妄想日記 

2003年01月15日(水) 仁くんとシンゴ先生と・・・

朝、幼稚園に着いた途端。隣のクラスの赤西が、職員室にやってきた。


「せんせぇ・・・」

いつも遅刻ギリギリの寝坊さんが、こんな朝早くにおるの珍しいなぁ。なんて思いながら。赤西が遠慮がちに入ってくるんを笑顔で待っていた。
とぼとぼと、いつも廊下をうるさいくらいに走ってる赤西とは全然違って。どないしたにゃろ?と村上は思った。
近くで見た赤西の表情は、いつもの能天気すぎるくらいの笑顔ではなく。とても暗い・・・・落ちこんだ図を絵に書いたかのような表情で。


「赤西、どないしたん?」



いつも馬鹿みたいに明るい笑顔が、曇ってるのは似合わないわ。なんて思って。自分で解決できることなら、話聞いたろうと促す。
すると、言いにくそうに言葉をつまらせて。それでもじっと自分を見つめてくる赤西に、言いやすくしようと満面の笑顔を浮かべて。再度聞いてみると。
ずっと下を向いていた顔をあげて。いまにも泣き出しそうなくらい、悲しそうな表情を浮かべていた。
あの。悩みなんてまったくないです!と絵に描いたかのような赤西の天真爛漫っぷりが消えていて。ホンマに、どないしたん?と心配になった。





けれど、次の瞬間。
あまりにもな理由に、がくりと肩を落としていた。







「日直でね、スキな人を言うんだけど。「シンゴ先生」って言ったらゆうせんせいが「シンゴ先生は他に好きな人おるからあかん」って言ってたんだもん」
「・・・・ゆうせんせいが?」
「うん。だからね、シンゴ先生のこと好きなのは、いけないのかなあって思って・・・そしたら、悲しくなってきた」
今にも泣き出しそうに、涙をいっぱいためて。それでも我慢しながら自分を見つめてくる赤西に。
「そんなことないで。赤西が先生のこと好きって言うてくれて、嬉しいで?」
なだめるように伝えると、途端にいつもの明るい表情が戻ってきた。
「本当!?」
「うん。本当」
「なら、先生のこと好きでも・・・・いい?」
「いいで。赤西が好き言うてくれるん、先生嬉しいし」
頭をぽんぽんとしながら、安心させるように満面の笑みを浮かべて伝えた。
「そんなら、せんせぇのこと、好きでいる!」
嬉しそうな笑顔を浮かべたあと、ばいばい!と手を振って満足そうに部屋から出て行くのを、同じように笑顔で返しながら見送った。



たかが園児の言う事。
「好き」って言葉に、それほど意味はないのに。
その言葉すら、許すもんかとムキになって答える横山。
シンゴ先生は他に好きな人・・・・自分が好きなんだと。安易にわからせようとしてるかのような言葉に。




「園児相手に、何言うてるん・・・」






少しだけ、頬を赤<しながら。園児よりも遅く登校してくる『問題児』のゆうせんせいを、待っていた。/font>


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薫 [MAIL]

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