った後で再び虐待されるケースが後を絶たないため、厚生労働省は、子供が施設から家庭復帰する際に確認すべきチェックリストを作成したという記事が載っていた。


 以前児童虐待問題を扱ったことがあるが、児童虐待の件数は増えている気がする。


 しかも、虐待する親は、一見して暴力的性格と思われるタイプの人だけに限らない。


 児童虐待問題に弁護士が関わるケースは少ない。


 しかし、今後は、児童相談所、地域住民、学校、医師、警察など協力して、問題解決に何らかの助力ができればと思う。



2008年05月01日(木) 定額補修分担金制度

 日経(H20.5.1)社会面で、借り主に修繕費用の一部を事前に負担させる「定額補修分担金」について、京都地裁は、これを無効とする判断を示したと報じていた。


 この定額補修分担金制度は京都から全国に広がりつつあるそうである。


 補修費を定額にすることは補修費にまつわる紛争を回避できるというメリットはある。


 ただ、貸し主は定額補修費として賃料の2.5か月分も徴収していたようであり、これは補修費として合理的な金額とはいえないだろう。


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