猪面冠者日記
今さらだが当分不定期更新

2014年03月21日(金) 月の下まで

名古屋シネマテーク 10時半から 96分。

 この日記をアップしているのは11月1日である(ボカ〜ン)。時期外れもここまで行くと…。なんでもっとさっさとアップしなかったんだと言われそうだが、勘弁してくれよ、三月だったんだもの。スケートファンにとっては大変な時期だったんですよ。机バムバム! これでも見終わった時は感動してすぐ感想上げるつもりだったんだい!

 今日から三連休ってことで、何か見に行こうかなあと少し前から物色していたんだが、これがなんとなく面白そうで、しかも21日で上映終わりということで行くことにした(15日からの一週間公開だったんだね)。

 上映最終日ということで、キャストの一人である鈴木ただしさん(主人公の兄貴分をやってる人)が上映前の舞台挨拶にいらしていた。この後本編でお見かけすることになるのだが、つくづく役者って素と演技は別物だね。当たり前だけど。なんかこういうミニシアターでの舞台挨拶だとそういう違和感をさらにぐっと感じるわ。

 妻と離婚して十数年、母親と知的障害のある息子と共に細々と漁師稼業をしている勝雄は、一念発起して新式の船を買ったものの、不漁続きであてにしていたほどの利益は取れず。家庭内でも母と息子にトラブルが続き、勝雄は追い詰められていく。

 女房に逃げられた男が残された子供と共に七転八倒という、洋の東西を問わず愛される題材である。ええもちろん私も好物ですわ。「高知で爆発的ヒット&ロングラン!!」というキャッチコピーにも騙されたかな(笑)。ただ、地元でヒットしたのはご当地ものというだけではないな、ということは確か。

 好みの題材とは言え、この手のネタではイラつくことが多い。何がって、死別ならともかく妻に逃げられたようなだめ男を物語の主役とするにはある程度美化するしかないわけで、そうなると妻が悪者にされるのがほとんどだからだ。さてどうなるかと見ていくと、勝雄の描写は意外にもきちんとだめ男してて好感が持てた(笑)。十代かそこらで大人の世界(それも荒っぽい漁師の世界)に入って、そのまま年を経た男にありがちな無神経さと粗暴さが、ちらちらどころか前面に出ている。まわりの漁師仲間も大体そんな感じの人たちばかりだ。町の女たちもそんな男たちのありようが当たり前のようである。勝雄の別れた妻も登場するが、彼女はまるで異邦人だ。言葉遣いといい振る舞いといい、猟師町の匂いがない。彼女がこの町に人に馴染もうとして馴染めず去っていったであろうことが伺える(ついでに言えば町の女たちが誰一人彼女の味方をしなかったことも)。しかしそれで何が悪い、いけないということではない。少なくとも映画はそういう風には描いていない。かと言って「不器用な男の愛」みたいに美化することもない。

 誰も悪くはないのだけれど、何かが少しずつ足りず、噛み合わず、不本意な結果が訪れる。ただそこから結末には希望を見せて、それぞれに新しい明日を迎えて映画は終わる。

 というわけで当初懸念していたようなDQN無罪映画などではなく、しごくまっとう家族劇だった。終わった後鈴木さんに「すごくよかったです」とお伝えした(ツイッターでも感想ちょろっとつぶやいたらリプをいただいていた。でもお返ししそびれちまったい・・)。

 で、普段だったらこのままこの後馬車カレーに行くのだが、その途中で「カレー小屋」というお店があるのを発見。今日はいっちょう違う店のカレーを試してみっか。薄暗く狭い店内は、いかにも通好みという雰囲気。メニューはカレーが何種類かだったかな? ちょっとうろ覚え。ひとまず通常のカレーライスが570円のところをランチにつき500円ということでそれを。さてさて、という感じでいただいたのだけれど、うーん、お値段はとても良心的だけど、このぐらいのカレーなら800円出して馬車カレー食べた方がいいなあ。

 結局この後馬車カフェに行って、カフェオレと「季節のパンナコッタ」を食べてしまった(笑)。

 今日は4時から美容院だったので、カフェを出た後そのまま帰宅。美容院に行くまでに、近所のリフォーム屋に頼んであった丈を詰めたコートを引き取りに出かけた。膝下まであった丈を膝上ぐらいまでにしてもらったのだが、予想以上に着やすく、合わせやすくなっていて大満足。今はまだ寒いけど、ダウンがいらないくらい暖かくなったらこれにチェンジしよう。




2014年03月15日(土) ハンナ・アーレント

 シネマe_raにて12時20分からの回。もともと名演でやってたんだけど、そっちで見られなかったので、こちらで。いやー、見終わった後名演で見られなかったことをつくづく悔やんだわ。すごくよかった。

 1960年、モサドのナチ狩りによってアルゼンチンで拘束されたアイヒマン。ユダヤ系ドイツ人であるハンナ・アーレントは彼の裁判を傍聴し、それに基づいてニューヨーカー誌にレポートを連載するのだが、アイヒマンを「悪の凡庸」と定義した彼女の論は、ナチを極悪非道の人非人とする彼女の同胞にとっては受け入れ難いものだった。

 というあらすじだけを知っていると、一体それでどうやって114分のドラマにするのか見当もつかなかった。しかしほとんど会話だけで進行するにも拘らず、非常に立体的な人間ドラマになっていて、最後まで全く飽きなかった。もちろん、第二次世界大戦とホロコーストがそれだけ刺激的な題材だということなのだが。

映画の舞台はあくまで60年代で、過去回想もあるものの、それはアーレントと彼の師、ハイデガーとのわずかな邂逅シーンのみで、戦禍や迫害の様子は全く登場しない。過去の悲劇にしても、会話の中ですら直接的に出ることはあまりなく、あくまで端々にひっそりと忍んでいるばかりである。だがそれだけでも充分に彼らが過去に受けた苦痛というものの大きさが否応なく伝わってくるのであった。

 亡命先であるアメリカでもイスラエルでも同胞たちから糾弾されるアーレントがひたすら気の毒だったが、「私が一つの民族を愛したことはない」と言い切る彼女の言葉に、悲劇の根源をあくまで理知によって解明しようとする学者の矜持を見て、心からかっこいいと思った(ちなみに彼女の両親は社会主義者である)。

 それにしても繰り返しになるがこんな地味な題材をこれだけ重厚なドラマとして見せられるトロッタの手腕よ。「ローザ・ルクセンブルク」ってあんまり見る気しなかったんだけど、こうなると見たくなってきたぞ。いつかレンタルで見たいな。

 朝もそんなに食べなかったんだが、食欲は今になってもあまりなし。そのくせ別腹というか、遠鉄百貨店でお茶したいなあなんて思っている。それにしても、今日の浜松はよさこいみたいな格好した集団がやたらいるんですけど。まあ、なんかやってるらしい。

 遠鉄百貨店はなかなかよいカフェがいろいろ入っておりましての。私としては星乃珈琲店とブラッスリー・ザ・ミニムとどっちにしようか迷ったんだが、星乃は栄にもあるし、いかにもケーキらしいケーキが食べたかったので、ブラッスリーへ入った。シュークリームとフルーツタルトとコーヒーという、どこが食欲ないんじゃ、な食い合わせ。ただケーキが来た途端団体さんが並び始めちゃって、あんまりゆっくり食べられなかったのが残念。そのまま駅へ向かうと、ちょうど電車が出ようとしているところで、しかもこれを逃すと20分とというタイミング。大慌てて駆け込み乗車。

 天気が良かったこともあり、帰りの景色は上々。眩しすぎて弁天島が見えなかったぐらい。

 改札を出る前にチャージ。JRでも改札前でマナカをチャージできるようになったんだね。前はなかった気がする。金山駅前の成城石井でもっちり白パン、パンケーキのミックス、ハインツのレトルトのパスタ、ハインツのビシソワースのレトルトを買って帰宅。



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