沢の螢

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台風に向かって
2004年10月12日(火)

10月10日、11日と二日間、芭蕉生誕360年を記念しての「世界俳諧フュージョン」という催しが、三重県伊賀上野市で開かれることになっており、それに参加すべく、連句仲間の女4人で、申し込んであった。
ドナルド.キーン氏はじめ、俳句連句関係の内外ゲストを招いてのシンポジウム、吟行など盛り沢山の内容である。
前日の9日に、行くことにし、宿泊先は決まったが、行き方や時間は4人の都合が合わないので、ホテルまではそれぞれ、ということになった。
しかし、そのあたりを直撃しそうな台風が来ると言う予想である。
9日の鈴鹿サーキットは、台風襲来に備えて、中止になったという。
「止めた方がいいかしら」という声もあったが、行ってしまえば、翌日は晴れるでしょう、何とかしていきましょうという気持ちが勝って、誰も、キャンセルせず、予定通りに行くことにした。
一人は早朝の切符を手配し、京都から奈良近辺を廻るという。
一人は、午前中、用事があるので、午後からの新幹線で、向かうという。
私と残りの一人は、最寄り駅が同じなので、11時6分発の新幹線で行くべく、切符を買ってあった。
テレビで情報収集しながら、支度をする。
当日早起きすると、すでに新幹線は、静岡付近で、徐行運転している。
「止めた方がいいぞ、途中で止まるか、車内で夜明かしになるぞ」と夫は、心配半分、イジワル半分で言う。
それでも、予定を変えそうにないと見て、当日は、雨具を持たなくてもいいように、駅まで、車で送ってくれた。
雨は降っているが、台風の雨ではなく、風もない。
折りたたみの軽い傘だけ、荷物に入れる。
以前、伊勢に行った時も、台風に遭い、そのとき、靴をダメにしたので、今回は、予備の靴を入れた。
東京駅までの電車も、遅れるかも知れないので、かなり早く家を出た。
東京駅に着くと、新幹線改札口はごった返している。
予定の出発時間までに、1時間ある。
車内で、足止めを食うことも考えて、飲み物と、お弁当を買う。
改札口で、乗務員に様子を聞くと、「出ることは出ますが、かなり遅れがあり、途中で止まるかも知れません」とのこと。
「旅行はお取りやめ下さい」などと張り紙もある。
早朝から、遅延は続いていて、予定の列車も、遅れそうだという。
来てみて、取りやめた人もいそうである。
とにかく、新幹線ホームにはいる。
一緒に行く友人にケータイを繋いでみるが、通じない。
ホーム両側には、新幹線が止まったままである。
そのうちに、ケータイで、友人のメッセージが入り、カートを引いた彼女と、ホームで合流した。
該当の列車が到着し、乗り込んだ。
思いがけなく早く、15分遅れで出発した。
満席の筈の車両に、いくつか、空席がある。
台風で取りやめた人がいたらしい。
静岡あたりで、やはり徐行運転になり、雨脚が窓を叩くほどになったが、列車が止まることはなく、京都に着いたのが、予定より、1時間遅れであった。
名古屋についた時、午後1時頃発った友人から電話が入った。
「まだ新横浜で停まったきりよ」という。
どうも、私たちの乗った列車のあとから、遅れがひどくなって、次々と停まってしまったらしい。
間一髪で、運がよかったのだ。
京都に着いた時は、ほとんど台風は通り過ぎたようであった。
荷物を預けて、京都の名所を観光し、近鉄に乗り換えて、天理市内のホテルに行くのが、当初の予定だった。
しかし、友人は、京都観光よりも、天理界隈を歩きたいという。
あとは、早くホテルに入った方がいいんじゃないかしらというので、そのまま近鉄天理線に乗り換えた。
天理駅は、大きな駅である。
市制50周年の垂れ幕が下がっていた。
少し小雨が降っている。
荷物をロッカーに入れ、タクシーで、天理教総本山のあるところに行った。
私は、6,7年前に一度、大学のフィールドトリップで、行ったことがある。
ここの大伽藍は、信者でなくとも、一見の価値がある。
祈りを捧げている信者達と、少し空気を共有した。
天理大学、天理図書館の素晴らしさも、見る価値があるが、残念なことに、もう閉館していた。
駅に戻り、近鉄線で平端に出る。
ホテルの循環バスを待ち、目的のホテルに着いたところで、早朝に発った友人と合流した。
スポーツクラブを兼ねたホテルで、お風呂に入り、食事やカラオケを愉しんで、部屋に落ち着いたが、もう一人の友人を含む遅れ組は、新横浜で、列車が止まったまま、9時間経ち、いったん家に帰ったり、ホテルに泊まったりしたらしい。
翌朝、ホテルに迎えに来たバスで、私たち3人は、催しが行われる会場に移った。
連句会が10時過ぎにはじまり、そこに、早朝東京を発った前夜からの遅れ組が、次々と到着した。
友人は、自宅往復のタクシー代その他で、結局1万円くらい余計にかかったらしい。
すでに台風は、遠くに去っていた。
亭主や息子からの連絡、問い合わせ、それへの返信、友人間の連絡など、滅多に使わない携帯電話が役に立ったが、旅の終わりには、電源を使い果たしていた。
帰りは、名古屋からであったが、指定券を買っていなかったので、東京まで、座れないことを覚悟していた。
連休の最後、しかも、夜8時少し前である。
ところが、自由席で、運良く座れたのは、ラッキーだった。
一緒に乗り合わせた顔見知り達も、みな、席に収まった。
やはり台風の影響で、帰りの客も、減ったのであろうか。
帰宅したのは、10時45分。
短いが、長く感じた三日間のトリップだった。
ネットで交流している連句の人とも、初の対面をすることが出来た。
さすがに疲れて、今朝は9時まで寝てしまった。
溜まった洗濯物を片付け、干してしばらくすると、雨が降ってきた。
秋雨前線らしい。
やっとパソコンに向かって、キーボードを叩いている。



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