猪面冠者日記
今さらだが当分不定期更新

2015年09月12日(土) あの日のように抱きしめて

名演小劇場3階 14:50〜16:35 98分

 11時頃、名演へ行って整理券を取り、それからロングブーツを一足売りにコメ兵へ。数年前にバーゲンで買ったものの、去年の年末に買ったロングブーツの方が履きやすくて、古い方はすっかり履かなくなってしまった。このまま持ってても邪魔になるだけだったので売りに行くことに。整理券を貰ってから20分位待ってようやく査定となったが、結局値は300円。うう、大して傷もないしほとんど履いていないからぺかぺかだよ。千円ぐらいは行くと思ったんだけどなあ。昔に比べて買い取り額が下がったような気がする。まあただよりましだけど。その後は香蘭園でラーメン。

 食後は栄へ。靴下屋で小さい靴下を三足買い、その後映画館へ。

 戦争中、ユダヤ人であるネリーは親族と共に収容所へ入れられていた。生き延びはしたが収容所で受けた虐待がもとでネリーの顔は大きく損傷してしまった。親族が全滅してネリーが多額の遺産を受け継いだことを知った親友のレネは、そのお金をもとに高度な整形外科手術を行っている病院でネリーが手術を受けられるよう計らう。

 手術の甲斐あってネリーは以前と同じ顔を取り戻す。同じユダヤ人であるレネは将来をパレスチナで過ごすことを望んでおり、ネリーのことも強引に誘おうとする。だがネリーは生き別れになった夫、ジョニーを探し出し、いつかベルリンで以前の暮らしに戻ることを望んでいた。そんなネリーに対し、「あなたが隠れ住んでいた場所を密告したのはジョニーだ」と主張するレネ。レネの言葉が信じられないネリーは、ジョニーを探すために荒廃したベルリンに行く。ほどなくジョニーと再会できたネリーだったが、なぜかジョニーは目の前のネリーをネリーと分からず、その上「死んだ妻は多額の遺産を相続した。君は妻にそっくりのようだから妻になりすまして彼女が生きているということにしてくれ。遺産は一緒に分けよう」などと持ちかけてくる。ネリーは不可解な思いを抱きながらも、ジョニーのこの提案を受け入れる。

 以後、ネリーとジョニーの奇妙な生活が始まるのだが、「ジョニー、ほんとのところどうなのよ?」という謎はいっかな解けない。ジョニーがネリーをネリーと認識する機会も、来そうで来ない。また、ネリーはかつての知り合いを訪ねたりもするが、みんなどこか硬い反応だ。それはホロコーストを防げなかったドイツ人としての罪悪感からなのか、それとももっと別の気まずい事情があるからなのか…。

 監督はクリスティアン・ベッツォルト ヒロインのネリーを演じるのはニーナ・ホス、ネリーの夫ジョニーにはロナルド・ツェアフェルトと、「東ベルリンから来た女」と全く同じ布陣だが、歴史ものという一点を除けば前作とはキャラクター雰囲気も全く異なっている。前作が概ね性善説に基づいていたのと比べると、こちらは常にもやもやとした不安がつきまとい、物語が進めば進むほど登場する誰も彼もを信じられなくなってくる。いやもうはっきり言ってこれ、ヒロインのネリーも実は頭おかしくなってるんじゃない? などと思う時も。

 謎が明らかにならないままそろそろこちらの忍耐も限界に来ようかという頃、本当に最後の最後に事実が明らかになるのだが、正直ここは物足りなかった。明らかになったのは加害者が誰かということで、その人がなぜそんなことをしたのかという部分は一切明かされなかったから。正直誰がなんてどうでもいいから、そっちを丁寧に描いてほしかった。でもネリーが「真実」に手をかけようとする時のニーナ・ホスの演技は素晴らしかった。そして「誰が」という事実を彼女が理解した時の、どこか邪気をまとったような表情も。

 なんとも重苦しい後味を残しつつ、松坂屋に寄って靴の中敷きを買う。いつもだったらこの後もっと寄り道して帰るとこだけど、もう遅いのでそのまま帰宅。太鼓の散歩をした後は、カルチェでケーキとミルクティー。今日はこれが晩御飯。お店の方で新メニューの桃のタルトを買って帰宅。

 ところで来週、なんとベルリンへ行ってきますよ(ボカ〜ン)。今日は映画見ながら「ああ、もうすぐここに本当に行くんだ」などと思いながら見ておりました。




2015年09月05日(土) それでも僕は帰る

名古屋シネマテーク 10:40〜 89分

 8時過ぎ起床。ううん、もうちょっと早く起きようと思っていたのに。これで土日の地下鉄ダイヤだとギリギリ到着になっちまうぞ…。で実際ぎりぎり着だったのでした。間に合ってよかった。しかし暑い。真夏の格好をしてきたのは正解だった。ロビーの自販機でいろはすも買う。

 シリア内戦を描いたドキュメンタリー。バセットは元々はシリア代表チームのユースに入っているほどのサッカー選手だったが、アサド大統領の圧政に義憤を覚え、ホムスの民主化運動に加わる。そうしたバセットの動きを、彼の友人でもあり同士でもあるオサマがカメラにおさめ、ネット上にアップし続けた(それが本作品である。)。半ば祀り上げられるようにしてホムスの活動グループのリーダーとなったバセットだったが、アサド政権は彼らも含めた各地の民主化運動を武力で鎮圧した。その結果、ホムスでは170名もの市民が死亡。当初は非暴力を貫こうとしたバセットたちだったが、これを期に反政府ゲリラ活動へと突き進んでいく。

 始まった当初から緊張感に満ちた画面だったのが、バセットと仲間たちが武装グループと化してからは、ひたすら戦闘戦闘、逃亡、戦闘。仲間が一人また一人と傷つき、命を落としていく。一方で一般市民に対する政府の攻撃は容赦ない。それでも戦い続けるバセットは雄々しくもあるが、やはり彼がかつては有望なサッカー選手であったことを思うと、痛ましさしかない。ちなみに上映の宣伝ポスターや前売券に使われているバセットの写真は、行き詰ったバセットが「もう疲れた…」と呟いている際のもの。

 なお公式サイトのFAQには、2014年4月に作品のプロデューサーであるオルワのコメントが載っていて、それによればオサマは政府側に拘束され(ドキュメンタリー内でも彼は途中で捕まっていなくなる)、現在も行方不明。バセットは生きているらしいが、その後過激派へ転向していったかもしれない、とのこと。一方、ホムスの街からは反政府勢力が一掃され、政府の管理下に包囲されているそうだ。思えば映画が終わりに近づくにつれ、バセットの言葉が観念的になっていった。いざとなれば玉砕するまで、例えそれで死んでも志は永遠に不滅だ、などと。そんなバセットのことを思うと、彼が過激派に転向したかもしれないという噂は、事実なのかもしれない。

 ぐったりと不毛な気持ちで映画館をあとに。駅までの道すがら、沖縄料理店を発見。ソーキ蕎麦が大好きなので頼んだのだが、おっそろしくまずかった。なぜだ、なぜ沖縄以外で食べるソーキ蕎麦は大外ればかりなのだ…。どちらにしても、ここは二度と行くまい。

 口直しにペギーへ急ぐ。先月の後半は休み続きで、折角の夏休みもご無沙汰だったからな。大いに満喫するぞよ。コーヒーゼリーを頼み、さらにコーヒーも二種類頼んだ。ええ満喫しました。

 今月18日からベルリンへ行くにあたり(!)、ガイドブックを物色している。もうちょっとマニアックなガイドブックないかなあって。というわけで栄の丸善へ。そう、かつて明治屋の隣にあったものの、丸栄の片隅へと去っていったあの丸善が、装いも新たに今年の4月28日、好日山荘の隣にでかでかとオープン。もう嬉しい嬉しい。が、ここに求めるものはなし。他の本屋にも寄ったけど、これといったものはなかった。今日は4時から近所の美容院を予約していたので、ガイドブック探しはそこそこに切り上げて帰宅。

 スーパーでうどんのつゆを買ってきて、夕食はうどん。天ぷらの残りも一緒に。「あまちゃん」のまとめ再放送を眺めつつ、ずるずる。




2015年09月04日(金) ヴィンセントが教えてくれたこと

伏見ミリオン1 20:10〜 102分

 思えばこの映画の第一報を耳にした時、一番驚いたのは主役がビルであるということ。まだビルが、あれほどリスキーなあのビルめが主役を張れる、張らせてくれる層があるのだなと、非常にじーんとしたものだ。

 同じくビル主役だった「私が愛した大統領」に比べると今回は期待値も高かった。「私が愛した大統領」は見るからに「まあこんなもんだろうなあ」という感じが宣伝ポスターから漂ってたし。それに比べりゃ今度は十八番のクソ野郎の役ですからね。さぞかし光り輝くビルが拝めるだろうと、そりゃあもう楽しみで。もちろん前売も買ったよ。ちなみにムビチケでした。へえ、プリペイドカードみたいなのね。こういうの初めて。

 というわけで超はりきっての公開初日鑑賞です。7時過ぎと、えらく早い時間に到着して整理券ゲット。まあまあ早く着いたわりには13番か。「おお、結構入っているな」と、自分の映画でもないのに安堵する。

 夕ご飯は映画館そばのラーメン屋で。その後映画館に戻って、カフェでゆず茶アイス。ロビーの椅子に座りながら、ミリオン座備えつけのCut9月号を読む。をを、ビルのインタビューが載ってるじゃないか! そのうち買おうっと。

 思いっきり期待をした上でとすると、ヴィンセントはやや期待外れ。いや、映画としてはとてもよかったんだけど、ヴィンセントのキャラがちょっと不満でな。「ろくでなしに見えて老人施設に入っている妻のことを今でも愛している」とか、そんな善良な面の描写なんて、ビルには不要ですよ! まあクソ野郎だけど本当はいい人って決めちゃってるんじゃなくて、あくまでこんないい人の部分もある、と寸止めにしているだけ良心的ではあるけれど。ただ私から言わせればそれすらもぬるい。ビルはいいの、クズで!

 まあしかし、「万馬券を当てたのに借金返済に回さず、知り合った子供のための貯金にしちゃうんだけど、その後また博打で柳の下のドジョウを狙ったら大外れで結局また元のスカンピンに」なんて奴だからな。やっぱりいい人描写でフォローしてもらうことが必要か。モラルの高い現代人からビルが必要以上に嫌われるのもよろしくない。

 そんなわけでビルの造形に関しては不満ではあるものの、主人公母子の凸凹なやり取りは笑えたし、文字どおりカラフルな小学校の教室でのわいわいも結構笑えたし、そして何より最初から最後までビルが出てるし(当たり前だ)、なんだかんだで大大満足でありました。パンフも買ってったよ。



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