猪面冠者日記
今さらだが当分不定期更新

2016年02月21日(日) 最愛の子

名演小劇場三階 11:55〜14:10 130分

 公開は1月30日から。昨日四大陸女子フリーの生放送を見て気分はどっぷりスケートなんで、あんまり映画行く気にもなれないんだが、そろそろ行かないといけないな、というわけで今日行ってきた。三月の頭に旅行に行くから、映画は行ける時に行っておかないと。この間中野翠がサン毎コラムで誉めていたドリームホームも13日から始まってるから、こちらも行ける時に。ちなみにこっちはもう前売り買ってます。

 ちょっと寄り道しながら名演へ。前売りも何にも買ってないので今日は久々に定価鑑賞。で、11時ちょっと前に買ったらなんと一番だった。久々の名演でこんなことになっちゃって、嬉しいんだけど、い、いいのかしら。

 整理番号をゲットしたら、まずはお昼。名演の難点はすぐ近くに手頃なお食事どころがないこと。デニーズとコメダと、あとは大して旨くもないラーメン屋ぐらいしかない。ちょっとぶらぶらしてみたけれど、やはりこれといった所はなし。しゃあないので不本意ながらコメダのホットドッグで済ます。ええい、映画終わったらペギーに行ってケーキ食べてやるぞ!

 最近ツイッターにかまけすぎで深刻な読書不足につき、この間のディーパンに引き続き、今日も文庫本を持ってきたんだが、開場までの時間、結局ツイッターを覗いてしまう。ええい、みんな四大陸が悪いんだあ!

 栄光の一番で会場入りし、名演三階の特等席へ。ええ、あるんですよ。極私的な特等席が。しかしここまで来てなんだけど、子供がかわいそうなことになる映画は見る前から気が重いな。ネット上では「衝撃の結末」などという感想があったが、大丈夫なんだろうか。非ハリウッド映画は子供も動物も容赦なく死ぬから一片も油断できぬ。ああ、どきどき。

 「チェンジリング」とか「永遠のこどもたち」とか、幼い子供が親元からいなくなってしまうというストーリーは、どう足掻いたって辛い。なのでこれもやはり辛い映画ではあった。主役となる元夫婦だった男と女(ドラマの最初からこの夫婦は離婚しており、父と過ごしている間にその子、ポンポンは行方不明となった)の後悔に満ちた狂おしい日々。我が子がいなくなった後でも、取り敢えず働いて生活していかなければならない辛さ。そのような苦しみの中で、なお世間の無理解や無関心を目の当たりにする辛さ。途中から失踪児童を探す夫婦らの会に加わると、今度はまた仲間それぞれの悲劇が描かれ、どこまでも辛い。

 ただ実話を基にした映画なので、その実話どおり、中盤で夫婦は貧しい農村で見知らぬ女に育てられていたポンポンと再会する。だがポンポンを育ててきたこのホンチンという女もまた切ない。彼女はポンポンが誘拐されてきた子だったなどとは知らなかった。貧しい農村暮らしの彼女は、我が子との愛の日々以外何一つ持っていない。その「持たざる者」としての描写が一つ一つずしりと重かった。

基本的にこんな感じでずっと辛い描写が続くんだけど、特定の誰かに天秤をふることなく、一人一人丁寧に描いていて、子供を失ったいろんな夫婦の話は確かに辛いんだけど、「ああみんないろんな事情があるのね」という部分もあったりして、逆にそこが息抜きになった。またホンチンの弁護士もよかったな。最初はよくいる鼻持ちならない都会のエリートかと思いきや、彼も彼で複雑な家庭事情を抱えているんですね。

でもやっぱりホンチンの「持たざる者」としての描写に、特に胸が詰まった。結末も確かに衝撃的だった…。

 見終わった後は池下へ。先週の土曜も行ったけどな。二週続けてペギーだわ。ちなみにペギーでも地下鉄内でも、ツイばっかりチェックしちゃって、結局本はほとんど読まなかった。だって四大陸が(以下略)。

 弟一家が夕食に来るので、早めに帰宅して犬の散歩。真田丸も四大陸放送もリアタイできなくて辛いよー。で、弟一家が帰ってから録画をチェックしたら真田丸は録れてなくて、辛いどころじゃなかった。四大陸は録れてたけど。




2016年02月16日(火) ディーパンの闘い

伏見ミリオン座3 20:25〜22:25 115分

 めでたいミリオンのWポイントデー。いろいろしゃかしゃか済ませて7時半前には整理券をゲットしたんだが、003て。公開後最初のWポイントデーなのに、客いないのか。ツイッターを覗くと、佳菜子ちゃんが四大陸選手権へ出発と。急な参加で大変だろうけど、頑張れよ!

 整理券を貰ってから開場まで時間があるだろうと、あらかじめ文庫本を持ってきていた。ただ、ミリオン座のフロア内は音楽やら、宣伝のための予告編流しっぱなしやらで騒々しいので、ドトールでミラノサンドAとブレンドを嗜みつつ読書する。

 席に着いた。さすがに私で最後などということはなかったが、印象としては席の半分ぐらい。ミリオン3なんて67席しかないのに。

 スリランカの内戦で妻子を失ったディーパンは、祖国を捨ててフランスへ渡ることを決意する。同じように国を捨てようとしている難民たちの中で、偶然引き合わされた若い女性と小学生の女の子を妻子であると偽り、三人はフランスへと渡った。

 しかしようやく辿り着いたフランスも、決して平和な世界ではない。祖国の工作員が移民管理局の窓口担当だったり(単なる通訳だったかも)、早くも希望は打ち砕かれる。さらに、入居を許された団地もヤクザの溜まり場だったりしてもう最悪。結局、映画の後半は団地で起こったヤクザ同士の撃ち合いの中、ディーパンが「家族」を守るために戦う、という展開になる。

 なんとなく最終的にはドンパチがメインのようになってしまっているけれど、個人的にはディーパンたちが慣れない異国暮らしに何度もまごつきながら、だんだんと本物の家族になっていくという部分の方が好きだし、ドラマとしてもよくできていたと思う。女の子が初めて地元の小学校に行こうとする朝、不安のあまり、本当は父でもなんでもないはずのディーパンに抱きつく場面とかね。大人の二人にしても、言葉が分からなかったり、習慣を知らなかったりして、いろいろ間違いをしでかしちゃう。そうすると近隣のフランス人から「ここ違うんだけどな〜」と苦い顔で注意されちゃう。そういうシーンが結構何度も続く。そのたびにこっちは「ど、どうしよう、この人たちそのうちクビになっちゃう!?」「そのうちすっげえヘイトなこと言われたりしたらどうしよう」と、地味にはらはら。いやあ、戦闘シーンより遥かに心臓に悪かった。むしろこういう部分こそが本当の「闘い」じゃないか。戦闘シーンをあそこまで派手に盛り上げなくてもよかったのでは、と思う。




2016年02月14日(日) オデッセイ(2D字幕版)

ミッドランドスクエアシネマ 12:40〜15:10 142分

 朝方、土砂降りの雨で目をさます。その雨も9時にはやんでいたが、中途半端に目を覚ましたこともあって、大いに二度寝。適当に仕度してまずは栄へ。松坂屋の特設売り場へ行き、自分用にチョコを買う。どれもおいしそうで、金さえあれば何種類でも買いたかった。しかし今日は蒸し暑い。薄い上着を羽織っていったけど、これすらいらなかったかも。

 今日はオデッセイを見る。本当なら昨日14時45分からの回を見る予定だったのに、昨日上映開始40分位前にカウンターに行ったら「もう一番前の席が一席空いているだけです」などと言われ、やむなく今日のこの回を取った。地味な題材だと思うんだけど、ヒットしてるのねえ。まあこうやって前日でも整理券を取れるところがシネコンのよいところですわ。

 起きたのが遅く、朝食も半端な時間にとったので、お昼に名駅に着いたものの、まだ空腹になっていない。ただこれだと上映途中で腹が鳴りそう。それ以前に、空腹による睡魔というリスクがある。ミッドランド地下一階のDEAN&DELUCAというカウンターだけのコーヒーショップでホットショコラを頼み、最低限のカロリー(でもないか)を摂取してボックスへ。

 2時間22分という、私にとってはハードルの高い尺だったが(笑)、一度もトイレに立たなかった。面白かった! 近年今いちが続いた印象のリドちゃんだけど、これはいい! 原作未読なので、映画の魅力の多くは原作のものなのかもしれないけどさ。いやでも、原作レイプの映画がいくらでもあることを思うと、これはリドちゃん頑張ったでいいと思う(偉そう)。

 「さすがアメリカさんだ。火星まで行って撮影したんだな」と思えるほど、火星がもうなんと言うか、自然に火星! 背景だけじゃない、昼夜の気温差や大気中の酸素のなさなど、命に係わる自然描写も文字どおり自然に表現されてて、何も考えずに入り込めちゃう。

 火星基地一人ぼっちとなったワトニーが、一人こつこつと生存戦略にいそしむんだけど、ここが家族のためにも無事帰るとか、恋人のため、とかいったありがちなネタを一切振らず、ただ生きて帰りたいから頑張る、としているのがいい。そりゃそうだよな。誰もいなくたって、人間なんだからただ生きたいに決まっている。その辺をさわやかに流しているところがかっこいい。

 生きるか死ぬかのピンチの連続なんだけど、科学者である主人公はその時々はへこみながらも常に「なぜ? どうしたら?」と考える。その辺の探求の仕方が、悩み苦しみながらっていうより、どこか好奇心で楽しみながらやっていて、その鋼のメンタルに感心するばかり。

 ちなみにワトニーが火星ひとりぼっちなのは、仲間たちと現地調査中に嵐が発生して、で、彼だけが逃げ遅れてしまったため。ま、結果としてワトニーは置き去りにされたんだけど、仲間に恨みごとを言ったりしないとこもいい(一応、日常を実況しているから、うっかり言ったら大変だが)。どこまでも理知的で、そこに基づいたポジティブさ。さらに主人公だけじゃなくて、登場人物全員が、同じようなナイスガイなんだよなあ。こういうことを嘘臭くなく描けるってとこもまたすごいよ。マット・デイモンがイケメンすぎないところも効果になっているんだろうけど(笑)。

 ジャガイモ食べたいなあと思いつつ、終了。その後は栄へ。西原で今日のおすすめコーヒーとサンドイッチ。そこから歩いて栄の丸善へ行く。探している本があるのだが、あいにくここにはなし。

 新しくできた丸善のビルのそばにDOSと描かれた小さな立て看板があって、前から気になっていた。間の道をちょっと行った所にあるカフェ兼バー。店は古い階段を上がった二階にある。入るとなんともいい雰囲気。ううむ、これならコーヒーはここで頼めばよかったかなあと思いつつ、ショコラショー頼。うまーっ。こりゃきっとコーヒーもおいしいだろうな。

 時間がなかったので、すぐ退室。ええ、これから鶴舞行って気晴亭で早めの夕食とって、犬の散歩済ませて、BSの真田丸を追っかけ再生で予習した上で、地上波を実況したいの。お店の人に「え、もう出るの?」みたいなこと言われちゃった。すません、またゆっくり来ます。その後ロフトのジュンク堂へ。欲しかった本は無事ゲット。

 気晴亭でラーメン。しかしなんか物足りずにミニまんざも食べてしまった。嗚呼。

 帰ったら予約してあるBS真田丸が残量不足のために25分でストップ。ぎゃあ。すぐやりくりして地上波をセットする。くう、今日は「予習してから地上波実況」ができぬのか。取り敢えず無事録れてる25分だけは見て、散歩に行った。




2016年02月07日(日) 禁じられた歌声

名古屋シネマテーク 17:00〜 97分

 11時頃家を出て今池へ。名古屋シネマテークのカウンターで「禁じられた歌声」の整理券をゲット。なんと1番。もっとも上映時刻は5時からだからな。そりゃまだ誰も買いに来ないよ。

 最近鍵ホルダーがぼろぼろになってしまったので探している。今持っているのも、十年ぐらい前に買ったものだからなあ。昨日も大須の革製品屋さん覗いたりしたけど、これといったものはなかった。今日も三越やらラシックやらパルコやらぐるぐる。パルコで形が好みどんぴしゃを見つけたが、色が好みじゃなかったので結局買わなかった。

 映画が終わってから帰宅して散歩をすると、散歩の時間が遅くなってしまうので、一旦家に帰る。未見だった「逃げる女」五話視聴。来週最終回か。善良な被害者だと思っていた梨江子が、以前の人生で見せていた傲慢さ。それこそがあずみの裏切りに繋がっていたわけだが、最終回でこの二人の対決はあるのかな。折角田畑智子を配しているのだから、その辺を見たいんだけど、なんかもう殺されちゃってるみたいだ。

 太鼓の散歩したりして、4時過ぎに今池へ向かう。前の回が押してるのか、開場したのが5時10分頃。1番だったので余裕で席が取れ、すぐトイレへ。ところがトイレ済ませて席に戻ったらもう上映スタートしてやんの! ああ押してるから即開始なのね…。

 西アフリカのマリ共和国、砂漠の中にあるティンブクトゥという町はISに支配され、あらゆる娯楽はもちろんのこと、煙草一つまで禁じられていた。そんな中、遊牧をしながら両親と暮らす少女トヤだったが、隣人とのトラブルを引き金に、一家は思わぬ惨事に巻き込まれていく。

 うーん。起承転結の起・承がひたすらだらだら続き、最後にババっと大惨事が起こって終わり、という印象。人物一人、エピソードの一つ、どれを取っても今一つ掘り下げが足りない。紛争ものや、発展途上国が舞台のドラマのテンプレをそのまま使っているような感じだった。

  あー、こんなことなら別のにしたらよかったかなあ。最終週だからと思って行ったけどさ(ちなみに1月23日からやっていたので、今日のは三週目なのだ)。と後悔しつつ映画館を後に。昔に比べて、つまらない映画を見た後の損した気分が強いこの頃。若い頃に比べて時間の無駄遣いがほんとに嫌で嫌でしょうがない。

 7時前に上映終了。松坂屋のアスターでラーメン食べて8時帰宅。真田丸のBS放送を追っかけ再生。しかし隣がうるさくて今いち集中できず。やっぱり上の階のレコーダーで録った方がいいのかなあ。




2016年02月06日(土) 白鯨との闘い(2D字幕)

ミッドランドスクエアシネマ 13:50〜16:00 122分

 いつも土曜日は有効活用しようと思うのに、金曜に夜更かししてしまうもんだから結局起きるのは9時ぐらいになってしまう。まあ今日は根性で8時半に起きましたけど。どっちにしても今日は10時に犬のシャンプー屋さんが太鼓を迎えにきて洗ってってくれるので、それまでに散歩やらなんやら済ませなければ。でもって今日は「白鯨との闘い」を見に行く。もう今週でラストなんだよねえ。本当にあたらなかったのねえ。ちなみに明日は「禁じられた歌声」を見に行くから、白鯨は今日行くしかない。

 ベストを一着クリーニングに出しに行ったり太鼓を送りだしたりしつつ、やっと12時半頃に家を出て名駅へ。いつものミッドランドの鑑賞券を買い忘れてしまったので、現地調達だ。と、サンロードの金券屋へ。ミッドランドのチケットはなかったけど、白鯨の前売券を発見! 定価どおり価格は1400円。これでいいや、わーいよかった。そのまんまミッドランドのカウンターへ行って発券。

 それからまた地下へ行き、お昼を探す。家で10時頃に厚手のトースト二枚食べたせいか、この時間でもまだ小腹しかすいていない。地下のアンデルセンでサンドイッチとくるみパンを買い、サンドイッチだけその辺でむしゃむしゃ。ふと時計を見るともう1時半。いかん、1時40分には開場だというのに。急いで食べて上階へ。

 で、見始めてすぐ自分の失敗に気づきましたよ。これ「白鯨」じゃないんだよ。「白鯨」の元ネタになった、実在の捕鯨船乗組員たちの話だったんだ。北米版ポスターを見て「白鯨だ!」と早とちりしてたんだあああ。

 というわけでここに登場する白鯨は、ノロイの如き純白の悪魔ではなく、ただのでかい鯨。や、まあそれだけで十分に恐いっちゃ恐いし、大海原で鯨にどつかれまくり、さらには嵐に揉まれる捕鯨船とその乗組員たちの描写には終始はらはらさせられたけどね。嵐より恐い凪の地獄も堪能した。ただ、それでも「あ、なんか違った・・」っていう気持ちが最後まで抜けなくて、どこか楽しめなかった。まあそれだけあの北米版ポスターが素晴らしかったということよ。少なくともロン・ハワードには何の罪もありません。

 あと細かいことだけど、船が波に揉まれる映像が非常にぐわんぐわんしているので、2Dでも弱い人は酔うと思う。

 というわけで「面白かったけどコレジャナイ」というなんとも複雑な思いを抱えつつ、映画館を出る。太鼓のお迎えもあるので、大須にちょっとだけ寄る以外はどこにも行かず、帰宅。




2016年02月05日(金) やっとあけましておめでとうございます

 今頃何やってんだよおおおおおっ! って感じですが、本当今頃すみません。そおいや今年はまだ熱田さんにも初詣行ってないや。あばばばばば。

 重ね重ね今頃言うのも間抜けな話ですが、今回も充実した冬コミでありました。ほんと今頃白々しいですが…。いやほんとにいいコミケでした。ただ折角夏冬通して受かったわりには、冬の新刊があまりにぺらくてすみませんでした。次こそはいかにも新刊という本をお届けしたく思います。だからということもありますが、夏は申し込みをしませんでした。個人的にもちょっと忙しくなるかもしれないということもあります。

 ここの日記もすっかり滞っておりますが、一応映画の感想はちょいちょい書いてはいるんですよ。ただまあなんちゅうかすっかりツイッターの楽さに慣れきってしまいましてね。いけませんね、ほんと。真面目な話、ツイやる時間あったらもっと本読んで文章書かなきゃな! って思う今日この頃です。

 そうそう。去年ですけど、ついにベルリンへ行ってきたんですよ! で、その日記も絶賛滞り中です(ボカ〜ン)。だめだこりゃ。とにかく今年はもっと読む、もっと書くを心に念じたいと思います。

 というわけで、今年もよろしくお願いします。




2016年02月03日(水) 消えた声が、その名を呼ぶ

伏見ミリオン座3 19:30〜21:55 138分

 本日は午後から金山近辺でお仕事。が、思ったより早く終わったので、ダイエー寄ってくすむらの油揚げとか味付きたまごとか買って帰宅。太鼓の散歩も明るいうちに終了。うーむ、これは映画に行けちゃうではないか。ちょっと見たいと思っていた「消えた声が、その名を呼ぶ」に行ってくるか。時間的にもちょうどいいし。

 6時半ぐらいにカウンターで受け付けをしたら、なんと二番目。早い! まあそもそもスタートは12月26日からだったもんなあ。むしろよくぞまだやってくれていたと言うべきか。夕ご飯は上映前に、地下鉄で一駅行って西原珈琲店にて。

 登場人物のDQN率の高さから「それなりに面白いんだけどいまいちのれない」監督の一人、ファティ・アキン。そんなファティ・アキンが歴史ものに挑むという。できるのか? と半信半疑だったが、トルコ系ドイツ人であるファティ・アキンが、第一次世界大戦中にオスマン帝国が自国のアルメニア系住民に対して行った虐殺に関する映画を撮る、という点に興味が湧いた。

 冒頭で描かれた穏やかな日常から一転、村にいるアルメニア系の男たちが全員拘束される。そのまま辺境の採石地へ連行され、一年余りの強制労働。過酷な日々に何人もの男が命を落とす中、生き残った者たちも最終的には全員喉を掻き切られて殺された(銃弾の節約のために斬殺というすごい理由)。ただ一人、ナザレットだけは下手人がためらったために致命傷にならずに済んだが、声帯を損傷したために声を失った。なんとしても家族と再会しようと決意したナザレットは、オスマン帝国軍の目をかいくぐりながら、わずかな手がかりを頼りにシリア、南米、北米と、果てしない旅を続ける。

 お察しのとおり、戦争や紛争による一家離散というシチュエーションは大好物でございます。というわけでこの手の映画も見慣れているんだが、歴代のこのジャンルの中でもナザレットの強運と生命力は一、二を争うかもしれん。見た目は優男風で、全然強そうに見えないのに。

 各地でのエピソードはどれもそれなりに印象的なのだが、右から左という感じで、流れや繋がりの方が今一つ。と言うか、前半の、流刑先から放浪を重ねてシリアのアレッポに辿り着くまでの話が濃すぎて、それ以降の話がどうにも薄いのだ。まあアレッポまでのエピソードは実に分かりやすい地獄行脚だからなあ。ここがあるからアレッポの石鹸商人宅での束の間の平穏がよけい沁みるし。そう、この時代のアレッポはまだ多少平和なのよね。それが今じゃ…。ああそう言えばアレッポの石鹸買って下さいっていうツイートがRTで回ってきたりしたっけなんて思い出すだに悲しいわ。

 というわけでファティ・アキンの監督作としては一番好印象だったものの、映画としてはちょっといろいろ惜しい作品だった。ちなみに原題は“THE CUT”。

 帰りの地下鉄を読み間違って、伏見駅で延々待つ羽目に。



 < 過去  INDEX  未来 >


バンビーナ [MAIL] [HOMEPAGE]