| 2003年03月27日(木) |
『寂しい気持ち』(亮ヒナ) |
「なんや、亮ちゃん変わった?」 歌取りが終って楽屋に戻る途中、偶然二人きりになったとこで村上くんが不思議そうな顔して言った。 「変わったって、何が?」 言うと困ったような顔を浮かべながら。 「あんな・・・・なんか、俺に対しての態度が変わった思うねん」 「そう?」 自分では意識したことなかったので別段気になっていなかったけれど、俺の言葉に村上くんは大きく頷いたから。そんなに変わったんか?と気になった。 別に、今まで通りやと思うんやけど。月に数回あるレギュラー番組の撮りをやって、たまに雑誌の取材を一緒に受けて。「久しぶり〜」なんて会話をしたりするだけやって。思うけど。 「絶対変わったって!」 断言するのに、身に覚えがまったくないのでなんとも言えなくて黙ってると。何故か村上くんは頬を少し赤らめながら。 「やって、この前もそばにいてくれたし。今日の歌のときやってこっち向いてくれたし・・・」 段々と消えそうになる声を必死に聞き取りながら。 自分のことを振り返ってみて。 確かに、この頃村上くんとよう目があうなあとは思ってた。 前もようあうときあったけど。この頃は気づいたら目があってたし。そういえば、ようそばにおるような気もした。 少し前の自分だったら、空いた時間などは丸やすばるくんとこ行ってるか一人でおるほうやったのに。今も楽屋に戻ってきてるし、そういえば空き時間も一緒におった。弁当広げて食べてた・・・・そう言われたら、変かもしれんって思った。 そのときふっと、先週のことが思い浮かんだ。
月に一度のペースになってしまった番組取りの休憩中。丸ややっさんや内などがいる楽屋で本読みながら時間を過ぎるのを待ってると。丸達がここにはいない村上くんの話をしてるのが聞こえてきた。 丸は声でかいんや。なんて思いながらも出てきた名前が気になってなんとはなしに耳を傾けていた。 「村上くん、忙しそうやなあ」 「休憩やってのにスタッフと打ち合わせしてるもんなぁ」 「なあ・・色々話したいことあったんねんけどなぁ・・」 どんよりとまるでお通夜状態な三人を見てうっとおしいわあと思った瞬間に「ウザイんじゃおまえら!」とすばるくんの鉄拳が飛んでるのが見えた。 それに少し笑いながら。渦中の人物であった「村上」くんのことを思った。
そうだ、そのとき思ったんや。 舞台続きでロケにもあまり参加出来ない人だし。ましてや今大阪を出て東京で暮らしてるもんやから滅多なことでは会えない。 レギュラー番組も司会してばかりでエージェントになったのなんてただの一回だけで。 それなのに寂しがりやの村上くんが「寂しいなあ」と甘えてる姿を一回も見たことなくて。代わりに丸や内が「寂しいわ・・」と泣きそうな声で言ってるのを聞いて。心のなかで小さく頷いてる自分がいた。
もしかしたら、自分も寂しい思ったのかもしれん。
だからたまに一緒になったときは村上くんのそばにいたいと思ったし。見てたいと思ったのかもしれない。
寂しいなんて、俺に合わへんなあ。 苦笑いを浮かべると村上くんが「なに?」って顔を浮かべたからなんでもないって返した。 そういえば、こんな風に考えたんは村上くんが言い出したからやったっけ。気になったんってことは、なんや思ったんか? 「気になるんやったら、直すけど」 言うと、村上くんは慌てたように首を横に振った。 「気になるとかやないよ!むしろ・・・」 「え?なに?」 消え入りそうな声だったせいで後半何を言ったのか聞こえなくて聞きなおすと、「なんでもあらへん!」と少し拗ねたような声が返ってきた。 そんなん態度されたら、余計気になってまうやん。やけど村上くんは頑なに口を閉ざすから、仕方なく諦めたけど。 どうしても気になったことがある。理由はわからへんけど、明らかに照れて赤くなってる頬。それはきっと、さっきの聞こえなかった言葉のせいなんやろうけど。 言うてくれへんからわからへん。やから、それだけでも聞こうかと思った。 「なんで顔赤いん?」 言うと、村上くんの顔は更に赤くなってしまった。 なんや、トマトみたいやなあなんて思ったら。 「亮ちゃん、イジワルや」 泣きそうな顔で言われて、いじめ過ぎたかと少し反省した。
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