| 2002年04月08日(月) |
『ファンシー』(内ヒナ?) |
「痛・・・」 J3の楽屋で空き時間に台本を読んでいた村上は、台本をめくろうとして紙で手を切ってしまった。 構えていないことなのでダイレクトに痛みを感じてしまい思わず声に出すと、楽屋のもう一人の住人である内が駆け寄ってきた。 「どしたんですか?」 「手ぇ切ってもーた・・・」 ほんの少しの切り口なのだが、場所が悪かったのか思った以上に血が出てくるのを見て顔を顰める。 ティッシュか何かで抑えようとしたが見当たらずどうしようかと悩んでいると。 「僕、バンドエイド持ってますよ!」 見かねた内が立ちあがると、かばんの中を漁り始めた。 物持ちええなあなんて思いながら待っていると、ニコニコしながら内が戻ってきた。 「はい、どうぞ!」 言われて「ありがとな」と受け取ろうとしたが、その手が止まった。 「どうしたんですか?」 いつまで立っても取らずに躊躇っている村上に、不思議そうな表情を浮かべた内が問い掛けてくる。 「どしたんって・・・これ・・・」 村上が指差した先には、全体ピンクにサンリオのキャラクターの絵が入っている『バンドエイド』があった。 確かにバンドエイドなわけだが。しかし、その柄が予想もつかなかったもので。 「妹にもらったんです。かわいいでしょ?」 このファンシーなものを普通に「かわいい」と言う内に、村上は呆れというよりも感心していた。 取るのを躊躇う自分に対して、かわいいと言って差し出す内。 ここが年の差なんか・・・・などと村上は思った。 しかしいつまでもそうしてるわけにもいかず、仕方なしに受け取ると傷口にあてる。
自分の指にキャラクター物のバンドエイド。 似合わなすぎていっそ笑える。 きっとヨコ辺りに見られたら「なんやそれ!?」と格好のネタにされるんやろなあ。
苦笑い浮かべながら眺めていると、「そうや!」と内がまたかばんを漁り出したのが見えた。 そして、手のひらに村上が巻いたものと同じ物を乗せて。 「これ、もう1枚あげます!」 「え?なんで?」 「だって、剥がれるかもしれないじゃないですか?」 「いや、そしたらバンドエイドを買うわ」 ずっとこのかわいらしいものをつけてるのもなんだし。そう思って言ったのだが内には通じてないらしく「ええから、使ってください!」と強引に手に握らされた。 「・・ありがとな」 「いえ!かわいいんやし、使ってくださいよ」 かわいいから使えないんやないか・・ そう思ったけれど、言ったところで「どうしてですか?」と言われるんだろうと思い言葉を飲みこんだ。 「まあ、確かにかわええと思うけど。俺のキャラちゃうからなあ」 「そんなことないですよ!似合いますよ、村上くん」 「そうかあ?」 「ええ、村上くんもかわいいから、似合いますって」 「は・・・・?」 突然言われた言葉に、村上は聞き間違えたんかと思ったけれど。 「村上くんはぬいぐるみとか絶対似合う思うんですよね!」 「ぬいぐるみ・・・?」 「クマのとか、ウサギのとか・・」 次々にあげられていくファンシーなもの達。 それらすべて自分とは縁遠い物ばかりで。しかし「かわいい」と「似合う」を連発する内にさすがの「ツッコミ隊長」の村上も反応することが出来なかった。 「今度持ってきますよ、テディベア!」 目を輝かせんばかりに光らせて、嬉しそうに語る内に「本気や、コイツ」とさすがに危機感を感じた村上が止めようとすると。 「内、出番やって」 タイミングよく(?)歌の撮りが終った錦戸が入ってきて、次の出番である内を呼びにきた声に阻まれた。 「は〜い。じゃ、行って来ます!」 声と共に元気よく楽屋を出て行く内に、村上は何も言う事が出来ずにただ見送ってしまった。
|