| 2002年04月01日(月) |
慰めにもならないけれど(バンアニ?) |
アニはソファに座って一人うずくまってるバンビを「またかよ」と無視していたが、いい加減限界を感じてきたらしい。 せっかく純の目を盗んできたってのに、暗い雰囲気出されちゃビールが不味くなる!と思い、自分より先に来てたぶっさんに問いかける。
「なに、またモー子?」 「『重い!』だとさ」 「そんなのいつも言われてることじゃん」
だよなあ、とぶっさんも同意し二人でため息を洩らす。 晴れてモー子と付き合い始めたバンビだったか、度々こうやって落ちこんでいた。モー子の言葉に一々反応して考えこんで落ちこんで。これじゃ付き合う前と変わってないじゃん。
「確かに、彼女になっても『重い』とか言われたら落ちこむけどな」 「でも事実じゃん」
さらっとキツイ一言をはくアニに、苦笑を返すぶっさん。 事実だろうけれど、彼女に言われるのはショックも大きいだろう。 そして、目の前にいるアニにも言われたら、きっと同じように落ちこむだろう。 本人は気づいてないけれど。昔から、バンビはアニに惚れていたから。 だから、今の会話を聞いたら更に凹んでいただろう。幸いソファにいるバンビには聞こえてないみたいだけれど。
まあ、落ちこむってことは逆に励ますことも出来るってことだ。
「アニ」 「ん?」 「ちょっくらバンビんとこ言って、慰めてこいよ」 「はあ?なんで俺が」
イヤそうに顔を顰めるアニ。しかしぶっさんは行けと背中を押し続ける。
「なんで俺が・・・・」
ブツブツ言いながらもぶっさんに押されて渋々腰をあげるアニ。 オマエにしか出来ないんだよ。ぶっさんは心で呟きながら笑顔で見送る。
「バンビ」
体育座りしたまま顔を伏せてるバンビに、どうしたらいいのか途方にくれていたけれどとりあえず話しかけることから始めようと思った。けれど顔を上げるだけで返事が返ってこない。
あ〜メンド〜
自分のせいじゃないのに、なんでこんなことしなきゃならないんだよ。そうぶっさんに叫びたかった。 けれど振り返った先には小さく「がんばれ」と言う姿があって。どうしようもないんだろうとため息を洩らす。 なんで自分が、思ったけれどとりあえずどうにかしないことには美味しくビールが飲めない。 それを支えに、ゆっくりとバンビの隣に座る。
「またモー子に言われたんだって?」 「・・・・・・」 「あんまさ、モー子の言う事なんて気にすんなよ」 「なんて、とか言うなよ」
気にするとこが違うだろ。アニは頭を抱えた。 惚れた弱みなのかなんなのか。恋する男は重症だ。 これじゃ自分では復活させることなんて無理だろう、そう思ったけれど。
「アニは」 「え?」 「アニは俺のこと、重いとか思ってる?」
顔を伏せたままだったからあまりよく聞き取れなかったけれど、バンビは自分に問いかけたんだろうと感じた。 なんで自分に聞くのかまるでわからなかったけれど、ここはチャンスだろうと思い慌てて答える。
「重いなんて思うわけないだろ」 「本当に?」 「本当に!俺が女だったらバンビにそこまで思われて嬉しいって思うって」 「本当に、そう思ってる?」 「本当だって!きっと女じゃなく男のままだって思うって!」
アニはとにかくバンビの言葉を否定しなくてはと思い、最後には自分で何言ってるのかわからない状態になっていた。 しかし回りで聞いてたぶっさん達はしっかりと意味を理解していて、焦っていた。
「アイツ、あんなこと言ってっけどバンビの気持ち気づいてんの?」 「いや。自分でもよくわかってないんじゃねー?」 「でも聞いてるバンビはそう思ってねーだろ?」
きっと内心大変なことになってるだろうとバンビを見れば、案の定上げた顔は真っ赤になっていた。
「ば、バッカじゃねーの。男でもなんて小峰みたいなこと言うなよ」 「馬鹿って言うなよ!人がせっかく慰めてやってんのにさ!」 「別に、アニに頼んでないし!落ちこんでないし!」 「あ、そうですか!」
言い合いを始めたと思ったらあっという間に喧嘩になり、フン!とお互いそっぽを向いてしまった。
「あ〜あ。また始まった」 「アイツはホント素直じゃねーな」 「でも、バンビ復活してんじゃん」
アニによって立ち直ったバンビ。 思った通りの展開に、二人は苦笑いを浮かべる。
「いい加減、認めればいいのにな」 「でも認めたら認めたで大騒ぎになりそうだけどな」 「まあな。それにつまんねーし」 「そうだな。バンビがああだからからかいやすいんだしな」
にやりと笑い合いながら、二人はゆっくりとソファに近づいた。 そんなことを言われてるとは思わないで、ソファの二人はそっぽ向いたまま喧嘩は続いていた。
「ホントムカツク!」
そっぽ向きながら、イヤそうにアニに向かって言った。 しかし、バンビの顔はまだ赤いままだった。
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