猪面冠者日記
今さらだが当分不定期更新

2014年07月20日(日) ノア 約束の舟

 すでに20時20分からの回のみ。ミッドランドのチケットはすでに買ってあるので、今日一日の計画としては、11時ぐらいから名駅に出かけてカウンターで整理券をもらい、それからお昼を食べて名駅をぶらっとして一旦帰宅、夕方に太鼓の散歩を済ませ、また名駅へ行ってゆっくり夕食を食べて悠々と映画館へと考えていた。

 ところがいざお昼間にミッドランドのカウンターに並んでいたら、見事に肝心のチケットを忘れている(ボカ〜ン)。もういっそどこかの金券屋でミッドランドのチケットを一枚買ってきて済ませようかとさえ思ったが、忘れてきたチケットは有効期限が7月31日までだからどうしても今日これを使わにゃしゃあない。て言うか、そもそもこのチケットからして千円で買える所が あったのにそこで買い忘れて別の適当な金券屋で買った代物。もう己の機能不全っぷりで時間もお金も損しまくりで嫌になる。

 それにしてもカウンターの前はすごい人だったなあ。さすが夏休み&三連休。これじゃあノアといえども、夕方頃にはろくな席が残っていないかも。

 気を取り直して名駅をぶらぶら。と言っても暑いからあんま歩き回る気がしないんだけどね。お昼を食べようと名鉄のレストラン街に行ったんだが、もう12時を回っていて一番混む時間帯。はたしてどこの店もとんでもない行列で、ソッコーに諦める。エスカレーターで下っている途中、三階のラトゥーというカフェのクレープがうまそうだったので、そこへ。空いているわりにブツが出てくるまで随分待たされたが、クレープそのものはおいしかった。ちなみにプリンアラモードのついたクレープでした。

 コミケカタログを買っていなかったことを思い出したので、エスカを通ってアニメイトへ。夏休みだし三連休の中日だし、レジ前はさぞかし長蛇の列かと思ったんだが、そんなに並んでいなくてすぐ買えた。この後いつもだったらキャラグッズも見たりするところだけど、そんな根性はなく、カタログだけ買ってさっさと脱出。そのまま帰宅するものなんだったので、エスカだけぶらぶら。楽ちんそうな上にそこそこかわいいワンピースが2000円ちょっとで叩き売られていたので、即買い。

 HDDの整理をし、太鼓の散歩を済ませているうちにあっという間に7時。慌ててまた地下鉄で名駅へ。ミッドランドのカウンターは昼に来た時と比べてすっかり空いていた(ロビーは人で一杯だったけど)。まともな席が取れるかどうか心配だったが、意外に選び放題で、無事に真ん中より少し後ろの通路側を確保。ええ、そりゃ通路側ですよ、145分ですから。開場時間まで近鉄の地下食品街で、明日のお昼用におにぎりを買う。

 いざボックスに入ると、そこは連休の中日とは思えないくらい、がらっがらだった(笑)。さすがに十人はいたと思うが…。ううん、こんなことならなーんも慌てる必要なかったねえ。

 アダムとイブが楽園を追放され、人類は地上で生きるようになりました、という旧約聖書の世界から物語は始まる。嫉妬から弟アベルを殺してしまい、殺人者となったカインは当時の住処を離れ、別の場所で子孫を作りました。・・女房はどっから調達したんだって話ですが。まあそれ言ったらアベルの弟、セツだってどっから女房もらったんだって話になるので突っ込みはしません。まあ大体旧約聖書なんて内容むちゃくちゃですからね。

 とにかく、カインの子孫たちは結構優秀で、多岐に渡って才能を発揮。一方でセツの子孫も脈々と続いておりました。そうしてまた幾星霜。かつてはいちじくの葉っぱ一枚で股間を隠すのがせいぜいだった人類も、今ではそれなりに発展しておりました。ファッションといい背景といい、ロード・オブ・ザ・リングを殺風景にしたような世界に。「どうせこの後洪水でリセットだし、なんでもいいよね〜」っていうスタッフの心の声が聞こえてくるようです。この第一印象で早くも最初の萎えがきます。

 カインの末裔、トバル・カインは鉄や銅を作り出し、武力でもって人類の大半を支配しておりました。その力はセツの末裔たるノア一家にとっても無関係ではなく、一家はトバル・カインらの巨大勢力に怯えながら、世界の片隅でひっそりと暮らすばかりでした。さらに厄介なことに近年に入り、乱掘のために鉱物資源が枯渇。追い打ちをかけるように作物も原因不明の不作で世界規模の飢餓が発生。わずかな食料を巡って、ノア一家はますますトバル・カインらに追い立てられます。そんなある日、ノアは恐ろしい未来を知るわけです。そう、皆さんご存知の。その後の展開も皆さんご存知の通り、なのですが…。

 気になるのはなぜ神様はなぜ数ある人類の中からよりによってラッシーを選んだのかということ。だってあのラッシーですよ。気に食わん対応をされたからといってホテルマンに受話器ぶつけるような野郎ですよ。それともあれですかね、こんなラッシーですらましに思えるほど、人類のクオリティは低かったのか。だとしたらそれを創造した神の責任は? 頭の中がぐるぐる回ります。

 で、結局総145分をもってしても、「なぜラッシーという」私が求めた答えはついになかった(ボカ〜ン)。

 いやあもうそれ以前にねえ、「名作を映画化してみたら、特定のスターありきで脚本作っちゃってて、結果として原作レイプの駄作に」の典型でしたよ。まずラッシーを主役に据えちゃったもんだから、子供たちの年齢を下げなきゃならなくなった。ノアの三人の息子、セム、ハム、ヤフェトは原典では全員妻もちなんだけど、映画ではセムが20代前半、ハムが14、5歳、ヤフェトは小学生ぐらいなんすよ。そんなら年若い息子たちの父親として、男を見せるラッシーが描かれるのかといったら、そうじゃない。そこにいたのはまだ世間知らずな息子たちにネチネチと絶望を説く、ひどいお父さんがいるばかり…。

 何がひどかったかって、まず一番はここよ。ノアの長子、セムには昔から彼女がいるんだけど、ハムなんかは同年代の女の子自体、あんまり会ったことがなくて、兄ちゃんを羨ましがりながら「でもいつか俺だって」と夢を膨らましているわけです。ところが同じ頃、父であるノアは何だか知らないけどちょっとしたことで鬱になっちまう。いちいち書かんが、少なくとも絶望するきっかけとしては弱すぎるエピで、だけどとにかくノアは「もう人間なんてみんな死んじゃえ!」となってしまう。方舟自体は神様の言いつけで一応作るんだけど、人類は自分たち一家でおしまいにするんだい、とかたく心に決めてしまっている。

 ノアはその決意を家族にも話します。まだどこか幼いハムにもはっきりと告げます。
「人類はわしら一家で最後! だからお前に相手はおらん! お前は童貞のまま死ぬのだ! お前の仕事は先に死んでく家族の介護!」
 ひどい、むごい。こんなことを家族全員同席の場で言われるハムがほんとかわいそう。もうその晩のうちにハムがノアを金属バットで殴り殺しても不思議ではありません。ノアさん、あんたそれでも父親なの? さらにノアは、セムの妻がセムの子を身籠っていると知るや「もし女が産まれたなら(子孫が増えちゃうから)殺す!」と真顔で言います。なんなんだ、もう。

 と言うかほんとに監督のダーレン・アロノフスキーはノアよりトバル・カインに肩入れしてないか? っていうくらい、このノアさんは主人公としての魅力がない。神の意志には唯々諾々と従うばかりだし、それでもたまに自分の意見言ったかと思ったら「人間なんてみんな死んじゃったらいいの!」って、ただでさえ辛気臭い映画をよけい辛気臭くするようなことばかり。これじゃどうしたって徹頭徹尾「俺さえ生き残りゃ」を貫くトバル・カインの方がかっこいいに決まってる。まあアロノフスキーがありきたりな英雄譚に興味がないのは分かり切っているんだけど、それならそれでなんでそんな人に監督の仕事が回ったのやら。

 結局ノアさんはその後、「いやそんなのもともと分かってたやん」て感じのなんとも自明なことでもって、未来に希望を抱くようになり、けれどもバカ親父が多少改心したって、どうせこいつ毒親だもんね、と悟ったハムは家族のもとを離れ、一人旅に出るのであった。なんなんだ、もう! とりあえずハム君に幸あれとは思ったけど、あたしの心はわだかまりまくりよ!

 あと細かい所でいくと、動物が虐殺されるシーンが結構あってへこんだ。それと、やっぱあの震災の後で大波に巻かれて死んでいく人々の姿を、ただのCGとはいえリアルに見せられるのは、あんまり気分いいもんではないです。まああれですね、前者はともかく後者は分かり切っていたんだから、見に行ったあたしが悪うございます。

 22時45分終了。こんなやりきれない映画を見た後は、スタバみたいな、うまいけどうますぎもせず少なくともまずくはないコーヒーでも一杯飲んで帰りたいところでしたが、もうどっこも開いていないので、まっすぐ帰るばかりでした。




2014年07月19日(土) 太秦ライムライト

 夏特割ドニチエコきっぷは16日に発売されたばかりなのだが、今日最寄駅に買いに行ったらすでに売り切れ。ガーン。金山駅にはまだあるよということで、そちらで二セット無事購入。やれやれ。

 その後お昼に中日ビルの地下でラーメンを食べたのだが、店を出てから隣がおにぎり屋さんだったと気づいて、しまったと思う。ここでおにぎり買ってから映画館行った方がよかったなあ。そんなこんなで12時ちょいすぎに三階の名演1へ行くと、ロビーは人でいっぱい。整理番号は56番。ひー、遅くとも20番台ってパターンがほとんどなのにー。う初日の初回がこんなにいるなんてええ。あらためて福本さんの人気にびっくり。あ、言うの遅くなりましたけど、今日は福本清三さんの初主演作、「太秦ライムライト」の初日、12時25分からの初回にやってきたのであります。

 ロビーが人の多さのせいもあって暑く、これではボックスの中の空調がちゃんときいているかどうか不安だったのだが、こちらは快適で安心。本編は予告もなく、ほぼ定時にそのままスタート。

 楽しみにしてはいたけれど、これより前に「超高速!参勤交代」を見てしまっている。作品そのものが面白かった「超高速!参勤交代」に比べると、もう一方の「太秦ライムライト」は、公式サイトや何かからどうしても「福本清三ありき、そしてそれに尽きる」という匂いが漂ってきていた。悲しいかな、それは当たってしまった。「超高速!参勤交代」がなければ、だめな部分も含めて気楽に楽しめたかもしれないが、今となっては「時代劇の未来云々って言うけど、やばいのは時代劇っていうより東映じゃないの」という思いが残るばかり。福本さんの日頃の稽古や、本番前の殺陣の振り付けの確認などは、なかなか劇作品では見られないものなので面白かったが、それだけに肝心の物語があんまり大したことなかったのは悲しかった。

 あと松方弘樹はやっぱりスターだなあと実感。スッと出てきただけで空気が変わりますな。殺陣の美しさは言うまでもなく。俳優としては決して好きじゃないんだけど、かっこいいものはかっこいい。

 外を出るとどんよりとしていて今にも夕立がきそう。とりあえずお茶、と久し振りに栄の「長靴と猫」へ。ダージリンとブラウニーケーキをいただく。お好みのカップに入れてもらったダージリンと共においしくいただき、ぼけーっとしているとお店の人たちが豊橋の辺りで電車が止まっているなどと言っているのが耳に入ってきた。実はここも今雨が降っているらしい。あらま。まあ、傘なら持ってるけど。

 ワンピースが欲しかったので、三越に寄ってラシックも含めてぐるっと回り、松坂屋やナディアパークも一回りしたのだが、欲しいものはなし。結局大須のローズルームにかわいいのがあったのでそれを買った。3121円(笑)。それと金券屋でミッドランドの券も。明日「ノア 約束の舟」を見に行くために。はー、ほんとだったら千円で買えるとこがあったんだけどな。そこでは買い忘れたんだ、ううう。いや、普段数千円単位の無駄遣いなんて、しょっちゅうやらかしてんだけどね。




2014年07月03日(木) 諸田玲子の「波止場浪漫」が終わってしまう

 日経の朝刊で4月18日から始まった諸田玲子の「波止場浪漫」を、第一回から毎朝楽しみに読んでいたのだが、今日の朝刊に「波止場浪漫」は10日で終わり、11日から新連載が始まるとの記事が載っていた。ああ、そうか終わっちゃうのか。確かにここ数回の展開からして風呂敷を畳みにかかっているという感じだったからなあ。

 「波止場浪漫」は次郎長の養女、おけんを主人公とする時代物だ。第一次世界大戦の頃、四十代のおけんを現在形として、十代・二十代の自身や家族、隣人を回想していくという物語だ。幕末の東海道で大親分として名を馳せた次郎長の、明治に入ってからの意外な素顔、そんな彼を支えた次郎長三番目の妻、「三代目」おちょう。次郎長のただ一人の実子でありながら、ねじまがった根性で周囲に迷惑をかけ続ける初志郎。そんな一家の前に入れ代わり立ち代わり訪れる、様々なわけありの人々。彼らは皆、貧しさにそして時代の移り変わりに翻弄された人々だ。そして、主人公であるおけんもまた、ままならぬ人生を生きねばならなくなる。

 作中でおけんが樋口一葉全集を読むくだりがあるが、諸田玲子自身が意図的に樋口一葉的な世界を描いているのだろう。女であるがゆえの、また貧しさゆえの惨めさというのは、いかにも一葉的だ。ただ一葉がまさにそうであったように、この物語もまた悲しさの中に不思議な美しさがあり、毎回の読後感もなぜだか明るい。最終回においておけんが自分の人生にどんな決断を下すのか、あとわずかだが楽しみに読んでいこうと思う。単行本になったら是非買ってまとめて読みたいものだ。




2014年07月01日(火) グランド・ブダペスト・ホテル

 6月6日金曜日から上映が始まった本作も気がつけば開始から一ケ月になろうとしている。さっさと見に行けなくてビルやウェス君に申し訳ないと思いつつ、本日ようやっと決行。20時30分開始のような時間帯がまだあってありがたい。こういう時間帯なら火曜日のダブルポイントデーに行けるからね(せこい)。しかし今日は夕方近くになっても結構暑くて参る。昼間はとうとう30度越えだ。ああこうやって真夏になっていくのだね。まあ、朝晩が涼しいだけ、まだましか。

 冷凍庫のごはんを解凍してインスタントの野菜カレーで夕食。ささっと満腹になった所で、まだ暑い中太鼓の散歩を。ああすまぬ。それやこれやで伏見へ。「グランド・ブダペスト・ホテル」は先週まではミリオン1だったが今週からミリオン2。まあここもミリオン1とおんなじぐらいの大きさだからいいさ。時間は20時30分から22時15分。上映時間は100分。

 ファーストデーでしかもダブルポイントデーなんて相当混むのではと思ったが、整理番号はなんとか019で。それから映画館のすぐそばにある松島書店へ。本当なら発売日である昨日のうちに買いたかった「ますらお 大姫哀想歌」を探しに。新刊とは言えそんなメジャーな作品じゃないし、ちっちゃい本屋さんだから売ってないかなあと思いながら入ったら、一冊だけ売っていた! 万歳! 思わずしっかと手に取る。うーむしかしこうして実際に目の当たりにしてさえ、まだ新刊が出たのが信じられない(笑)。

 映画館のカフェは人が多くてがやがやしていたので、上島珈琲店でアイスコーヒーをすすりつつ買ったばかりの「ますらお」を熟読(どうでもいいけど、アイスコーヒーはSサイズを頼むんだった。ここって何も言わないとソッコーでMをすすめてきて、うっかり『はい』って言っちゃってMをドンと渡される羽目になるのね・・)。さてますらお。全ては発狂した大姫の回想から始まる。義経が義仲を討ち義高が殺されるまでがメインストーリーで、あとはますらお全体のお話がダイジェストで綴られている。いや、感慨深いのひとこと。アワーズ誌で最終回のみ読んだけど、感想はその時と変わらない。絵はかなり当時の絵柄に近づけているし、キャラクターたちもほぼ当時と同じ息吹で動いている。唯一頼朝が連載当時と変わったなあと感じるぐらい。正直頼朝は前のキャラ解釈の方がよかったけど。

 リハビリっぽさはゼロではないけれど、作者があの続きを書きたかったんだ、ということが伝わってきたがのが嬉しかった。ひとまず安心して続きを待つことにしよう。

 さて肝心の「グランド・ブダペスト・ホテル」だが面白かった。少なくとも眠くなるところが今までで一番少なかった(注:今さら説明するのも野暮だが私はウェス・アンダーソンの映画はマックスの頃から大好きだ。だが疲れている時に見てはいけないのも確か)この人の独自のテンポや画面の色調など、もろもろの芸風はデビューの頃からずっと変わらないんだけど、この変わらぬ芸風のまま、山崎豊子もびっくりの歴史大河ドラマをやってしまっている。ウェス君のあの芸風でそんなもんできるのかと思うんだが、できるのであった。ちなみに物語の舞台は東欧某国という設定(東ドイツではないw)。第二次世界大戦前の最後の黄金時代とその後の恐怖の時代、さらに戦後の共産主義政権による統治下の時代、それぞれのホテルの顔が描かれる。自分にとって思い入れの強い時代が、ウェス・アンダーソンのあの独自のカラーで再現されていくのは、それだけでただ嬉しかった。

 おっと思ったのは「ライフ・アクアティック」の頃は全くなっていなかったアクションシーンが、しっかりできていたこと。さりげなく進化していたんだなあ。もちろんこの人の芸風からして察しがつこうが、俳優自身が動きを見せるタイプのアクションではなく、あくまで見せ方に依ったアクションだけど。それもかなり漫画チックな見せ方だったな。ま、この人の映画自体が全ページフルカラーの漫画みたいなもんだし、問題ないか。今作での主なアクション担当はウィレム・デフォーなんだが、「ライフ・アクアティック」では船長ラブな乗組員その一だった彼が、本来の彼らしい狂った殺人マシーンを演じていて、これがもうどれも笑っちゃうような殺し方ばかりで、本当に笑った。

 ビルの登場シーンはほんとに少なかったけど、「ムーンライズ・キングダム」よりはたっぷり出ていたのでよしとする。



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