妄想日記 

2003年03月08日(土) 『ただいま』(ヨコヒナ)


村上は舞台が終り、いつもよりも素早く帰り支度をし、急いだ先は都内ホテル。
関ジャニ8ととして仕事をしていたメンバーが泊まっているホテルだった。
「終ったら行くわ」
昨夜、別れるときに言ったら「さっさとこいよ!」「待ってますから!」と様様な返事が返ってきた。
その言葉の通り、ホテルに着いた村上は、そのことを伝えようと渋谷に電話をした。

『今、飯食ってんねん』
「マジでか?」

タイミング悪いなあとうなだれると、それに慌てたような渋谷の声がした。

『おっちゃん!横山のおっちゃんが一人で部屋居るんよ』
「はあ?なんで?」
『誘おう思ったら気持ち良さそうに寝てるからな。起さんとこう思った!』
「そら正解」

誘わなかったことに怒るだろうけれど、きっと起こしたところで「なんで起こすんや!」と怒るに決まっている。それならば最初から起こさないでいたほうが気分もいい。

『やから、しばらくヨコのとこいてや』
「わかった」

すぐ戻るからな!と言いながら勢いよく電話を切られた。苦笑いを浮かべながら、。村上はホテルの中へ入った。



横山の部屋のインターホンを鳴らすと、思ったよりも早く返事がかえってきたことにホっとした。
「お疲れさん」
明らかに寝起きの顔に笑いながら、挨拶もそこそこに部屋の中に入った。
ベッドに腰掛ける横山に、自分はどうしようかと迷っているとソファを指差された。それに遠慮かちに座ると、ホっと息をつきながら、今日ずっと聞きたかったことを聞いた。

「少クラ、どうやった?」
「ん〜?まあおもろかったで、色々と」
「そうかぁ・・・」
「オマエはどうなん?」

返されて、一瞬言葉につまったけれど。すぐさま立ちあがって今日あったことを話はじめる。


「おもろかったでー。小芝居とかしてなー」

その日あったことを一通り説明していく。横山は表情は変えないでそのまま聞いていた。
そうやって、なんとなく話していたが。段々と村上のトーンが低くなっていった。
いつのまに持ってきたのかビールを片手に聞いていた横山はその異変に気づいて村上のほうを向くと。

「なんや、いったい」

まるでいじめられたかのように小さく俯いてる姿があった。
自分が何かしたのだろうか、横山は思い起こしてみたがそれといって理由も見つからず。困っていた。
それに気づかないで、村上は下を向いたままうなだれていた。
今日あったことを話してるうちに、自分だけ別行動だったという寂しい気持ちが蘇えってきたらしい。


今までだって一人で仕事する機会があった。10月の蒸気だってそうだ。あれこそ先輩も誰もいない一人の場だった。けれどここまでの気持ちにはならなかった。
何故だろう。今までより、一層寂しいというキモチに溢れているのは。
舞台に集中しているときはいい。他のことを考えずにいたから。けれど、昼と夜の公演の間。間が合いたときにふと一人になったとき。考えるのは、同じ地にいながら別々の仕事をしてるメンバーのことだった。
今頃、歌ってるんやろか。コントでもして会場を沸かしているんやろか。
自分の居ない関8のことを思うと、寂しくてたまらなかった。


それはきっと、ユニットを組んだからなんやろな、そう思った。
以前は関ジャニという大きなくぐりに分けられていたから、メンバーというよりは仲間という意識のが高かった。ANOTHERも個々が集まって、やり遂げたような感覚だった。
しかし、ユニットを組んでから。仲間というキモチから「メンバー」というキモチが強くなった。
個々が集まったものではなく、関ジャニ8という一つのものになった。
だからきっと、今までとは違った感情が溢れたんだろう。
前日、一緒に過ごしたメンバーが、自分から離れていくのを見届けたとき。
置いて行かれたような気持ちになった。自分だけ、パズルから落ちてしまったピースのような、そんな感じがした。
ふと、この寂しさには覚えがあることに気づいた。

ああ、そうや。

あれは、家族と離れて一人暮らしをすることになったときの、家を出る瞬間に似ていた。


「自分でも阿呆やと思うけど・・・・」


話し終わってから、村上はソファに座ったまま俯いていた。
きっと呆れてるであろう横山の顔がまともに見れない。また怒られるかもしれん。「甘えんな」と喝を入れられるかもしれない。そう思って、俯いたまま横山の次の言葉をまった。
しばらくして、ベッドのスプリングが軋む音がした。横山が動いたんだろう、そう思ったとき、自分の横に人の気配がした。
いよいよなんか言われる。思って身構えてると、強い力で肩を掴まれた。そしてそのまま隣にいる横山のカラダへと引き寄せられた。
何がおこったん?理解出来なくて顔をあげると、少し頬が赤い横山の顔とぶつかった。

「家出たんやったら、帰ってくればええだけやろ」
「え・・・?」
「帰って、きたんやろ?」

俺のとこに。
なんてことは横山の性分から絶対言えないけれど。言葉の端にある意味に村上はちゃんと気づいたらしい。嬉しそうに笑顔を見せると。

「うん、ただいま。ヨコ」

そのまま横山の肩に頭を預ける。横山は言葉を返す代わりに、村上の肩をぎゅっと抱きしめた。





舞台が終って、真っ先に自分のとこへ来た村上。ドア開けた瞬間思ったことは「おかえり」というキモチだった。
自分のとこから出ていったわけでもないのに。今日の朝もバラバラだったからもちろん「いってきます」「いってらっしゃい」なんていう挨拶が繰り広げられたわけもない。
けれど、目の前にいる村上を見たとき、戻ってきたんやという感覚がした。

それはきっと、今日ずっと「村上不在」のままで仕事をしたからだろう。踊っているときも、話をしてるときも。楽屋にいるときも。「村上のいない関ジャニ8」を思い知らされていて。
なんとなくイライラして、逆に村上のことを出さないようにしていたけれど。


だから、「お帰り」なんだろう。



「あ、来たみたいやな」
村上の声に我に返った横山は、外の騒がしい話声に苦笑いを浮かべる。


きっともうすぐ、「だたいま!」とそのドア勢いよく開けてくる欠けたパズルのピース達が現れるだろう。そう思った。


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薫 [MAIL]

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