病院、医院の待合室は、社会の縮図みたいな処がある。 私は、今世紀に入ってから、市の健康診断で行く以外には、ほとんど医者に掛かったことがないのだが、今回、「骨折り」で止む終えず、整形外科に行くことになった。 先週月曜日、ギブスを嵌められ、今日また行った。 もう痛みもほとんどないので、ギブスが外れるつもりで行ったら、「骨が5ミリずれてます」と言われ、またしっかりとギブスをした姿で、帰ってきた。 先週は待ち時間1時間、今日は、特別込んでいて、1時間40分待たされた。 待合室の会話や、人の動きを観察していると、なかなか面白いことがある。 私の近くにいた母と息子の会話。 息子は膝を痛めたらしく、股のあたりまで付帯で巻いた姿、母親は、小柄だがしっかりタイプ。 息子は、長い事待たされてイライラしている。 息子「ねえ、こんなに長く待つのイヤだよ」 母「だってしょうがないわよ。月曜日はいつも込むんだから」 息子「順番通りにやってるのかなあ。あの人あとから来たのに、先に呼ばれたよ」 母「リハビリの人は早いのよ。それに、診察券だけ先に出してあったかも知れないでしょ」 息子「じゃ、そうすれば良かったのに」 母「だって、いつも込んでるわけじゃないし、2度も来るのはイヤだもん」 そのうち、やっと順番が来て、母子は診察室に呼ばれる。 続いて、レントゲン、診察室と一連の流れのあとで 母「ほら、先生が、家でもリハビリしなくちゃダメだっていったじゃない。」 息子「リハビリなんてイヤだよ。続かないよ。近くの医者でやってもらうよ」 母「お医者にかかれば、その都度お金を払わなくちゃならないけど、うちでやればタダじゃない。やり方を教えてもらったんだから出来るわよ。」 息子「だって、うち狭いもん。すぐにあちこちぶつかって、痛いんだよ。近所の医者に代わりたいって、頼んでよ」 母「そう言うわけに行かないわよ。またレントゲン摂られて、初診料払わなくちゃならないもの」 息子がしきりにゴネて、母親がなだめたりすかしたりの会話は、思わず聞き惚れてしまうくらい、面白かったのだが、うまく再現出来ないので、止める。 この親子、母親は60代後半くらい、息子は40前後かと思われた。 マザコンというのは、こういう男のことかなあと思いながら、駄々っ子をあやすがごとき、母親の巧みな誘導に感心してしまった。 「あの母親は長生きするよ」と、連れ合いが言った。 やがて、会計を済ませた親子。 体の大きな息子を車椅子に乗せ、小柄な母親が、それを押して、帰って行った。 私の隣に腰掛けていた老婦人が話しかける。 「私、俳句の先生してるのよ。オタクどの辺に住んでるの」 私が地名を言うと、 「あら、じゃ、うちのほうのコミセンに来れるでしょ。6人ぐらいで愉しくやってるのよ。来ない。第3土曜日の午後からよ」 ちょうど、連句の会合と重なっている。 「あいにく・・・」と断った。 「アラそう、俳句なんかやりそうな顔に見えたのに、残念ね」 俳句顔って、あるのだろうか。 美人じゃないという事だけは、わかる。 俳句の話が消えたと思ったら、3年前に入院したいきさつやら、外国旅行の話、「今はね、何か目的を持たなくちゃいけないから俳句と、絵に絞ってるの」等々、話の聞き手を勤めさせてもらった。 「アラ、ご主人どこにいるの。奥さんほっといてダメじゃない」と、ほかの患者の邪魔にならないよう、隅っこで小さくなっている私の連れあいを、側に呼んでくれた。 80歳だという。 「来てみたら、リハビリがひとつ増えて、薬もよけいに飲まなくちゃいけないなんて、ガッカリだわ」といいながら、帰っていった。
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