猪面冠者日記
今さらだが当分不定期更新

2014年05月31日(土) 「ダウントン・アビー」面白いね

 1912年のイギリスを舞台に伯爵一家を描くイギリスのテレビドラマ「ダウントン・アビー 華麗なる英国貴族の館」(どうでもいいがださい副題だ)。TLでいろんな人が予約して見る! と言っていたので私もなけなしのHDD残量でもって第一話からセット。古城を舞台に伯爵一家の愛憎劇だなんて、その設定だけで萌えますな。ついでに言えば封建時代ど真ん中ではなく、これから先荘園領主たちがどんどん没落していく20世紀初頭という時代設定がよい。時代の変わり目と人々の有為転変というのは、時代物エンタメの永遠のテーマだね。

 始まったものの見ている時間がなかなか取れなかったんだが、今日やっと第三回までをまとめて見た。ついでにお紅茶もセットして。普段使わないウエッジウッドまで出しちゃうよ。気分だけでもお貴族様よ。で、結局それから三回分一気に見てしまったよ。これほんとに面白い! 一回につき50分強とそこそこのボリュームなのに長さを全く感じないわ。第一回目の、タイタニック沈没のニュースが一面におどる朝刊が届けられてくる朝。目を覚ました伯爵一家たちが呼び鈴を鳴らし、それが台所で一斉に鳴り響き、お屋敷の従業員たちが忙しく立ち回る。このエマエマしい画面ですでに私の心は鷲掴み(しかしこうして比べるとつくづくエマってすげえ漫画・・)。

 第一回目は70分もあって、その上内容なんてざっくりまとめちゃえば「伯爵家の嗣子がタイタニック号事故で死亡の知らせ、と同時に新しい従業員がお屋敷に」ってだけなんだけど、それに絡んで変わっていく一家と下男下女の描写がとても細やかで、その部分だけで見入ってしまう。ああ早速次の回が待ち遠しくなってしまったぞ、どうしよう!

 ただ長女メアリーのキャラクターがいまいち分からなかった。まず、メアリー、ひいてはクローリー家の実態を理解するために現状を整理してみた。

 そもそもクローリー家の現当主ロバートとその妻コーラとの間に生まれた子供はメアリー、イーディス、シビルの三姉妹のみで、男子がいなかった。限子相続制という法律のため、貴族には血族の男子一人にしか相続権は認められていない。そのためにロバートのいとこであるジェームスがクローリー家の嗣子となっており、クローリー家の財産と荘園はいずれはジェームスに、そしてその次はジェームスの息子パトリックに受け継がれるはずだった。ジェームスは一家の言葉を借りれば伯爵家には相応しくない人物だった。ただその息子パトリックはクローリー夫妻のおぼえもめでたく、メアリーとの婚約もあって、伯爵家とその屋敷、ダウントン・アビーの行く末は安泰であるかに思われた。

 だがタイタニック号が沈没し、乗船していたジェームスとパトリックが死亡したことで、事態は一変。一族の血筋を辿って新たに浮上した相続人は、弁護士のマシュー。しかし彼は貴族ではなかった。コーラもメアリーも、ロバートの母ヴァイオレットも「貴族でもなく、親戚と言っても限りなく他人に近い人間がダウントン・アビーの主になるなんて」と穏やかではない。ロバートもせめてコーラの持参金だけでも法的に見てマシューが相続人となることは動かしようもなかった。

 まあこんな感じで三話まで見たんだけど、どうもメアリーの性格が分からないなあ。伯爵家の長女に生まれた割には家意識があまりにも稀薄。他人同然のマシューが家財を相続することが不満でしょうがないんだけど、いやそりゃあんた家督とはそういうものだし、そもそも女なんだししょうがないじゃないか。昨日今日ルールを知らされたわけでもあるまいにねえ。完成度の高いドラマなだけに、メアリーだけが中途半端に現代風なのはいただけないなあ。次女のイーディスがまたおバカさんで相続やら婿選びやらで焦っている姉にことあるごとに面当てかましたりして、まあ大人げない。ただこのイーディスの方は単なるおバカさんというか、単純なんで、メアリーみたいに性格に違和感を覚えることはない。一方で末っ子のシビルは超いい子。メイドのグエンが秘書を目指し密かに通信教育を受けていたことを知ると、「すごいわ! 私に是非応援させて! 面接を受けるなら私が紹介状を書いてあげる!」と、サポーター宣言。いやあ、上司やご主人様に隠れてキャリアアップ活動してたなんて、この時代なんらかのペナルティ与えられても文句は言えないってのに、そんなグエンに対してなんていい子なんだ、シビル。このシビルと比べるとほんっと上二人はお嬢様根性一辺倒で、誰の役にも立ってないな。定年退職した途端に女房に離婚を突きつけられるダメ男みたいだよ。

 でさっきも言ったメアリーへの違和感の続きになるけど、本来メアリーとシビルって性格逆にならないか? シビルなんてそれこそ生まれた瞬間から「男じゃなかった」って周囲からがっかりされて、そのまんまひねくれて育ちそうじゃないか。逆にメアリーは長子として大事にされて、大人になったらどっかの貴族かお金持ちの妻になることを刷り込まれて、それをそのまんま信じて育ちそうなもんだ。それがどうしてこうなっているんだろう。作り手の設計ミスじゃないか? いや、こんな海外へも輸出されるドラマに限ってそんなアラがあるとも思えない(そりゃ昨今の日本の大河ドラマだ)。この性格設定にも何か意味があるんだろう。取り敢えずこの辺はしばし静観。

 あと、みんな気になってると思うんだけど、ベイツさんって何者なんでしょ。登場の雰囲気からして異様に意味ありげだったよな。「この人、影の主人公ですから!」って主張しているかのような編集だった(笑)。ロバートのベイツに対する態度も単なる戦友としての友情以上のものを感じるし。私このドラマほとんど予備知識なしで見始めたんだけど、ツイッターのせいで取り敢えずゲイシーンがあるというどうでもいい事前情報だけは頭にあって、一回目を前半まで見た時は、「ははあ、ご主人様とベイツ様が禁断の間柄というわけね」って普通に思ってたんだよ。そしたらゲイなのは下僕のトーマスじゃないか。えええ、そりゃないよ。だっておかしいじゃん、旦那様がベイツさん引き留める時のあの行動、奥様ご覧になってらっしゃらなかったの!? あれは明らかに愛よ愛!

 はー、しかしホモかどうかはこの際さておき、ベイツさんはほんと何かと気になるお人だわね。いろいろ秘密がありそうだけど、ひとまず明らかになるまでは思う存分想像を巡らせていただくわ。




2014年05月26日(月) ちょっとどうなのよ

 いやもう話題にしようかしよまいかひっじょーに迷っていたんですけどね。

 昨日、臨海スポーツセンター存続のためのチャリティーショーがありましたね。オフ、しかも五輪シーズンのオフとあって、スケーターの皆さんもショーはもちろん、バラエティのゲストに大忙しの中、集まってくれました。その中には五輪以来氷上から遠ざかっていた大ちゃんの姿もあったわけです。

 私はこのショーには行かなかったんですけど、ツイッターやニュースで大体のことは把握できました。で。

 大ちゃんが新プロを披露したそうで。怪我の影響もあってあんまり練習もできず、そのせいで体も大分増えちゃっててスピンはよろよろ、ステップものろのろ。全体的にキレッキレとは程遠かったようですが、まあそれはいい。彼が氷の上に、スケートファンの前に戻ってきた。それ自体は大いに価値のあること。私も彼のこの頃をそれなりに案じていたので嬉しかったです。

 なんですけど。

 その新プロがディカプリオの映画版の「ロミオとジュリエット」のサントラってのはどうなんでしょ。いや、そりゃあ、ヒット作のサントラだし、過去にもいろんな人がやってますし、しかもちょっと珍しい女性ボーカル版ではありますけれど。でもね、それ、よりによって大ちゃん君が今やりますか、と突っ込まずにはいられません。

 ブームスポーツweb版の26日付の記事にはこうあります。「(kissing youは)もともと中庭健介君の曲。すごく好きでやりたいなと思っていたし、普段からずっと聴いていた。本当にしたい曲をしようかなと思って決めました。スローだし速い曲はまだまだ難しい。4月で、振付は宮本賢二さんです」

 まあそう言われりゃ、はいそうですかってこっちは言うしかない…、っていやいやいや! やっぱおかしいでしょ(笑)! 突っ込みますよ! だってこのロミジュリ、大概の人の記憶に新しいのはゆづのでしょ! そこ触れないで「もともと中庭君の」って悪いけど白々しくないか!?

 すんませんけどね、大ちゃんが披露した新プロがあのロミジュリだって聞いた途端、正直どん引きしましたよ。いや、大ちゃんの頭おかしい一部の信者以外、そういう感覚が普通じゃないかと思うんですけど! だってね、例えば、例えばですよ。五輪シーズンのオフのショーですぐりんが「新作のEXです」ってトゥーランドット披露したらスケオタどん引きするでしょ(笑)。すぐりんとすぐりんのファンがどんだけ「え、よく使う曲でしょ?」って主張したって、誰が「そっか、そうだよねえ」なんて思ってくれますか? 思ってくれないでしょ(笑)。

 いやもう…知らん(笑)!




2014年05月15日(木) アナと雪の女王(2D字幕版)

 吹替版の歌詞が元のテーマと合ってねえ、ということもあって字幕版をいつか見に行こうと思ったものの、先週の時点でTOHOシネマズでは字幕は3Dのみということを知り、ミッドランドへ行くことに。私はてっきりミッドランドもTOHOと同様水曜がレディースデーだと思っていたので、混雑を避けるべく今日見に行くことを選んだんだが、なんとミッドランドは普通に毎週木曜がレディースデーだった(ボカ〜ン)。やだ、平日のくせにすっげー混んでるよ! ああこんなことなら昨日…、あいや昨日は時間帯が変わっていて、昨日の時間帯だとどっちにしても行けなかったんだった。それならそれで月曜か火曜にしておけば。とほほ。

 お目当ての20時20分からの回は、もうすでにかなりいっぱい。ともあれ後ろの方ではあるが通路側の席を何とか確保し、あとは上映の時間までその辺をぶらぶら。

 ボックスに入ると、客はほぼ満場の女(笑)。女子大生ぐらいの子たちが友達同士で見に来ました、というパターンが大半のようだ。確かに友達同士で見るのにこれほどふさわしい映画もないだろう。

 二度目なので確認するように見る。ああ、オラフはこの時点で作っていたのか。山奥に辿り着いたアナが手始めに作ったものの一つが、全てのきっかけとなった事故が起こった時に作ったものだってのが、深いですな。とはいえ平日ということもあってオラフが歌うシーンでは寝落ち。ごめん、オラフ。

 本家イディーナ・メンゼルのアフレコも大いに楽しむ。もともと吹替を最初に見たのは、イディーナ・メンゼルがティーン演じるのは無理があるんじゃね? と感じたからでもあった。ウィキッドの頃ならまだしも、そっから十年近くたって若干酒やけしたような声になっちまったからさあ。ミュージカル女優は消耗が激しいぜ。んが、いざ見てみると全く違和感はなし。まあ考えてみれば日本と違って向こうのティーンはそんなに声キャピキャピしてないからな。いや私個人的にはアニメ声上等! ですが。そして意味の通ったれりごーは物語の流れの中で見ると、やはりよい。もちろん松たか子のエルサの素晴らしさに変わりはないがね。

 しかしこれだけ満足しておいて、敢えて一生懸命文句を言うけど、男性の影があまりにも薄いのは残念。そういう映画じゃないしと言われればそれまでだけど、ハンス王子はともかく、クリストフの一作通しての役回りがあれだけってのはなあ。なんかBL漫画における女性キャラの存在のなさを思わせるぞんざいな扱いよ。主要なキャラ以外は書き割りでいいってのは一つの手だろうけど、個人的に好きじゃないんだよ。せめてクリストフだけは続編でフォローしてあげて。

 終わった後、周囲の女の子たちが口々に「よかったねー」「もう一回見たいなあー」などと言っていた。いやあ、こういう時って幸せ。別に自分がこの映画作ったわけじゃないけど(笑)。

 というわけで「最近洋画は当たらない」なんて言ってる映画業界人は、自分たちの宣伝がなってないってことを猛省して欲しいものですね。




2014年05月08日(木) あの「ますらお」が再開してたあああああっ!!

 お久しぶりでございます。すみません、世選がおわってからこっち、すっかり腑抜けています。あ、そうそう、おかげさまでパソコン引っ越しは無事すんでおります。まあ、まだ古いファイルがいくつかそのまんまなので、早いとこ移さないといけませんが、懸念していたメールの以降も先月20日に無事片づき、今はすっかり快適ライフを送っております。はー、立ち上げるのも切るのも一発でできるっていいね(笑)。

 で。
 2016年の大河が三谷幸喜という大凶報を耳にしてから一日のちの本日。二か月ぶりに髪を切り、ちょっと遅くなった太鼓の散歩を済ませた後、すっかりお腹がすいた私は、近所のミスタードーナツでコーヒーとドーナツ三個を無我の境地で平らげた。それからコンビニに寄ってへうげ目当てにモーニングを探したのだがあいにく見つからず、別のコンビニでモーニングを見つけて立ち読みした。ああ、伏見での秀頼との謁見を経て、いよいよ家康が豊臣潰しにスイッチオン。ああ、どんどんゲヒ殿の運命が。そして清正は今日のこれでお別れなんでしょうかね。うわーん。

 まあしかし今日のハイライトはそこではございません。

 別の棚にコンビニ本が並んでいたんだが、そのうちの一冊がなんと「ますらお」。ああ昔「義経」が放送されていた頃文庫版が出たけど、今度はコンビニ本かあと思って手に取ったらば…。

「月刊ヤングキングアワーズにて『ますらお 大姫哀想歌』好評連載中!」

 ぎゃあああああああっ!! そんな、嘘みたい! 夢みたい! 「義経」の頃ですら再開しなかったのに! 文庫版でだってもう今となっては再開へのこだわりもそれほど…という感じだったのに。ああああ、なんでもいいっ! とにかくやっているんだ! はあ、それにしてもそれこそ文庫版のあとがきで「自分も一漫画ファンとして以前とは全く変わってしまった絵柄で再開された時のがっかりする気持ちはすごくあるので」てなこと書いていましたけど、どうよこのコンビニ本に載ってる新作の予告カットは。まがうことなきあの頃の九郎ちゃんですよ! 
「俺が人であったことなど、貴様らのせいで忘れたわ!」
 って言う、あの九郎ちゃんですわ!

 なんかもうそっから先はわけもわからず、本屋さんに向かって自転車を全力疾走させておった。もっとも、そこまでしてゲットしたのがアワーズじゃなくてアワーズGHだったのがいかにも私クオリティですが。あ、アワーズはその後別の本屋さんで無事ゲットした。

 で。読んだら「大姫哀想歌」は今月号が最終回だったという(ボカ〜ン)。はあしかし大姫から始めたんだ。しかもうわすごい、成長して発狂した大姫が過去を回想するという、えぐさ(笑)。打ち切りになった「ますらお」ではちょうど義仲がを倒したところで打ち切りになったもんだから、義高がどうなったかは分からずじまいだったけど。この漫画のことだから史実通り殺すだろうなと思っていたらやっぱり義高は殺されていた…。大姫発狂も史実通り。うん、それでこそ「ますらお」だ。

 これ以前の話を読めなかったのは残念だったけど、昔と全く変わらない「ますらお」が読めてああ幸せと思いつつ、最後の数ページを読んでいくと、おおおっ、屋島の合戦以降の話をアワーズで近日連載開始!! 待つよ! こうなったらどこまでも待つよ!




2014年05月03日(土) ワレサ 連帯の男

名演小劇場3F 14:10〜16:20 124分

 ポーランド民主化の引き金となった労働運動「連帯」の指導者にして、民主化ポーランドの初代大統領であるレフ・ワレサが、一港湾労働者から大統領になるまでの物語。

 「地下水道」、「灰とダイヤモンド」、「大理石の男」、「鉄の男」。アンジェイ・ワイダの映画は、それ自体がポーランドの闘争史だった。ただし、いずれもそれは抵抗しては徹底的に潰され、主人公も含めた主な登場人物たちは非業の死を遂げるという悲劇でもあった。その幾度となく繰り返された悲惨な闘争史が、この「ワレサ 連帯の男」で遂に、やっと、ハッピーエンドを迎えたのである。ワイダのファンとしては非常に感慨深い瞬間だった。

 まあ逆に言えばそういう昔から見てきたファン以外の人が見ると、この映画はそんなに面白くないかもしれない(苦笑)。やー、だってワレサさんどう見てもいろいろ迂闊ですよ。そのわりにはあれこれうまくいきすぎ。これじゃ今までのワイダ作品の主役たちが気の毒なぐらいよ(笑)。少なくとも今までのアンジェイ・ワイダの作品だったらワレサみたいな人は前半で死んでる(ボカ〜ン)。

 ポーランドの民主化までの経緯はBS世界のドキュメンタリーでもいくつか見てきたので、物語として見るのもまた新鮮だった。あとやはりローマ法王ヨハネ・パウロ二世の訪問はやはり大きな影響を与えたんだなあ。

 この間の「他人の手紙」を見た後と同様、なぜかパフェを食べたくなった(笑)。この間のカトレアとは別の栄地下街の喫茶店でチョコパフェ。ああしかし、だがしかし! がっかりなことに中身が変わっちまってる! 前は底にフレークが入ってたのに、角切りのスポンジ生地になっちまってる。私が一番憎んでいるパターンではないか。ついでに一緒に頼んだコーヒーもまずい。あああ。

 失望と共に店を後にし、金券を買うために大須へ。さっきの喫茶店がトラウマだったので、記憶を上書きするためにおしゃれな店構えでおなじみのリッケッツァ・トレでブレンドコーヒー。嗚呼普通においしい。ひとまずこれでよしとしましょ。




2014年05月02日(金) アナと雪の女王(2D吹替版)

 20時50分、TOHOシネマズにて。おお、まだ一番でかいボックスでやってるじゃないか。

 今日も今日とて人生餃子のラーメン…。ええ、この中華料理店にどはまり中です。特にラーメン、レバニラ炒め、唐揚げがお気に入りです。週一ぐらいで通っている。おかげさんでその効果は確実に己の体に出ています。嗚呼。取り敢えず今日はラーメンです。まあ今日はこれからケッタこいでTOHOシネマズへ行くわけだから、食べた分は消費できると信じている。

 整理券をもらってからお隣のベイシティ内にあるヴィレッジバンガードへ。先月発売された「へうげもの」の18巻、まだ買ってなかったんだよ。売り場のレイアウトが変わっていて、漫画の場所を見つけるのに苦労したけど、なんとかゲット。シネマズのフロアで読めるとこまで読む。ああ、またゲヒ殿包囲網が確実になってきている…。

 何の映画を見に行った時かは忘れたが、予告編を見たのは多分同じTOHOシネマズだったと思う。予告編の映像は煽りらしい煽りも説明らしい説明もほとんどなく、エルサが“Let it go”を歌い上げるシーンを流しているだけだった。れりごーは今やすっかりお馴染みになってテレビでもこのシーンばっかり出てくるが、この映像のみをもって「はい予告」とは強気なんだか手抜きなんだか。一つ確かなことは、元からお子様はターゲットじゃなかったということだ。

 ただその予告を見た時からなんとなく面白そうだなあと思った。何よりヒロインのエルサがドレスに金髪というコッテコテのディズニープリンセスなのがいいじゃないか。雪と氷に覆われた北国のビジュアルも好みだし。そんな風にしてYou Tubeにアップされた公式動画をリピしまくっていた。のだが、世選が終わってからこっちすっかり腑抜けていたので映画館に行かないまま、3月の上映開始から時はずるずる。でもこういう映画はやっぱり大きなスクリーンで見ないとなあ、というわけで一念発起して(大袈裟)TOHOシネマズへ自転車を走らせたというわけ。吹替派なので当然吹替。もちろん2D。…それにしてもディズニーでもピクサーでも本編の前にしょうもない短編が入るのはうっとうしいねえ。私ああいうのいらない派。

 テレビでも散々流れているが、松たか子と神田沙也加の吹替はこうやってスクリーンで見ると改めて素晴らしい。すでにミュージカル役者としてのキャリアも充分の二人が当てているのだから、当然の出来ではあるんだが。俳優だろうと声優だろうと、とにかくちゃんとできる人を吹替に持ってこれば何事もうまくいくというよい見本だろう。さらにこの二人は声質がアニメ絵と相性がいい。こればっかりは練習してどうにかなれるものじゃないので、本当にラッキーだ。

 さて、先に述べたとおり「アナと雪の女王」は金髪碧眼、美しいドレスをまとったお姫様が大きなお城に住んでいまして、とフォーマットはコッテコテのディズニーである。が、どう見てもお子様向けではない予告編から感じられたとおり、この物語は「王子様とお姫様の物語」とは正反対の物語なのであった(共同監督の一人が女性であることも大きいだろう)。ディズニー自体は、これまでも時代に合わせて様々な変化球を投げてきたが、年頃の女性が主人公の物語の場合、メインテーマはほぼ例外なく、出会った男(王子様)とのラブストーリーだった。それが今回は(この辺ネタばれなので省略)。

 もちろんいくらこれまでのディズニー作品から逸脱していると言ってもそこはやっぱりディズニーなので基本はあくまでポジティブだ。そもそもこの手の「おとぎ話へのアンチテーゼ」を含んだ作品は、我が日本では少女漫画の中に腐るほどあるから、そこそこ映画を見るような人なら、アナ雪にさほどの目新しさは感じないだろう。ただ、一貫してお子様向け本丸であったディズニーが、ついにこのような作品を作り出し、あまつ世界中で大ヒットしているということが、大変感慨深かった。

 まあしかしどうでもいいけど、頻尿としてはあんなトイレも台所もない所でエルサはどうやって暮らしてるんだ、とそれが真っ先に気になった(笑)。あとエルサの鬱屈とそこからの解放という前半のドラマが、なんだか「田舎で隠れ腐女子やってた子が一人暮らしし始めてヒャッハー」てな風に解釈てきてね(するな)。だから後からやってきたアナがエルサを説得している様子が「お姉ちゃん、実家に置きっ放しの本の山どうにかして! あたしたち超困ってんだけど!」ていう風に聞こえてしゃあなく、笑いをこらえるのに必死だったことをここに告白しておく(ボカ〜ン)。

 きっかり二時間後、22時50分に終了。再びがっしがっしと漕いで帰宅。さわやかな感動の後のサイクリングは気持ちようございますな。ちょっと歌いながら帰ったのは言うまでもない(ボカ〜ン)。

 帰ってからネットで歌の歌詞についていろいろ検索。ううん、仕方がないことだけどやはり吹替版は尺の都合で詞がずいぶん端折られているなあ。やっぱり字幕版も行くべきか。イディーナ・メンゼルだし。

 それにしても。うん、確かに今回の松たか子は演技も歌声も素晴らしかった。吹替用に端折られた歌詞であっても、松たか子の歌はエルサの心の叫びがこもっていて、元々の内容を損ねるようなところは一切なかった。それでもだ。同じく伝統芸能一家の娘ならばあの人の方が、と思う歌手が私の中に一人いる。誰あろう海老名泰葉である。素晴らしい才能を持ちながら、家のためにその才能を封印し、人生の大半を家のために捧げてきたにもかかわらず、フリークスの烙印を押されてその家から追放された彼女の人生は、エルサそのものである。彼女がエルサを演じたなら、恐らく松たか子以上に迫真の出来だったことだろう。



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