猪面冠者日記
今さらだが当分不定期更新

2005年03月31日(木) BSアニメ夜話(28日〜30日)

 今期は三発とも永久保存のつもりで視聴した。うーん、やっぱマンガ夜話より見やすいなあ。それは編集されたものだからなのか、それともいしかわじゅんがいないからなのか。あ、別にいしかわじゅんが嫌いってわけじゃないんだけど、あの人、自分の守備範囲じゃない漫画の回になるとほんとに単なる邪魔者になっちゃうからなあ。あとやっぱあれだね、マンガ夜話と違ってアニメ夜話はレギュラー陣同士がほぼ同世代なせいか会話がツーカーってとこも見やすさのもとなんだろうな。作品による温度差もないしね。

■新世紀エヴァンゲリオン
 前にマンガ夜話でハガレンやった時に「今この漫画を最高だと思えるのは十代の特権」と岡田斗司夫が言っていたけど、全く同じことがこの作品にも当てはまるよな。ちなみに私はギリギリセーフではまれたが。ニュータイプに載っていた少年エース創刊号の広告の中に貞本義行の新連載として載っていた初号機のイラストに何ともそそられたのがつい昨日のことのようだ。ちなみに今でもエースはチェックしている。持っているコミックスも全部初版。LDも十巻まで持っている(拾九話と弐拾話が入った奴)。あの頃すでにイデオンもみっしり見てこの手のアニメについてある程度学習していたはずなのにあれだけはまれたのはやっぱり十代だったからなんだろうな。それとやっぱあの頃のテレビアニメがセラムンと幽遊白書ぐらいしかなかったってとこもね。暗くて真面目で鬱屈していて暴力的なものをリアルタイムで見ていたいよう、ううう(涙)、という切実な願望があったのだ。つっても私もほんとに夢中になってたのは劇場版「シト新生」までで、「まごころを、君に」の頃には完全にさめてたが。
 そんなあたしにとってこのアニメ夜話はどうだかって、そりゃもう面白かったに決まっている。あの当時、普段ろくにアニメを見ていないのがもろ分かりな評論家がやったらどこでも知った風なことを書いていてムカついてたからねえ。じゃあ評論家じゃない、オタの人たちはどうだったかと言えば、まともなものを書いていたのは小黒祐一郎と池田憲章くらいだったと思う。特に池田憲章はアニメとしての面白さについてちゃんと書いてくれていたのが嬉しかった。サイテーだったのは野火ノビタ(榎本ナリコ)で、どこの誌面でもおセンチな自分語りに終始している様には全くもって虫唾が走ったものだ(まあ当時そういうことやってたのはこの人だけじゃなかったけど)。私はエヴァが好きで好きでしょうがなかったが、エヴァを趣味以外の何かで見ている人たちのことはどうにも好きになれなかった。思えば私がオタクアミーゴスにはまっていったのはこの頃からだったなあ。因果じゃ。

■クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ! オトナ帝国の逆襲
 立川志らくのセンチヒなんかよりこっちの方が断然いい、との発言には大きく頷いてしまった。あれとこれじゃあジャンルが違うんだから比較するのは間違っているといえば間違っているのだが、ある意味では正しいのだ。なぜなら、劇場版のクレしんこそは初期東映(大蛇退治とか長猫とかど宝とか)の正当なる後継者だからだ。だって「ブリブリ王国の秘宝」なんて「わんぱく王子の大蛇退治」だし、「ヘンダーランド」は「長靴をはいた猫」と「空飛ぶゆうれい船」だぞ。
 それにしてもここで流していたVTR見ているだけで泣けてしまったよ。ああもうまったく・・・。

■新造人間キャシャーン
 あああ、かっこいいい〜〜。やっぱこの絵を見ちゃうと梅津版キャシャーンは偽物、と思わざるを得ない。それにしても「キャシャーン無用の町」って酒井あきよし脚本だったんだ。新ゼロでは大層ご活躍だったよね、この人(笑)。
 ちなみに、もともとアニメーター志望だった今川泰宏が演出に転向したのは、東映の養成所時代に同期で飯田史雄がいたからである。飯田史雄に関してはアニメージュの93年2月号のSUEZEN特集が素晴らしいので今回の放送で興味を持った人は是非古本屋で探してみよう。十代の頃に描いたという超絶巧いイラストなど、とにかくすごいもんが一杯見られる。




2005年03月27日(日) 使い切ったぜ1カ月フリーパスポート

 「Mr.インクレディブル」冬の3チケットキャンペーンでゲットした1カ月フリーパスポート。引き換えに行ったのが2月27日だったので、有効期間は2月27日から3月26日までだったわけなのだが、結局その一ヶ月間に見た映画はたったの五本。自分としては少なくとも十本は見るつもりだったのだが、このところやたら風邪ばっかりひいていたせいで結局これだけしか見られなかった。ま、概ねどれも面白かったし、その中でも[セルラー]は秀逸だったので自分としてはそこそこ満足してはいるが。ああそれにしても「ボーン・スプレマシー」は惜しかった。ワンピも見ときたかった。
 取り敢えず大雑把な感想を鑑賞日と共に以下に書いておく。まあいずれもただで見に行ったわけだが、一応どれも前々から見たいと思っていたものばかりで、自腹でも必ず見に行っていたものばかりであることは明記しておく。

■3月6日(日)サイドウェイ
 今年度の全米各地の批評家協会賞とゴールデングローブ賞をほぼ総舐めした快作。ううん、確かに傑作には違いないんだけど、同じポール・ジアマッティ主演作ならやっぱ「アメリカン・スプレンダー」の方が断然面白いなあ。まあ、キャラ立ちを楽しむ映画じゃないんだからそれと比べちゃいけないんだろうけど。
 ちなみに主人公マイルスの腐れ縁、ジャックの役はジョージ・クルーニーが熱望していたらしい。が、監督のアレクサンダー・ペインが「この役はできるだけ知られていない役者にやって欲しいから」と、ジョージ兄貴を説得して折れてもらったんだそうだ。ほほお。相変わらず作品選びのセンスがいいねえ、ジョージ兄貴。うん確かにこの、売れないB級俳優でスーダラで無類の女好きジャックは、かつてのジョージ兄貴そのものだもんな。彼が演じていたらそれはそれで味わい深いものに仕上がったかもしれない。だが今のジョージ兄貴に「リターン・オブ・ザ・キラートマト」の頃のようなB級オーラを醸していただくのはちょっと厳しいのでは(映画の題材がワインとはいえ)。

■3月11日(金)セルラー
 感想は3月18日の日記参照。あとこの時の日記には書き忘れたけど、「頼りにならないおっさんを演じたら世界一」、「一見頼りにならなさそうに見えてその実凄く頼りになるおっさんを演じたら世界一」のウィリアム・H・メイシーの演技も見もの。

■3月15日(火)シャーク・テイル(字幕版)
 やっぱピクサーに比べると話がユルいなあ、ドリームワークスは。もっともユルいユルいと言いつつもクオリティは異様に高かったりするのだが。本作は物凄く豪華なゲスト作家ばっかり集めた同人誌、と見なすのが一番当たっている。だからストーリーがどうのというのはハナから間違っている。これはマーティン・スコセッシ演じるハリセンボンがデ・ニーロ演じるサメのゴッドファーザーに卑屈にへつらったり、かつてモハメド・アリを演じたウィル・スミス(雑魚のオスカー)が周囲の魚たちから「オスカーッ、ボンバイエッ!!」と煽られるのを見て「おお、あれか!? あれやってんだな!」と楽しむ映画なのだ。
 ところでTOHOシネマズではこの「シャーク・テイル」でもってまたもや3チケット・キャンペーンを催していた。「サイドウェイ」と「セルラー」のチケットを貼って応募したけど、さすがに二回目は無理だろうな(笑)。

■3月23日(水)香港国際警察
「もっといいとこあるんじゃないかって、いろいろ足掻いてみたけれど、やっぱ俺の場所はここなんだ・・・!」
 そんなジャッキーの魂の叫びが聞こえてきそうな大傑作である。いや、勿論我らのジャッキーは基本的に超人的アクションをこなすお笑いヒーローなのだからして、上記のようなシリアスなモノローグは似合わないのであるが、それでもジャッキーには人知れずそんな魂の叫びを持っていて欲しい! というのがファン心理というもの。
 もう予告編見た時からかなり楽しみにしていたのだ。明らかにここ数年のハリウッドのジャッキー映画(てゆかほとんど見てない)とは違うオーラがびしびしと伝わってきて「見ねば!」としか思えなかった。「敵に捕まって建物の天井からジャッキーの部下たちが吊るされ、それが敵の手により次々と床へ叩き落される。それを見てなす術もなく泣き叫ぶジャッキー」というあのバイオレンスな予告編を見た時は、「ジャッキーも香港ノワール路線に行くのか!?」と変な期待をしてしまったが(ボカ〜ン)、いざ見てみたらシリアスな部分は確かにかなりシリアスながら、ベースはあくまで古き良き香港アクション映画であり、ジャッキーもまたジャッキーらしいジャッキーだった。まあ、香港ノワールなジャッキーもちょっと見てみたいが(笑)、まあやっぱジャッキーはエンターティナーじゃないとね。さすがに本人も五十越えているからそうそうやんちゃはできないんだけど、その辺はストーリー・演出、そして演技者としてのジャッキーが補ってくれているので、総じてOK。ハリウッド時代に比べ遥かに活き活きとしたジャッキーが必ず見られる。まだまだ頑張って欲しい。
 なおこの日は「アビエイター」の初日でもあったので、そっちに行こうかなとも思ったのだが、近年のスコセッシはほとんどハズレばっかなので、ほとんど迷わずジャッキーにした。

■3月26日(土)ローレライ
 ああ新作の邦画見るのなんていつ以来だろう。最初のバトロワくらいかなあ。あ、いや「誰も知らない」があったか。なんだ結構最近じゃん。邦画を見に行けば当然、予告編も邦画ばっかりなわけだが(配給会社によるけど)、どれもこれも洋画を見る前の予告編に比べると頭一つ分どころか人一人分くらいつまんなそーでびっくりだよ。
 そんなことより作品だ作品。まあ、ネットでの感想の出方を見る限り、かなり賛否両論だったのでできるだけ白紙の状態(原作未読・他人の詳しい感想には目を通さない)で臨んだ。
 愛すべき点は多々ある。前半なんてもろ松本零士だし(機関長みたいな機関長が出てくる)。潜水艦ローレライの、蒸気と錆の匂いが鼻につきそうな内装も素晴らしい。なだけに主役陣が内面的にも役者の演技的にもしょぼいというか、「そんなやり取りを太平洋戦争のドラマでやるなよ」と思えてしょうがないとこばかりでどうにも気に食わない。そもそも太平洋戦争の話でしかも潜水艦というド戦場に、かなりシリアスな展開とはいえ、男の子と女の子の話なんか私には邪魔としか思えん。逆に言えば、太平洋戦争が舞台じゃなかったら別に腹も立たなかったかも(むしろ好みだったかな)。
 あと役所広司の艦長も、妙にキャラが細くて自分的にアウト。なんというか、こういう役を張るのに必要な基礎オヤジ力というものがこの人には欠けていると思う。戦争末期ということで軍人(それも潜水艦の艦長)としての自分の在り方にとてつもない葛藤があるのは分かるのだが、その葛藤の仕方がどうにも無気力というか、ずばり女々しいのだ。「全員、戦闘配置につけ!」のひとことにしてもなんつーか文字にするとMS明朝体という感じだし。もうここはCGとかでもいいから鶴田浩二にお出ましいただき、活版の明朝体でもってトバしていただきたい・・・、てな妄想を最後の最後まで捨て切れなかった(声だけ津賀山正種でも大いに可)。

※番外編 タダでも行く気がしなかった映画
■「アレキサンダー」
 近年のオリバー・ストーンに当たりなし。「ナチュラル・ボーン・キラーズ」は面白かったけど、あれは脚本がタラちゃんだからなあ。

■「オペラ座の怪人」
 別の映画で見たことがあったんだが、ヒロインの超偽善っぷりにすげえムカついたのを覚えている(なんつーか新ゼロのマユミみたいな女だったような)。差別と化け物の話は好きだが、そういう物語の主人公で対比として登場するヒロインはやっぱこっちが感情移入できるような人じゃないとねえ。もうあんな不愉快な思いはカンベン、というわけでハナから鑑賞リストから除外。




2005年03月23日(水) 「相棒」3rdシーズン最終回

 「相棒」の最終回といえば大体二時間スペシャル枠で、敵も政府関係の大物というパターンだったのだが、今回に限ってはそれもなく、放映時間こそ一時間半だったが、話はいつもと同じような話でそれこそもう一話くらいどっかでやりそうな感じでの終了だった。私としてはこれまでの「相棒」の最終回はどれも不満だったので、こういう風に終わってくれてむしろ嬉しい。巨大なラスボスなんて、「相棒」に限っては不要なのである。平凡で善良で実直だからこそ追い詰められ、罪を犯し、自分のためまた愛する者のためにそれを隠そうとしてまた新たな罪を犯してしまうという、善人悲劇こそが「相棒」最大の魅力なのだから、強くて悪い奴なんてこの作品世界では大した面白味などないのだ。

 それにしても薫ちゃん(寺脇康文)と美和子(鈴木砂羽)は本当にこのまんま別れちゃうのかねえ。なんかあんまりにも納得のいかない展開だな。右京さん(水谷豊)しかいない薫ちゃんってのもなんかねえ・・・。




2005年03月19日(土) 誰がドラえもんを殺したのか

 はあああ・・・。見なきゃよかったよ、昨日のドラえもん・・・。もうこれだけは言える、昨日のドラを見なかった人はラッキー、見ちゃった人はアンラッキー。

 昨日の一時間スペシャルの内訳は再放送「ハリーのしっぽ」(確か15分もの)と、新作として一本「ドラえもんに休日を」(30分もの)、そしてそれらの合い間に万博などこれから開催されるドラ関連イベントの紹介アニメが流れるというものだった。

 最初にやった「ハリーのしっぽ」はよかった。1910年のハレー彗星接近の際、「ハリー(当時の表記)が通り過ぎる時、地球の空気がなくなる」という風聞に怯えるのび太の曽祖父、のび吉のためにのび太が自分の浮き輪を当面の空気代わりに届けてやる、という原作でもおなじみのお話である。この手の人情路線が得意な原恵一の演出もあいまって、全編気持ちよく見られる仕上がりになっている。問題はその後の「ドラえもんに休日を」だった。

 昨日のアニメ版のひどさを紹介する前にまずは原作のストーリーがどうだったか説明する。アニメ版との比較のためややくどめに説明するので、知っている人はこの後しばらくはとばして読んでもらって構わない。

 該当エピソードはてんコミ35巻の「ドラえもんに休日を!!」。ある土曜日、のび太が学校から帰ってくると、いつもなら会社に行っているパパが家にいる。のび太が理由を尋ねると「会社が週休二日制になったんだ」とのこと。部屋に戻ったのび太はドラえもんに向かって「いいなあ、週に二日も休めるなんて」と愚痴るが、それに対しドラえもんは、君の面倒を見ている僕には一年中休みなんてないんだぞ、と説教をする(時代を感じさせるやり取りである。ちなみにこの単行本の初版は昭和61年1月25日)。そう言われてみればその通りと思ったのび太は一念発起し、明日の日曜日は丸一日ドラえもんをお休みさせてあげるからどこか遊びに行っておいでよ、と言う。最初はのび太が心配で断ろうとするドラえもんだが、やはり一日自由という誘惑には勝てず、メス猫のタマちゃんと一緒に西表島へハイキングに出かけることになった(出発の前夜、喜びの余り押入れの中で興奮しているドラがかわいい)。

 とはいえやっぱりのび太が心配なドラえもんは、出かける直前に「よびつけブザー」という道具をのび太に渡し、何かあった時にこれを押してくれればどこにいてもすぐに駆けつけるからいつでも遠慮なく押してくれ、と言い残す。しかし、やたらに心配されたことで逆にのび太は意地でも押すもんかと思い、さらに、“今日一日は何があってもドラえもんの力は借りない”という決意をいつもの仲間にもふれて回る。案の定ジャイアンとスネ夫は「のび太のくせになまいきな!」といつも通りの反応を示し、「ブザーを使わせてやろうよ」と、のび太につきまとい様々ないやがらせを実行する。二人からの嫌がらせはやがて思わぬ方向に転がり、のび太は「アドベン茶」ばりのピンチに次から次へと見舞われる。その間何度もブザーに手を伸ばしかけるのび太だったが、どうにか耐えて切り抜ける。

 もうこれ以上の災難はカンベン、とのび太はひとまず家に帰ろうとするのだが、その途中でジャイスネとは別のいじめっ子にうっかりぶつかってしまい、絡まれてしまう。今度こそもうだめだ、とのび太はブザーを押そうとするが、楽しそうにしているであろうドラえもんを思い浮かべ、どうにか踏みとどまる。やがてのび太は自らブザーを踏み壊し、「やるならやれ!!」と居直る。その様子を陰から見ていたジャイスネたちは「あいつにあんな根性があったとはな・・・」とのび太を見直し、逆にいじめっ子たちから助けてやる。

 最後はのび太の部屋。
「いやあ、楽しい一日だったよ。のび太は大丈夫だった?」
「あたりまえさ! 平和な一日だったよ」

 分かる人には分かる通り、プロットはほぼてんコミ6巻の「さようならドラえもん」と7巻の「帰ってきたドラえもん」である。だが、連載初期にはまず見られなかったジャイスネの男気溢れる描写などがあったりして、焼き直しとはいえかなり楽しく読むことができる、原作ファンの間でも人気のあるエピソードだ。

 で、昨日のアニメ版だ。いやもうこれはアニメ版と呼ぶことすらしたくない。タイトルこそ同じでも中身は真っ赤な偽物、はっきり言って「没」である。・・・ああこの単語を再び使う日が来ようとは。しかもドラえもんで。もう泣きてえ。てゆか泣いてます。

 以下、ツッコミを交えつつストーリー解説をする。当日は録画をしていなかったので、記憶に頼ってのみの描写となる。細かい違いがあるかもしれないが、その辺はご容赦願いたい。

 いつものようにジャイスネたちに絡まれ、いつものようにドラ(の道具)に助けてもらったのび太。しかし、ドラえもんに助けてもらうことをすっかり当たり前としてしまっているのび太を見るにつけ、彼の将来に不安を感じるドラえもんは、いつまでも僕に甘えていちゃだめなんだぞ、とのび太に説教をする。それに対し、
「それなら今度一日ドラえもんに頼らずに乗り切ってみせるよ。その日はドラえもんも僕のことなんかほっといてどこかへ遊びに行っておいでよ」
 と、答えるのび太。のび太君いきなりそんなの大丈夫かなあ、と思いつつものび太からの誘いを受け入れ、後日メス猫のミーちゃんと一緒にウラオモテ島へ出かけていくドラえもん(まあ、この辺までは『さようなら、ドラえもん』の冒頭に近い感じ。勿論、出発直前には先程と同じく呼びつけブザーを渡しています。ちなみに見ていて何事もなかったのはここまで・・・)。

 それからしばらくは、「今日一日はドラえもんなし」というのび太の決意をジャイスネたちがことごとく邪魔してくる、という原作通りの展開なのだが、ここでとんでもないオリジナルが登場する。なんとここでのドラえもん、のび太のことが心配になってブザーが押されたわけでもないのにちょくちょく旅先から戻ってきて、タケコプターでのび太の様子をこっそり見に来たりしてしまうのだ。ええええええーっ! それじゃあ呼びつけブザーを何が何でも押さんかったラストのドラマはどうなっちまうんだよ!? あああ、嫌な予感が。

 ジャイスネからの度々の嫌がらせにあいながらものび太はなんとかブザーを押さずに過ごしていた。が、それにも拘らず、「あれ? 今のび太君に何かあったんじゃ?」とか何とか大した根拠もなく何度も戻ってきてはつかず離れずでのび太の様子を見に来るドラえもん。そうして何度も無断で途中退場するドラえもんに、本来なら一緒にバカンスする筈だったミーちゃんは次第におかんむりになる。あああ、何を考えているんだ、この話を書いた奴は。これはドラえもんのいない過酷な現実の中にいるのび太と、のび太のいないゆったりとした一日を過ごすドラえもんという(原作にはバカンスを楽しむドラの様子は出てこないが)、普段とは逆の対比が魅力の話じゃないか! さらに言えば、これはのび太の成長がキモの話なんだぞ。たった一日だけのこととはいえ、のび太の方からドラえもんに対し、目に見える何かをしてやったという部分が最も感動的な部分なのだ。それなのにここでのドラは全然お休みを満喫できていないじゃないか。いつもと変わんねーじゃん。これで一体どうやって最後感動させるんだ? 

 外にいてもジャイスネからの嫌がらせにあうだけ、と家に戻ったのび太。玄関先でほっとしているとそこへ突然ママがお帰りになる。このママの登場シーンが無意味に大げさ。まあ、シンエイ動画が何の脈絡もなく悪乗り演出をしだすのは、創成期からのお家芸なので別にいいんだが。て言うか全体的に演出はこの際問題じゃなくって、シナリオがなあ。・・・ってなんかこういう文章二、三年前にも書いていたような気がする。ああなんだこの激しく不愉快なデジャ・ブは。

 さて、いよいよとんでもないのがこれからだ。今日これまで、猛犬に追いかけられようが、走っているトラックの荷台に落とされようが、ジャイスネたちに絡まれようが、決してブザーを押さなかったのび太が、ここでママに単純に名前を呼ばれただけなのに過剰にビビって、思わずうっかりブザーを押してしまうのだ。うっかり? そう、本当にただのうっかり。えええぇぇっー!?

 これまでちびちびと戻ってはいたが、この時はミーちゃんと普通にバカンスを楽しんでいたドラえもん。しかしブザーによって強制送還(この呼びつけブザー、機能はとりよせバッグのようなものらしい)。ところがいざ到着してみればのび太がうっかりボタンを押してしまっただけ。「せっかくデートを楽しんでいたのにそんなつまんないことで呼び出すなんて!」と、逆ギレするドラえもん。一方でミーちゃんの方は何度も途中でいなくなってしまうドラえもんに愛想をつかし、ドラえもんが慌てて戻ってきても完全シカト。ミーちゃんに去られたことでいよいよのび太に腹を立てるドラえもん。なんだかんだと言い合いをした挙句、ドラえもんは「もう君なんか知らない!」と、22世紀へ帰ってしまう。

 そりゃドラえもんとのび太が喧嘩して、お互いに「もう知るもんか!」となったりするのは原作でだってよくあった。でも二人の喧嘩はどんなに激しくてもあくまで仲良しベースの喧嘩だから、まあ、他愛もないものであった。なのにこのアニメの二人の喧嘩は何だ? 自分ではこっそり何度も様子を見にきたくせにいざ本当に呼び出しがかかったら渋々、間違いだったと分かると逆ギレというドラえもんの勝手さも、たかがママに呼ばれただけでびっくりしてボタンを押してしまうのび太のうっかりさも、同情の余地がないというか、つくづく見ていてどうでもよくなる安っぽさである。第一、これらのやり取りはこの二人のキャラクターを考えたら明らかに不自然なものじゃないか。

 セワシ君の元へ帰ったドラえもん。もう二度とのび太の所へは戻るもんかという態度でいるものの、本音は気になってしょうがない。一方のび太の方もそれは同じで、何をしていても心ここにあらずである。しかしそうやって二人がいくら沈んでいたところで、あんなしょうもない喧嘩の後では見ているこちらとてあんまり神妙に見守る気になれない。

 で、それからこの話がどうなるかというと、ドラえもんがいなくなってから何日かしたある日のこと、道を歩いていたのび太が二人の悪ガキに因縁をつけられて人気のない所へ連れ込まれ、ボコられそうなる。のび太は心の中でドラえもんに助けを求めるんだけど、「もうドラえもんはいないんだから自分の力で何とかしなきゃ」と、一人で悪ガキ共に挑んでいく。で、その様子をどっかから見ていたジャイスネが(一応原作通り)のび太の勇気に感動してのび太を助けに行くわけなんだが・・・、ジャイスネが悪ガキ二人をのしている所にこの悪ガキ二人の兄とかいうのが通りかかって、ジャイスネはそいつにやられてしまって、あっさりと再びピンチ。

 まあ、この後しずかちゃんがその現場を通りかかったりするのだが、この辺は本筋にはあんまり関係ないのでちょっと省略して、で、それから画面は現代からドラえもんがいる22世紀に変わる。相変わらず強がって帰ろうとしないドラえもんだったが、ドラミとセワシ君が気を利かせて部屋にロボットネズミを走らせて、ドラえもんが錯乱したところをタイムマシンに乗せて20世紀に帰してやると。で、その帰ってきたドラえもんがのび太たちの危機を察して彼らの元へ駆けつけ、あとはまあめでたしめでたしというわけですよ。・・・て、ちっともめでたぁないわい!! 全くなんなのだ。全編余計なオリジナリティを入れたがために、そのしわよせがことごとく各人の、それも一番感動的な見せ場を殺してしまっているじゃないか。あああ〜っ、またなんだか二、三年前に書いたような感想を書いてしまっているし(涙)! こんな大山のぶ代最後の日にこんなエピソードを見る羽目になろうとは全く悪夢にも想像しなかったよ。そりゃ009だったらさ、なんせ原作自体が結構ボロいから程度の低いクリエイターに食い散らかされても「ま、元が隙だらけだからしゃあねえや」と、ある程度納得することはできる(納得はしても絶対許さんけど)。でもドラえもんはそうじゃない。あれにはプラスもマイナスも不可能だということは誰の目にも明らかなはずだ。そりゃ、昔のアニメ版ドラだって原作を多少変えたりすることはあった。だが、こんな風にキャラの行動の意味合いまで変えてしまうようなことは絶対しなかった。ドラえもん・・・。本当は声優陣の高齢化なんてどうでもいい問題なんじゃなかろうか、中身の問題に比べれば。




2005年03月18日(金) 当分書かないって言ったけど書いちゃうよ

 本当に嘘ばっかりついててごめんなさい。そのうち碌でもない目にあうよ、あたしゃ。「今でさえ書いても書いても日が追いつかないもんなー。同人に集中するにはこっちを当分やめるしかないか〜」と思って更新ストップした当日記でありますが、それにしても、まったく書かないということがここまでストレスになるとは思いもしませんでした(読んでいる側からすればとことんどうでもええことだっちゅうねん)。そうなんですよ、もう最近、感想文執筆飢餓でイライラしっぱなしで。やっぱり私は根っからの感想文好きのようです。日記とまではいかないにしろ、テレビや映画の短い感想くらいは気が向いた時にアップしようかと思います。すみません、超勝手で。

■2月15日の火曜日は、友人と二人で名古屋シネマテークでリバイバル上映している「ゆきゆきて、神軍」を見に行ってきた。私が休みの日に合わせてわざわざ有給を取ってくれた友人にはありがとうとしかいいようがない。でも二人とも風邪で体調がいまいちだったので、あんまし長くは語り合えなかったのが残念。
 ちなみに見るのは二回目。今回はさらに予習も兼ねて原一男監督が本作の撮影話をまとめた「ドキュメント ゆきゆきて、神軍」を読んでいった。しかしこちらがどのような準備をして見ようが、決して答え合わせに終わらないのが、この映画のとんでもないところだ。ええ、奥崎謙三はやっぱりグレートキチガイでした。私は約二時間御大のキャラに感動しっぱなしだったのだが、友人はこの手のキチガイが耐えられなかったらしく、鑑賞後の感想も概ね「もうこいつカンベン」って感じだった。でも最初に見たいって言ったのは君だぞ(笑)。

■見逃したと思っていたゴールデングローブ賞、その後BS−2でもう一回やってくれました。ほっ。今度はばっちりD−VHSに録画しましたわい。ジェイミー・フォックスの受賞スピーチは何度見ても泣けるね。

■3月12日の土曜日にやったアカデミー賞の総集編。またも監督賞をとれなかったマーティン・スコセッシ。一応笑ってクリント・イーストウッドに拍手を送っていた彼に裏主演男優賞をあげたい。で、みんな「なぜとれないスコセッシ」って言ってるけど、でもこの人の作品ってそもそも賞とかそういうのが似合わないものだと思うんだが。だって主人公は電波か暴力野郎のどっちかだし。もちろんスコセッシはそういう主人公を創造してそれまでにない新しい映画をどかどか撮ってたわけなんだけど。ただ最近はもうスコセッシもいい加減枯れてるしね。ファンから見てアカデミー賞とって欲しい! っていうような作品はもう撮れないんじゃないの? まだ「アビエイター」も見ていないのにこんなこと言っちゃあなんですが。「どうして『グッドフェローズ』の時にやっとかなかったんだ? よりによってケビン・コスナーなんかにやっちゃったりなんかして」ってのは世界中の映画好きが思っているだろうが。もういっそノミネートされても来ない方がいいかもしれんね。ウディ・アレンみたいに。
 それはそれとしてクリス・ロックの司会はやっぱり最高に面白かった。去年のビリー・クリスタルの時みたいな面白映像集が全くなかったのは残念だけど、彼のトークはそれを補って余りあった。今年は特に目当ての俳優もいなかったし、ディスクに永久保存するのはクリス・ロックのトーク部分だけでいいかな。
 去年晴れてオスカー俳優となった我らがティム・ロビンスですが、今年は助演女優賞のプレゼンテーターとしてお越し下さっておりました。ちなみに今年の助演男優賞はモーガン・フリーマン。モーガン・フリーマンとティムちんと言えば、脱獄映画不朽の名作「ショーシャンクの空に」。四回目のノミネートで初受賞となったモーガン・フリーマンには、予想通り客席総立ちだったのですが、中でもティムちんの祝福の笑顔はステキでした。でもモーガン・フリーマンってもっとノミネートされてもっと貰っているんだと思ってたよ。

■最近見た中で段突面白かったのはキム・ベイシンガー主演の「セルラー」。白昼突然数人の男たちによって拉致され(この手のサスペンスでヒロインがいきなり拉致されたりするのは当たり前だが、この映画では本当に突然ラチられる)、どこかに監禁される。監禁された部屋の電話は男たちが破壊。自分が監禁されただけでも悪夢なのに、男たちはまだ幼い息子にまで手を出そうとしている・・・! キム姉さんは藁にもすがる思いで破壊された電話のワイヤーとワイヤーをトントンツーとタッチさせ、「これでどっかに繋がってくれーっ!!」と、叩き続けた結果、どこぞの若者の携帯電話に繋がることに成功。で、こっからこの赤の他人の若者とキム姉さんとの文字通り命の会話が続くわけなんだが、なまじ携帯というアイテムのちっこさ(例えば電源が切れそうになるとか落としそうになるとか)が逆にいい具合に作品に緊張感を与えてくれていた。次から次へとやってくる数々のピンチも、誰かがすぐドジを踏んだおかげで生じるとかいうような「取り敢えず何でもいいからピンチ作っとこ」系の頭の悪いものが一個もなくって、よく考えられたリアルなピンチだから気持ちいい。後半で明らかになるヒロインが狙われた理由もいい意味で普通というか、サスペンスとして大変まともな理由だったのも好感度大。最近、自分の中で無理やり補完させるしかないようなオチの作品が多かっただけに、月9ドラマを見た後で全盛期の山田太一ドラマを見たかのように一気に目が膨れました。

■あちこちで評判のよろしい「ボーン・スプレマシー」を見に行くべく、未見だった前作「ボーン・アイデンティティー」を借りてきた。面白かったんで「ボーン・スプレマシー」は劇場に見に行く気満々だったのだが、風邪をひいちゃってそれどころではなくなってしまった。ていうか、アイデンティティー見ている間になんか体がだるくなってきたんだよな。ああせっかくTOHOシネマズ一ヶ月間フリーパスポートが使えるのに。ちなみにTOHOシネマズではスプレマシーは今日(18日)まで。ううう。
 で、その負け惜しみで言うわけじゃないけど、ボトムズでカムイ外伝な話の主役がマット・デイモンってのは超ミス・キャストだよな。ジミーちゃんの顔の部分だけジュード・ロウに改変&画質はそのままってな海賊版DVDがあったらいくらしようが迷わず買うぞ。

■ヤフーミュージックの16日のトピックスに出ていた「お葬式で流したい曲ベスト10」。イギリスでの三位にモンティ・パイソンの“Always Look On The Brite Side Of Life”が入っているのが粋! でもヤフーのこのトピではLifeんとこがLoveと誤植されていて萎えた。んなタイトルの歌をパイソンズが歌うかいな。いや、何らかの悪意に基づいてなら歌うか。
 ヨーロッパの一位はクイーンの“The Show Must Go On”。んん、気分としては非常によく分かるが、人生はWent OffなのにMust Go Onゆうてもなあ。・・・すみません、野暮なこと言いました。
 ちなみに私が自分の葬式で流して欲しい歌は大杉久美子の「さよならサンティ」(『くじらのホセフィーナ』のED)だね。何と言われても絶対これじゃよ。ああでもこの歌は大杉久美子本人の葬式とかで流しそうだよな。そうなったら「みんなのうた」のサントラをエンドレスでかけて貰いたいなー。

■13日の日曜日のヤフートピックスにドラえもんの新キャストが決定との報が。えええええーっ、ドラの声が水田わさび!? 緒方賢一の劇団すごろくの一員として同劇団の芝居によく出ていたし、最近はちょくちょくテレビアニメでも見かけるようになったからそれなりに知ってはいたけど、こんなところで目にするとは。役者として潰されなければいいのだが。
 まあでもこのキャスト陣も恐らく七、八年したら刷新されると思う。ドラの商品価値を考えれば、これからは遠山の金さんや水戸黄門と同じく数年おきにキャストを変えていくのが無難というものだ。
 で、そんな今日は大山ドラ最後の日。アニメのドラえもんは主題歌歌手が大杉久美子から山野さと子に変わった時点で興味の対象から外れたため、大山のぶ代最後の日もそれほどの感慨をもって見ることはないだろう。しずかちゃん役の野村道子はサザエさんのワカメちゃんの方も降りるのだとか。お疲れ様でした。これからは存分に旅行に行ったりして欲しい。



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