土日、奥多摩に「カンタンをきく会」という催しを兼ねて、一泊旅行をした。 夫の友人四人がそれぞれカップルで、八人。 本当はもう一組いるが、たまたまほかの予定が重なって、今回は来なかった。 邯鄲は今頃の季節に、周囲の条件が整っていると、いい声で鳴くらしい。 らしいというのは、聞いたことがあるかも知れないが、認識していないのかも知れないと言うことである。 歳時記には、コオロギ科の虫で、美しい声で鳴くとあり、俳句にもよく詠まれる。 学名はカタカナでカンタンと書く。 たまたまグループの一人が、青梅市で毎年邯鄲を聴く会をやっていることを知っていて、参加したことがあるというので、今年はグループで一緒に行くことになった。 風雅の道を愛する人たちでもある。 新宿駅で昼過ぎに集合、青梅線に乗る。御嶽駅で下車。バスでケーブル下へ。 少し歩いて、滝本駅からケーブルに乗り、御岳山に着く。 「カンタンをきく会受付」という所で、今回の幹事役が申し込みの確認をして、宿舎として割り当てられた宿に向かった。 歩いて15分くらいだったろうか。坂道が続き、かなりきつかった。 日ごろの運動不足を痛感した。 今回の参加者は、90人くらいとのこと。 台風の予想があったので、雨が降ると虫は鳴かないからと、キャンセルした人もあったらしいが、毎年来るファンが多いようである。 小さな宿坊が沢山あり、参加者は、主催者によって、泊まる場所を割り当てられるが、私たちは、会場から遠い分、素晴らしい宿舎に当たって、ラッキーだった。 趣のあるたたずまいの宿は、一度台風で壊れたが、100年以上前から、あったという。 汗びっしょりになった体を風呂に沈め、早めの夕食となった。 「全部うちの庭で栽培した野菜です」といって出された料理は、山菜を中心に鮎の塩焼きが付き、なかなかの味だった。 食後、カンタンを聴く会の講演会場に向かう。 雨模様なので、傘を持っていく。 会場には今回の参加者が集まっている。 元多摩動物公園園長だった矢島氏が、「カンタンの生活とその環境」という題で話をする。 話の途中から、雨がだんだんひどくなる。 「今日は、外でカンタンを聞くのは無理ですね」というわけで、講演の後、テープでカンタンの声を聞かせてくれた。 天気が良ければ、みんなで外に出て、虫の声を聞きながら歩く筈であった。 矢島氏は、現在群馬の昆虫の森で、自然環境の中で、子ども達に、虫を知って貰うべく、準備中だそうである。 「どこからか採ってきて、籠に入っている姿しか見てないんです。どんな環境があれば、虫が生息できるのか知って欲しいし、直に障って、見て欲しいのです」と氏は言った。 話が終わって、けんちん汁と酒が振る舞われた。 雨が一向に止みそうもないので、足元に気をとられながら、宿に向かった。 グループの一部屋に集まり、お酒と会話を2時間ほど愉しんで就寝。 翌日は、御岳山神社の神楽を見て、ケーブルで下山。 そこから先の奥多摩に行き、「もえぎの湯」に入った。 温泉ではないようだが、最近は、あちこちに、銭湯のような浴場が出来ていて、ドライブの人たちにも人気があるらしい。 スポーツクラブの風呂場のような作りになっている。 余り広くはないが、野天風呂もあった。 そのあとで、遅い昼食を摂り、奥多摩駅から直行の新宿行きに乗り、帰路についた。 奥多摩は11月になると、紅葉で山が真っ赤に染まる。 それを求めて、沢山の人が訪れる。 春は春、夏は夏で、四季を通じて、いろいろな表情を見せる奥多摩。 今回は、カンタンを聞く催しに、一泊の宿と2食付きで、一人8000円。 いい週末であった。 夫の高校時代の友人がある時から、旧交を温めるために、集まるようになり、そのうち連れあい達も加わって、10人というのが自然にグループになった。 毎年、年一回の小旅行、日帰りのハイキングや観劇、花見、最近は温泉廻りも入って、14,5年経つ。 「体が動いて、カップルで動ける間に、せいぜい愉しもうね」が合い言葉である。 そして、いつの日か、グループの誰かが、欠けることがあっても、残った伴侶を、みんなで支えていこうねという暗黙の約束も出来ている。
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