沢の螢

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情報の行方
2003年09月15日(月)

2,3日前から家の「秘書」が、なにやら慌ただしい。
さるところから、地震に関する情報が来て、それがかなり確信に満ちているというので、備えをしているわけである。
ゴルフの予定を取りやめ、風呂場に水を張ったり、預金通帳や年金証書をまとめて、手元に置いたりしている。
流星と、電波の関係で、地震を測定するとか。
詳しいことは、聴いたが、忘れた。
前に、2000年問題の時も、秘書は、カセットコンロを買ったり、ペットボトルに水を溜めたりしていた。
私も、息子夫婦も、あまり同調しなかったので、「何かあっても知らないぞ」と怒っていた。
結果的には、何事もなく終わり、それで良かったわけだが、この種の情報は、人により、受け取りかたが違うであろう。
何が正確な情報かと言うことは、実は、よくわからないのである。
受け取り方によっては、流言飛語となり、何も起こらなければ、それが一番良いわけだが、逆に「あの話はウソね」と言うことになってしまう。
秘書は典型的A型人間、備えあれば憂いなしを地でいく。
常に理想というものがあって、それに近づくべく努力する。
綿密に計画を立て、すべてにわたって気を配る。
現役の頃は、危機管理能力を買われて、そちらのほうでも活躍していた。
私が社長だったら、ブレーンとして、いの一番に取り立てたいひとである。
私のほうは、対照的なO型人間、よく言えばおおらかだが、ずぼらで、計画性に欠け、ノーテンキである。
決して、太っ腹でもないのに、「何とかなるわよ」と、どこかで肝の据わったところがある。
夕べは、私も、秘書の指導で、預金通帳をまとめたり、保険証と診察券を集めたりしたが、あまり本気になれなかった。
「天災は忘れた頃にやってくる」というのは、本当だと思う。
だから、備えがあれば、それだけ、安心なのかも知れない。
私の歌の先生は、阪神大震災のあと、極度の地震恐怖症になり、大きなリュックを買って、毎晩、中身を点検し、必要なものを、時々入れ替えて、枕元に置いていた。
ある時、試しに背負ってみたら、あまりに重くて、立ち上がれなかったという。
これじゃあ、地震よりもぎっくり腰のほうが心配だというので、また、中身を点検し直し、3分の1くらいに減らしたらしい。
つい笑ってしまったが、先生のほうは本気だった。
弟子達が、真剣に聴いてくれないと気を悪くし、「あなた達、そんな心がけじゃあ、地震の時はあの世行きね」と怒った。
プリマドンナが、ベルカントで、喋るのだから、迫力はあったが、みな、神妙な顔はしつつも、先生に見習って、リュックを用意した人は、あまりいなかったようである。
戦争体験があったり、戦後の混乱期に生活上の苦労をした年配者の話をきくと、程度の差はあるが、イザと言う時の、何かしらの備えはしている。
知り合いや親族で、食料や燃料などを、倉庫に分割して保管し、まさかの時は、無事だったほうから提供する約束になっているという話もきいた。
さすが、と感心するが、かといって、真似をするところまで行かないのは、危機感が薄いからであろう。
家の秘書だって、騒いでいる割には、それ程の処まで行かない。
第一、私が足の骨を折っているのに、この重い体を抱えて逃げてくれるとは、とうてい思えない。
「少し体重を減らせ」などと言うが、何十年もかかって増えた体重は、減るのも、同じだけかかるのである。
「万一の時は、置いて逃げて。決して恨みませんから」と言ってある。
今朝も秘書は、救急箱など開けて、「包帯はある。消毒薬もある。バンドエイドは足りるか・・」などと、点検している。
それを聞きながら、私は、新しく始まった連句の行方のほうが、気になっている。



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