そう言えば今日は復活祭だわね。しかし暑くなったと思ったらまたえらく寒くなったり、まだまだ安定しないなあ。
午前中お出かけした後、伏見へ直行。今日はホアの「ザ・マスター」を見るんだよ。ちなみにミリオン座のミリオン３。お目当ては１２時１０分の回。１１時半ちょっと前に行ったら０１６番だった。まあまあかな。上映まであんまり時間もないのでお昼はすぐ近くのドトールでレタスサンドとベリーヨーグルト。ベリーヨーグルトは季節限定なのかな？ もったいないぐらいおいしい。
さて映画についてなんだが。うーん、つくづく私とＰＴＡは相性が悪いなあ。「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」が面白いと思った時は、これで私とＰＴＡとの間にあった深い堀が埋まったのかと思ったけど、そうじゃなかったみたい。以下は「ザ・マスター」の感想でもあり、過去のＰＴＡ作品全般に対する感想でもあるのだが･･･。心が歪な人間が出てくる映画が嫌いなわけじゃないんだ。むしろ大好きなんだが（言わなくても分かるって）、ＰＴＡの場合、そこに至るまでの理由や背景を一才描写しない、匂わせることすらしないというところが嫌なんだよね。仮に原因の描写があったとしても、単なる方便として出しただけというように見えることが多いし。今回もホアキン演じる心を病んだ帰還兵の背景に、戦争後遺症とか恋人との別れとかを持ち出してはいるが、作品のテーマにも主人公のパーソナリティにもきちんとリンクしてないし。あるいは意図的にそうしているのか？ 「その人が病んでいるのは生まれつき、もしくはそれまでの行いが悪かったが故の自業自得」というのがＰＴＡの人間観なんだろうか。アホはどこまでもアホと。振り返って、この手のアホに対する容赦のなさではケン・ローチも相当な物だ。だが、伝わってくるものはあまりにも違う。「ザ・マスター」の主人公はウォーク・ザ・ラインとも被るけど、比べてみるとやはりＰＴＡはその人間の一面しか描いていない。フィルシー演じるサイトロの教祖がモデルと言われるマスターにしても、思わせぶりな描写が次から次へと続くだけで、中身を感じられるものが一切ないし。いやマスターには中身なんてないんだ、ということなのかもしれないけど、それを言いたいにしても何もかもが半端すぎる。
こういう作風がいい、好き、という人がいるのも分かるのだが、ひとまず私はだめだ。あー、本当に久々のシリアスなホアキンだったのに、がっかり。
がっかりしつつも、その後のペギーでなんとか口直し。珍しくスコーンがメニューにあったので、頼んだ。最初はペギーブレンドのカフェオレとスコーンだったけど、結局その後グァテマラのストレートも一杯頼んでしまった。飲みすぎだけど満足。
ちなみにこの日は初めて行く近所の美容院にも行った。ええ、今度からここにしようかなって。大きなお店じゃなくて、ほとんど主人が一人で切っている店なんで、途中で結構ブランクがあって待たされるんだけど、とても気に入った。なんつっても近いし。これからはいろいろお出かけした後の締めとして美容院という感じでいいかもね。
いい感じに各地で桜がほぼ満開の状態。日当たりの悪い場所の桜はまだ咲きかけだけど、今見にいって充分だろう。それに明日は天気が悪そうだし。というわけで去年に引き続き犬山へ。
犬山は毎回、犬山遊園から行くか犬山から行くかで悩む。遊園駅を出るとすぐ木曽川で川沿いの桜が楽しめ、帰りは城下町をゆっくり歩くという感じ。ただ気分として遊園駅から帰る方が好きだ。川沿いの桜を帰り道に堪能する方が、有終の美という感じがして。犬山から帰るのもいいけれど、城下町を過ぎるとそこから犬山駅までは普通のごちゃごちゃした商店街なので、どうも情緒に欠けるのである。かと言って遊園から帰って川沿いの桜を堪能するのはよしとしても、こっちの方は店がなんにもないので（あるけどおいしくない。一軒おいしそうなイタリアンレストランがあるが、毎度並んでいる）おいしいコーヒーや軽食で締めるということができない。名鉄犬山ホテルは川沿いに入ってあまりにもすぐだしねえ。
でもまあいいや。犬山だってそうそう行かれる機会があるもんじゃなし、ここはやはり城下町に数多あるカフェの、新規開拓にいそしむとしようか。というわけで今日は遊園側から。
１２時過ぎに金山から名鉄に。ほんとにいいお天気だな。窓の外からもあちこちの桜が見えて素敵だ。るんるん。１時少し前に犬山遊園に到着。川沿いの桜、見事という他なし。写真をぱちぱちして、ツイッターに上げたり。道の端にかかる枝の先まで満開だ。またこの枝がちょうど人の手に取れる高さにあるのがいいんだよね。川沿いの道から見える名鉄ホテルの駐車場の桜も見事で、思わず寄り道して見上げる（叙庵は今回パス）。それにしてもいい天気だこと。川の中州で亀が甲羅干しをしている。
花のトンネルを満喫した後、お堀をぐるっと回って神社へ。神社の中腹からがまた見晴らしいいんだよな。花と若葉のコントラストがモザイクのように綺麗だ。お城は天守閣周辺の敷地内から入場料を取られる。いつも入るのに行列しているから今日はやめておこうと思ったんだが、あんまり並んでいなかったので、料金を払って入った。敷地内へ入るとやはり結構混んでいる。天守閣は去年登ったので行かずに、敷地の写真をパチパチ。小腹が空いたので売店でソフトクリームを買おうとしたのだが、小銭も千円札もない。売店のおばちゃんに万札をこわしてもらったのだが、自販機をよく見ると私が欲しかったマーブルチョコ味はすでに売り切れて、他の味も同じくすでになく、バニラしか残っていなかった。結局ソフト買わなかったのでおばちゃんごめん。
城下町をぶらぶら。入ってすぐの駐車場の桜が、今日見た桜の中で一番の咲きっぷり。てっぺんから下までひたすら咲、咲。思わず駐車場に入ってしばし見上げる。その後どのカフェに入ろうかなあ、と適当にぶらついていたところ、「茶亭椿」という名前のカフェにふと目が止まった。外から覗いても中の様子は分からなかったのだが、外に置いてあるメニューの看板を見る限りおいしそうだったので、戸を開けて中へ。入るといきなり靴を脱がされる。主人と思わしき初老の女性はいかにも上品そうなお人。文化センターとかにいそうな感じだ。店の内装だが、ぱっと見た感じ小金持ちが建てた通常よりやや広めの民家を、そのまんま喫茶店にしたという感じ。上がり端に二人がけの小さなテーブルが二つあるが、すでに先客あり。その奥、もともとは茶の間と思わしき場所に四角い大きなちゃぶ台が二つ並んで置いてあって、座布団が敷いてある。ちゃぶ台にはすでにひと家族座っていたが、他に空いている席もないので一人おいた座布団に陣取り。茶の間の前に廊下があって、その廊下の大きな窓の向こうに小さな庭がある。ご主人曰く「どうぞ窓をお開けになってお庭に入られてご覧下さい。それとあちらの方がギャラリーになっておりますので、よろしければそちらもご覧下さい」。ああ、確かに庭の中に歩くスペースがあるな。でもこの後あんまり余裕がないから多分行かないだろうなあ。
メニューを見て、コーヒーフロートと胡麻トーストを注文。ええ、いよいよ腹が減ってきて、ケーキという気分になれなかったの。スマホいじりながらしばし待つ。て、なんかほんとそのまんま小金持ちの茶の間だよ、ここ。日本画の掛け軸といい、木彫りの象が二つ三つ置いてあるところといい（笑）。やがて先客の家族連れがおいしそうなケーキを食べ始めたのだが、まあおいしそうなこと。何せこっちは腹減っているし。よし今度はケーキ頼むぞ。それからちょっとすると私のもとへトーストが。これがすっごく分厚くってびっくり。でも確かにメニューを見ると「胡麻入り食パンを４センチの厚さに切って」とあるわな。うひゃあ。家族連れの中の一人が思わず「わあ、おいしそう」などと言ったり。や、本当においしそうだよ。というわけでばくっ。んま〜っ。はっ、ところでコーヒーフロートはまだかなあ。まあいいけど。しかしでかい。食べ切れるのかちょっと不安だ。
と、多少苦しくはあったが結局なんとなく平らげてしまった。コーヒーフロートはトーストを食べている最中にちゃんと来て、これまたおいしくいただいた。また来たいなあ。今度はケーキね。
その後も城下町のお店をちらちら見つつ、続く商店街を歩いている折に帰りの名鉄電車の時刻を書いたメモを見ると、この後急げばきりのいい電車に乗れそうと分かり、見るべきものはすでに見つ、と商店街を小走りに。電車には無事間に合って思っていたよりずいぶん早く帰れた。
ところで４月３日は公休である。桜はまだ充分見られるだろうから、また犬山に行こう。今度は犬山駅から。城下町にあった城下町カレーをまだ食べたことがないし。
夜も夜で新栄にお出かけ。犬山で食べたトーストがきいて、８時ぐらいまで何も食べなかったのだが、まさにその頃に空腹に。近辺のお店をよく知らないので適当にぶらぶらしていたら、「中華そば桜」なるお店が。もうなんでもいいやと思って食べたらこれがおいしかったのなんの。魚貝系のスープのお店は店内の悪臭がきついので嫌いなんだけど、ここはそんなに臭くないし、何よりラーメン自体がおいしい。６５０円というのも良心的だし。次から贔屓にしよう。
| 2013年03月23日(土) |
ジャンゴ 繋がれざる者 |
３月１日から始まったジャンゴ、気がつけばミッドランドは一日二回の上映になってしまった。ううん、終了時間があんまり遅くなるのは嫌なんだけどな。その上土曜はいつも４時から犬の躾教室があるから、最近あんまりアクティブになれないんだよね。ひとまずいろいろ迷った挙句、２０時２０分の回へ行くことにした。終わるのが２３時１０分かー。
太鼓のしつけ教室が終わった後、外出。ミッドランドで整理券貰ったらあとは何食べようかなー、とわくわく。基本的に大須と栄が好きで、名駅はあんまし行かないからねえ。整理券は６時ちょっと前にゲットし、夕食は結局名鉄の歌行燈の天丼セットで済ませた。うまうま。あとは名鉄その他をうろうろしつつ、ミッドランドへ。ふう、やっと見れるわ。しかし全部で１６５分って何考えてんだよ！ 座席はもちろん通路側、それも出入口により近い通路側をゲットしたけどさ。
当初はタラの野郎、こんな無駄に長ったらしい映画作りやがって、そりゃ面白いんだろうけどよう、と文句タラタラだったのだが、一体どんな奇跡が起こったのか、結局一度も席を立たなかった。見終わった後も全然疲労感がなく、すかっとした気分が残るばかり。それにしても一応同じように黒人差別がテーマなのに、スピのリンカーンとタラのジャンゴの大違いっぷりってなんだろう（笑）。いやリンカーンは４月１９日から公開なんで当然こちとら未見なんだけど、予告編見る限りこの二本の映画が同じ時代を扱っているとは思えない（笑）。タラもすっかりええ年だというのに、それだけの歳月に洗われようとも落ちぬ秘宝臭はすがすがしいね〜。劇中に出てくる黒人差別はそりゃもうおぞましいものなんだけど、悪い奴らが揃いも揃って「北斗の拳」の悪い奴みたいな過剰さがあって、どこか笑ってしまう。まあ確かに昔の白人ってのはこのぐらい容赦なかったんだろうけど、そういうシリアスな史実にも、タラのいつもの悪ノリがプラスされているせいでものすごくベタ（笑）。
俳優陣ではジャンゴの相棒、キング・シュルツ役のクリストフ・ヴァルツが相変わらずよかったのは言うまでもないんだけど（この人もハンス・ランダ一回で終わらなくてよかったよ。あんな凶悪な役が最初で最後のタラ映画というのはちと気の毒だったので）、ディカプリオの執事を演じたサミュＬが素晴らしかった。ディカプリオ坊ちゃまが幼少のみぎりからお世話をし、今では執事として農場の一才を任されている。サミュＬ自身は相変わらず奴隷なんだけど、少なくとも屋敷の中において彼の立場は完全に白人で、自分以外の黒人のことを「あの二ガー」と呼んで憚らない。要するに「ルーツ」なんかでもよく出てきた、黒人をいじめる黒人である。もちろん自分がどれだけ滑稽な存在かなんて自覚はない。狭い世界でただそのまま年を取った男なのだ。サミュＬの演技はほとんど漫画のように露悪的で、これでもかという下種な内面が、頭のてっぺんからつま先まで滲み出ている。並みの役者がやったら本当にただの漫画になっちゃうところなんだが、サミュＬが表現している醜悪さには、この老人がただ醜悪な人間というだけではなく、世間の一番汚い泥を食って生きてきたということを感じさせる凄みがあり、それはもう圧倒的にリアルな存在感を与えていた。いやー、すごかったよ。勝新が座頭市を演じる上で、単に盲目のスーパーヒーローってだけじゃなくて、社会の底辺を生き抜いてきた人間の恐さまで表現してみせたとこを思い出させた。キャラクターといい、演技といい、私はこれはサミュＬの最高傑作なんじゃないかと思っているよ。
終わった後は夜も遅いのでそのまんま帰宅。うー、やっぱ映画鑑賞はもうちょっと早い時間の方がいいわ。その後の寄り道が楽しいんだもんね。
| 2013年03月20日(水) |
ううむ困った･･･夏冬の予定 |
先週木曜のこと、上司からいきなりのお知らせ。「来週月曜から新しい人くるから、○○の引継ぎよろしく」。って、ええええ･･･。
我が職場は今年十月から大幅に規模が変動する予定であります。ま、あくまで予定、ですが、上司としては「もしそうなった時に今のままだと人手が足りないから、早いなら早い方がいい」と新しい人を入れたわけですね。まあそれは分かるんだが、実質二日前に言うかね。
しかしとにもかくにも新しく入った人に私の仕事の一部を引き渡す作業をしているわけですが、引き継ぎというのはなんとも手間のかかるものでございます。ただでさえ年度末なのに。はあもう、おかげさまで今後の予定がぐちゃぐちゃであります。夏コミはすでに参加の申し込みをしたのですが、今年はとにかく前半のうちに新刊を出す気でいたのですね。職場環境が変わるかもしれないという情報だけは去年のうちから出ていたので、そうなるととてもじゃないけど同人にまで手が回らんだろうということで、夏に焦点を絞っていたのです。四月から原稿を書き始めつもりで。だけど正直今の状態だと四月から始めるのは厳しいっす。次回は無限分割の続きなので相当詰めて書かないといけないんだけどなあ。
夏に落ちて冬に受かったとしても、本を出せるかどうか微妙です。八月、九月なんて体力的に死んでるし、十月になったらなったで職場環境激変、おまけにフィギュアスケートは五輪シーズンに突入では原稿なんてとてもとても。ああ、我ながらどうなるか分かりません。
カンヌでパルムドール、さらにアカデミー外国語映画賞にもノミネートと、鳴り物入りでありますが、まあハネケはハネケ、今さらそうしたお飾りがあろうとなかろうと、揺るぎない信頼があります。「餃子は不味い餃子も旨い（ｂｙ�盒饗臺紂法廚討粉兇犬任靴腓Δ�（ボカ〜ン）。始まったのがついこの間の９日なのですが、こういうヒューマンドラマが一番広いミリオン１でやっているというのは珍しいこと（あ、プレイブックもミリオン１だった）。というわけで本日１４時３５分の回で行ってきた。
１１過ぎに整理券を貰う。００３番。うおー、さすがこんだけ早く行くとずいぶん前の方が取れるね。さてお昼をどこかで食べようか。もちろん香蘭園に行きたかったんだけど、それよりなんとなくこの近所でどこか新規開拓できないかという欲求がむくむくと沸いてきたので、広小路通を栄方面へてくてく。きょろきょろしながら歩くうちに、ラーメンののぼりが目に入った。途中ちょっと曲がった所にそののぼりが立っている。そののぼりがあるお店は、一見すると閉まっているかのようなのだが、店の案内を見る限り、やっているようだ。入ると、中国か台湾か分からないがとにかく大陸訛りの４０そこそこぐらいのウェイターさんが「いらっしゃいませ」と。メニューも店構えも香蘭園やかご屋のような「その辺のラーメン屋」とは明らかに違う、本格中華なのだが、そうなると店の前にあったラーメンののぼりは不似合いだなあ。で、さらにメニューをめくると、博多ラーメンなどとある。節操ないなあ。
ま、とりあえずランチセットの中にあった蟹玉にそそられたので、注文。それにしても店の中暗いなあ。そろそろ１２時だってのに客は誰もいないし、大丈夫なのか。蟹玉はそんなに待つこともなく来た。うわおいしい！ かぷかぷ食う。が、これが意外に曲者で、玉子焼きの中の油が半端じゃない。途中から玉子焼きは小皿に移して、油を絞って食べた。ううん、これさえなけりゃ本当においしいのに。
最後の方は大変苦しい思いをしながらも、結局なんとか完食。食べ終わるころにはお客もそこそこ入ってきていて、なんだかほっとしたり。この時点でまだ上映まで時間があったので、名駅のアニメイトへ。探していたオペラ３７号をやっと見つける。
そしてそのまま伏見へとんぼ返り。上映までまだ少し時間があったので、ちょっとコーヒーを飲みたくなった。この間プレイブックを見た時に店のカフェオレにがっかりしたので、今日は映画館と目と鼻の先にある上島珈琲店へ。ここ、ココアとかは飲んだことあるんだけど、コーヒー系は飲んだことなかったんだよな。昼過ぎということもあってお店は結構混んでいたけど、一人なのでなんとか座れた。アイスカフェオレを頼んだんだが、ここってアイスだと銅製のコップに入れてくれるんだ（や、多分なんちゃってブロンズでしょうが）。お味はチェーン系にしてはなかなか。あっちのカフェオレが３１０円でポイントたまる式、こっちのカフェオレが３５０円。うーん、そう極端に高いわけじゃなし、この際これからは飲み物はここで調達してもいいなあ。ああでも、映画館のお店で買った飲み物じゃないと館内持込できないんだっけ。
ゆっくり過した後、映画館へ。いや、トイレはちゃんと行くさ（ボカ〜ン）。
老いた夫が病気の妻を介護する話をハネケが描くなんて、そりゃあさぞかし嫌な話になるだろうとわくわくしていたんだけど、そんな黒い期待にばっちり応える、陰気な変態ハネケらしい傑作だった。
今回あらためて実感したのは、やはりすぐれた作家はそもそも眼力のベースが違うのだということ。ハネケが隠微な芸風の持ち主であるとは言え、人間の残忍な部分しか見ないのであれば、あれほどの監督にはならなかっただろう。今回もドラマはほとんど老夫婦のアパートの中で進行するのだけれど、ちょっとした会話や暮らしぶりの描写の中に、この老夫婦が精神的な豊かさをもって歩んできたことが窺われて、それをこんなにも簡単そうに描いてみせるハネケの手腕に何度もため息が出た。
しかしそんな美しい夫婦であっても、不意の不幸からは逃れられない。その不意の不幸はなんとも容赦ない。結局彼らが築き上げた小さな美しい人生は、現実の末路の前にはなんとも儚いものだった、とでも言わんばかりに。映画は老夫婦の結末から始まる。何がどうしてこうなってしまったのか、その理由は最初からなんとなく分かるんだけど、それでも漠然とした不安や納得のいかなさが見ている間中消えなかった。
あともう一つ感じたのは、これって老夫婦版「火垂るの墓」だなあと。夫婦が自分たちのアイデンティティにこだわるあまり、周囲から孤立していくところとか、夫婦をとりまく世間の酷薄さとかがね。夫婦が妥協していればあの結末は避けられたかもしれないんだけど、かと言って世間がそんなに居心地いいかと言われれば、全くそうじゃない。そういう身も蓋もない現実をあからさまに描いてしまうという、この突き放し加減がまたなんともよかったりするんですが。
ところで当初１００分ぐらいだと思っていた上映時間、実は１２７分だったんだね。いや、あるシーンを見ながらふと時計見て「あれ、この調子じゃまだ当分終わりそうにないんだけど。まさかとんでもない所でぶった切り、てな終わり方じゃないだろうな。ハネケなだけに油断できない」と不安に思っていたら、結局ずるずる続いて終わったのは１６時半過ぎ・・。まあ変な終わり方するよりよかったけど（苦笑）。
さすがにこれからペギーに行くにはもう遅かったので、池下には行かず、金山へ。あすなるをぶらぶら流した後、成城石井でモッコナのコーヒーを買って帰宅。
| 2013年03月06日(水) |
世界にひとつのプレイブック |
平日も有効活用するよ、ということでミリオンへ。今日は家にお芋の焼いたのがあったので、それを食べた。やれやれ、こうしてお芋がおいしい感じられるのもあと何日かな。それから太鼓の散歩を済ませ、伏見へ。７時半頃整理券を貰うと００７番だった。そこそこ話題作だけど、平日ならこんなもんかね（ちなみにミリオン１で８時からの回）。映画が始まる前に館内のカフェでカフェオレを購入。座ってからそのカフェオレを一口飲んだんだけど、・・・う、おいしくない。全然コーヒーの風味がないんですけど。あれー？ 前はもうちょっとおいしかったと思ったんだけどな・・・。まあ、渇きがおさまりゃなんでもいいけどさ。
ノミネートされた映画にはずれなし、ただし大体、というセオリーどおり、これはさっぱり合わなかった。やたら自己中で感情の起伏が激しい人間がなんとなく自己肯定して終わる映画という以上の感想は持てず。主人公は高校教師なんだけど、過労と妻の浮気が原因で統合失調症になり入院。で、その彼と夫を亡くして情緒不安定になったヒロインとのラブストーリーであり、また、病んだ息子をなんとか社会復帰させてやろうと奮闘する両親とのファミリードラマでもある。
とまあそういうメインテーマだけ見るとなかなかよさそうな感じがするんだけど、いざ始まってみたらこの主人公はそもそも自分が病気だと認めたくなくて、病院でも薬を飲むふりして捨てるわ、母親も母親で「こんな所にいるのはかわいそう〜」とかって裁判起こして息子を無理矢理退院させちまうわ、で、そんな息子がまっとうに暮らせるのかってったらできるはずもなく早速夜中に延々絶叫してご近所に迷惑をかけまくり･･･。これら冒頭部分だけで「もう帰ろっかな・・」と思った（ボカ〜ン）。それからヒロインが登場するんだけど、このヒロインも夫の死で必要以上に自責の念に駆られるという部分は感情移入できるんだけど、傷心のあまり会社の同僚の男全員と寝たとか言い出してもうわけわかんないし、その後もどうでもいいことで発狂して泣き喚いてばかりで（要するに主人公と同類なのであった）、見ている者に忍耐を求められる映画だった。二人がダンスコンペに挑戦しだしてからは、なかなか面白かったが。まあ、そこしか普通に見られるところがないとも言うがね（ボカ〜ン）。うん、主人公が手紙を読んでそこに隠された真実に気づく辺りの展開はよかった（むしろ私のよかった探し）。
ああ、あと映画館の中が信じられないぐらい暑かった！ 季節の変わり目で空調が難しいのかな。今日のミリオン１はハコが大きい分後ろの方の席はかなり高い位置にある。おかげで私のいた席はとんでもなく暑く、そのうち鼻血が出るかと思った。最後の方はいよいよ我慢できなくなって、普段ならやらないけど、途中から中腹に移った。それだけでもかなり楽になったので、今度からはこのぐらいの位置に座ろうっと。
その後売店でパンフをちらっと立ち読みしたら、監督のデビッド．Ｏ．ラッセルが統合失調症を煩う息子のためにこういう映画を作ったとあった。はあ。や、まあいいことでしょうけどね。でもこれじゃラッセルって相当な親馬鹿でモンペなんじゃ？ と思ってしまったぞ。
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