連れ合いは朝から合唱の練習に出かけた。 大学時代、私たちは、同じ合唱団にいた。 女性の少ない大学なので、混声合唱は、学内の学生だけでは成り立たない。 そこで、女声だけを近くの女子大から募り、混声合唱団として、活動していた。 私は、混声合唱の経験は初めてなので、大変興味があり、先輩に誘われて、入団した。 そこでの4年間は、充実して愉しかった。 二十歳前後の若者の集まりだから、歌の活動以外にも、それを通じての友達づきあい、当然、恋も葛藤もあり、波乱に満ちた青春を送った。 貧しく、しかし、心豊かな時代だった。 その時は、どうしてこんなつらい思いをしなくちゃならないのと思うようなことが沢山あったが、いつも心があつく燃えていた。 その頃のスナップ写真は多くモノクロである。 男性は、黒い詰め襟の服、夏は、白いシャツに下駄なんか履いている。 女声も、質素なブラウスとスカート、革の鞄だけが、唯一贅沢な持ち物だった。 合唱の練習は週に2回あり、終わると「沈殿」と称して、喫茶店に入り、会話を愉しんだ。 年に一度の演奏会は12月にあり、その年に練習した曲の中からプログラムを組んで、行う。 夏と春には、4泊5日の合宿があり、高原や海辺に行った。 そんな中で得られたことは大きい。 卒業後も、時々同期会をやっていたが、最近は、複数年次に渡っての集まりも出来、そこで昔の歌を歌ったりする。 来年、51回目の定期演奏会がある。 現役学生のステージに加えて、OBも参加することになり、私たちも、参加することにした。 夕方、連れ合いが、昨年の集まりの写真をもらって帰ってきた。 連れ合いの隣で、笑って写っているのが、昔、合唱団のマドンナと言われた人である。 シャープな顔立ちで、一世を風靡した。 彼女に、心を奪われた男性は多い。 しかし、本命と思われた男性は、別の人と結婚し、彼女は、全く違う世界の人と、見合い結婚した。 今は、オペラのアリアをレッスンしていて、今月末に、発表会がある。 わたしが惹かれていた人は、背の高い痩せたテノール、神経が繊細すぎて、かみ合わず、私の片想いに終わってしまった。 毎年同期会で会うが、その妻は私の友達である。 年月が経つことの素晴らしさは、何もかもが、セピア色の額に入り、時々取り出して、穏やかに眺めることが出来ることであろう。 来年のステージ、昔の仲間とモーツァルトのミサを歌う。 今から楽しみである。
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