妄想日記 

2002年03月29日(金) 海行こうよ(バンアニ)

「やっぱ夏と言えば!」
「海だよな〜!!!」

ぶっさんとマスターが大声で叫んでいる少し後ろを、バンビは「うるさいよ!」なんて言いながら立っていた。



いつものようにマスターの店で飲んでいたメンバー。
しかし、その日はその年一番の暑さで。
冷房が入ってるとはいえ所詮マスターの店。完璧な設備ではないため暑さがダイレクトに伝わってくる。
密室の中、風sがまったく入ってこないところで男四人で飲んでる姿はむさ苦しいことこのうえない。
見てるだけでそう思うのだから、本人達は余計思ってるだろう。
この暑さの中、ビールの冷たさの喉を潤してくれる・・・・・はずだった。
しかし、ビールを飲んでいても一向に冷めない熱気に、誰もがキれかかったそのとき。

「海だ!!!!」

ぶっさんが突然立ちあがり、半ばキレながら叫んだ。







そんなこんなで冒頭。
海だ!水着だ!なんて騒いでるぶっさん達とは対照的に、黙ったままのバンビ。
しかし、さきほどから落ちつきない態度をしていた。

「なあ、アニ遅くない?」
「あ〜ホントだ。なにやってんだよアイツ」

ジャンケンで見事負けて買出しに走ったアニが、さっきから戻ってこない。
コンビニから現時点まで5分くらいで着く場所にいるため、ここまで遅いのはありえないし迷子なんてありえない。
だけど、10分過ぎからバンビの態度はかわっていた。
そわそわと落ちつきない動きをし、辺りを見渡してはため息をついたり。
はたから見たらすごくわかりやすいくら、「アニが心配」というオーラを出していた。
まるで、はじめてのおつかいに出した親のような、そんな心境だった。

「ちょっとバンビ見てきてよ」
「うん、またなんかやったのかもだし」

ぶっさんの言葉に、仕方ねえなあって顔を浮かべながら歩き出すバンビ。
しかしその歩きはどことなく早いような・・・?


「行きたいなら最初から行けばいいのにな」
「バレてないと思ってるからなあ、アイツ」

曲がり角と共に見えなくなったバンビを見送りながら、マスターとぶっさんはため息をついていた。







(いない・・・・・まだコンビニ?)
途中辺りを見渡しながらコンビニまで歩いて(競歩?)いたが、それらしく人物は見当たらなかった。
そうこうしてるうちにコンビニに着いてしまい、こうなるとやっぱ荷物重すぎだから?と思いながら中に入る。

とにかく、トラブルに巻き込まれてなきゃいい。

願うような気持ちで店内を見渡そうとした。
が、お目当ての人物はすぐに見つかった。


・・・・なにやってんの。


ずっと探してた彼は、キレイな金髪を揺らしながら、笑顔を振りまいていた。
だけど、少し困ったような仕草をして、相手に話しかけてた。
目の前には、女の子2人。
明らかに色目を使ってるような仕草に、それがアニから声をかけたのではなく彼女達からなのだと気づく。
いわゆる、『逆ナン』という図なのだろう。
木更津では珍しいが、夏になると海が近いところになると千葉沿線から来る子も多くなるので、時々こーいう風景が見られる。
ナンパ目当て、逆ナン目当てのイマドキ風の子達が増える。
学生のときはぶっさん達もそれ目当てできたりしていた。バンビは嫌がるようなフリをしながらもついてきていたりもした。
だからそれについては文句どころか大歓迎なのだが。


しかし、今は現状が違った。


今は仲間で泳ぎにきてるのだ。
しかも、ぶっさん達待ってるし。
時間も時間だし、アニもそろそろ断ってくるだろうと思っていたけれど。
一向に引かない女の子にいい加減どうにしかしろと思っていたそのとき。

「え〜行っちゃうの〜?」

その場を離れようとしたアニにかける言葉と共に・・・・腕が絡まった。
それを見た瞬間、バンビの中で何かがキレた音がした。


「アニ!」

怒りながらもアニを呼んで、振り返ったアニがバンビのことを見てほっとしたような顔を浮かべた。
それに少し機嫌を直したけれど。

「え、友達?友達もどう?」

進みかけたアニが、バンビが登場したことによって動きを止めたのを言いことにさっきよりも深く腕を絡めてきた。
それを見た瞬間、バンビの行動は早かった。

「行くよ」
「え!?」

女を見ないようにして、絡めた腕をはずすようにアニの手をとって、そのまま歩き出す。
手は繋いだままで。
後ろから女達のブーイングが聞こえてきたが、そんなものは気にならないとでもいうように、店の外へと歩いていく。


「バンビ、どーしたんだよ」

繋いだ手をひっぱるようにしてバンビの歩きを止めたアニが、不思議そうな顔を浮かべていた。

「アニが遅いから様子見にきたんだよ」
「そっかーごめん」

しゅんとした顔を浮かべて素直に謝るアニ。
それを見て、少し落ちついたバンビは手を話そうとしたけれど。




「へへ、逆ナンされちゃった〜」
嬉しそうに笑いながら言ってくるアニを、バンビはただジロリと睨みつけた。


人の気もしらないで・・・・!


あんまり帰ってこないから「誰かに絡まれたのか」「荷物が重くて持てないのか」とずっと心配してたのに。
いてもたってもいられなくて、それでも心配してることをぶっさん達に気づかれたくないから平静を装いながら歩き始めて。
見えなくなったとこから急いで来たのに。
本当に心配で。
トラブルの耐えないアニだから、また巻き込まれたんじゃないかって心配したのに。


来て見ればノンキに女の子と話してて。
挙句の果てにそれを嬉しそうに話すアニ。


自分の心配も。
自分の気持ちも知らないで。


オレが、どんなに心配したか。
女の子と話してるアニ見てムカついたとか。
今、どんな気持ちで手を繋いでるとか。




全部知らないで笑ってるアニ見たら。
そーいうの、全部ぶちまけたくなった。




だけど、出来るわけない。
出来たら・・・・・・こんなに悩んでないっつーの。



「アニの馬鹿!」
「な、馬鹿ってなんだよ!」
「馬鹿は馬鹿なんだよ!」
「馬鹿なのがバンビに迷惑かけたかよ!」
「かけまくりだよ!」
「はあ?」


わけわかんないって顔を浮かべるアニ。
それを横目で見ながら、ぶっさん達の待ってる場所へ向かうバンビ。
そのときの二人は忘れていた。


二人の手が、ぎゅっと繋がっていることを。




「あ〜バカップルがきた」



遠くのほうで、タメイキを洩らすぶっさん達がいた。



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薫 [MAIL]

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