昨年4月から衛星放送で、韓国ドラマ「冬のソナタ」が始まったとき、私は第1回目から見て、2,3回経つうちに、すっかりこのドラマの虜になってしまった。 日本のラジオドラマから映画化されて一世を風靡した「君の名は」、ロナルド・コールマンとグリア・ガースンのアメリカ映画「心の旅路」、それにケーリー・グラントとデボラ・カーの「めぐり逢い」、いずれも古い映画ばかりで申し訳ないが、この三つを足して3で割ったら、まさにこういうドラマが出来上がるだろうと思うような、メロドラマの王道を行く作りであった。 美男美女、すれ違い、愛し合う二人の前に立ちはだかるいくつもの枷、恋敵、なぜかひとりの女に二人の男が絡む設定になっている。 いまの日本では、枷と言われるような外的な障害はほとんど無くなって、安易に結びついては、また安易に別れるという状況が殖えているようだが、韓国は、まだまだ、親の反対とか、男女関係に古風なモラルが生きていたりするところが、ドラマの背景にあるのだろう。 「心の旅路」は、記憶喪失と、その快復がテーマであった。 「めぐり逢い」は、約束の待ち合わせ場所に急ぐ女性が、交通事故に遭い、ふたたび巡り会うまでの話が山になっていた。 「君の名は」は、愛し合う二人が、いくつもの山を越えて、結ばれるまでに、10年ほどの年月が掛かっている。 「冬のソナタ」は、脚本家が、それらを参考にしたかどうかは知らないが、二人がやっと、結ばれるまでの、いくつものエピソードの中に、これら古典的メロドラマの要素が、すべて入っている。 それに、美しく哀調を帯びた音楽、美男美女とくれば、ヒットする条件はかなっているのだが、やはり、女性が多く見るこの種のドラマの鍵は、ヒロインを愛する男役に、負うとことが大きい。 ペ・ヨンジュンは、これ以上ないと思うほど、この役にはまっていた。 初回に高校生で登場するところから、インパクトがある。 肩幅の広いがっちりした体つきながら、整った顔。 ややニヒルな高校生で、あまり笑わないが、何か、人の心を引きつける魅力がある。 高校生役の時には、眼鏡を掛けていず、少し目元がきつく見えるが、この顔も、なかなかいい。 私は、1,2回で、すっかりファンになってしまった。 この段階では、まだドラマの視聴率は、それ程高くなかったと思う。 私の友人達も、ほとんど知らなかった。 だんだん評判になってきたのは、NHKの派手な宣伝のせいもあるが、昨年末に地上波で再放映されだしてからであろう。 「ヨン様」なんて、おばさま達が騒ぐ頃には、私は、「ペ・ヨンジュン巻き」のマフラーを、とうにマスターして、街を闊歩していたのだった。 そういえば、「君の名は」でも、岸恵子が巻いたマフラーが、「真知子巻き」なんて言われて流行ったりした。 友人達も、そのころになって、やっと認識しはじめたようだった。 彼女たちに差を付けたいので、私は、空港に押しかける「ヨン様」ファンとは一線を画し、「ヨン様」なんて呼ばないし、テレビの実像もあまり話題にしないことにしている。 彼の実像も、笑顔は素晴らしいし、ファンサービスもきめ細かく、そのホスピタリティは素晴らしいが、私が好きなのは、あくまでも、ドラマ「冬のソナタであり、「冬のソナタ」のチュンサンである。 さて、「冬のソナタ」が大ヒットしたからか、韓国ドラマが、次々と放映されている。 昨年秋、「冬のソナタ」のあとに始まった「美しい日々」は、最初の1,2回のドラマの筋立てと、作りが、あまりにも、「冬のソナタ」とかけ離れていたので、見る気はせずに、ほっておいた。 この10月から、また再放映されていて、何となく見ているうちに、「冬のソナタ」とは違う意味で、悪くないなと思い始めている。 ヒロインのチェ・ジウは、似たような印象だが、相手役の、イ・ビョンホンは、どちらかというと硬派、強引で冷たいが、本当は愛に飢えている役どころ。 屈折のある難しい役を、よく演じていて、だんだんドラマの行方が面白くなってきた。 最近は、欠かさず見るようになり、土曜日の夜を心待ちにしている。
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