| 2010年03月20日(土) |
こんな市会議員はイヤだ! |
(『仮面ライダーW』DVDvol 2映像特典『もしも亜樹子が市会議員だったら?』を観て 勝手に『妄想』しちゃいました。 まだ観てない方は完全にネタばれしておりますので注意して下さいね。)
「ボディガードをお願いしたいの。」
楠原みやびに変わって風都の市議会議員に当選した鳴海亜樹子が、 私立探偵である左翔太郎の事務所に 焦茶色のスーツを着用してボディガードの依頼をしにやって来た。
「命を狙われてる、って事か。 アンタは派手なパフォーマンスが多い。きっと敵も多いんだろうな・・・」
どうやら翔太郎の言葉が核心を突いたらしく、亜樹子は途端に感情を露にした。
「風都市民は政治に無関心過ぎます! 政策を実現するにはパフォーマンスも必要です! さっそく明日から守って頂きます!子供と一緒に・・・」
「子供?」
「そう・・・」
「子供って・・・」
どう見ても中学生・・・じゃなかった、 自分より年下の亜樹子に子供が居ると云う事実を聴いて翔太郎は訝しそうに眉を顰める。 すると、 「おりゃ!えい!」と可愛らしい掛声と共に現れたのは何とフィリップだった。
上は素肌にランニングシャツ、下は膝丈でカットしたジーパンを穿き、 頭の後ろに麦わら帽子を引っ掛けている。 腰には黄緑色の虫採籠を下げ、手に持った巨大な虫取り網を、ブンブン振り回している。
亜樹子を「ママ〜」と呼び、 “よしよし”と頭を撫でて貰っている様子は、あどけない子供の様だ。
「明日は今までで一番派手なパフォーマンスをするの。」
「・・・と言いますと?」
亜樹子の言葉に翔太郎は軽く身を乗り出す。
「皆で踊るんだ〜♪」とフィリップが明るい声で答えたその時、 バタン!と音がして『鳴海探偵事務所』のドアが開き、 入って来たのはコックローチ・ドーパント・・・では無く、 何と!両腕に赤い薔薇の花束(推定50本)を抱えた照井竜だった。
「お、おい!?照井! 何でVol.2の映像特典にいきなり出て来てんだ!? テメェの出番はまだDVD3枚分も先じゃねェかよ!」
顔を見た途端に悪態を吐いた翔太郎の事など、 最初から視界に入れず竜は亜樹子の真正面にスッと歩み寄る。
「所長・・・いや元所長か。 市議会議員当選おめでとう、かなりご活躍の様ですね・・・」
「え?」
亜樹子は竜に言葉を掛けられた事に驚いて瞳をまんまるく見開いた。
「あなたの事務所に行ったら、 ボディ・ガードを雇う為に此処に来ていると伺ったので・・・」
そう言いながら竜は赤い薔薇の花束を亜樹子に向かってスッと差し出した。
「ええっ?ウソ!?そんな・・・!りゅ、竜君が、こ、これを!? ア、ア、アタシに・・・?!」
真っ赤に頬を紅潮させて亜樹子が自分を指差しながら半信半疑で尋ねると、 竜はコクと肯きながら頭を下げ、こう言った。
「息子のフィリップ君を俺に下さい!・・・お義母さん!」
「はぁ〜〜〜?」
途端に亜樹子の声から気力が音を立てて抜け失せる。
「ま!そんなこったろうと思ったぜ・・・」
呆れた様に翔太郎はフゥと溜息混じりに呟く。
「フィリップ・・・ 今日のキミには、いつもと一味違う野性的な魅力を感じる・・・。」
竜はフィリップの手から巨大虫取り網を取り上げてポイッと床に投げ捨てると 抱えていた赤い薔薇の花束をス・・・ッと手渡した。
「オジサン誰?ママの知り合い?」
フィリップはイマイチ状況を把握出来ていないらしく 両腕いっぱいに赤い薔薇を抱えたまま、 不思議そうに細い首を傾げて竜の顔を見つめている。
「おい照井!てめぇ!人の相棒に何、勝手にプロポーズなんかしてんだ!?」
ガタッ!と翔太郎は椅子から立ち上がり、竜に向かって怒声を上げる。
「判ったわ! フィリップ!竜君と結婚しなさい!」
しばしやり場の無い憤りにブルブルと小刻みに両肩を震わせていた亜樹子が 意を決した様にキッ!と顔を上げて宣告した。
「えええェェ〜〜〜ッ!?」
予想外の亜樹子の言葉に翔太郎、フィリップだけで無く、 プロポーズした当の竜までもが想わず驚嘆の声を上げる。
「この世はやっぱりお金よっ! 翔太郎君みたいに うだつの上がらない私立探偵なんかの相棒をやっているより、 キャリア組でお金持ちの竜君と結婚した方が良いに決まってるわ! 私も次の市議会選に備えて資金が必要だし・・・」
「おい!亜樹子! うだつの上がらない私立探偵たぁ何つぅ言い草だ!聞き捨てならねェな!?」
「何言ってんの?本当の事でしょ?」
噛み付く様に反論した翔太郎の鼻先を、 負けずに噛み返さんばかりの勢いで亜樹子は激しく言い返す。 そんな亜樹子に向かってフィリップは右の人差し指でツヤのある下唇を撫でながら、 戸惑いがちに呟く。
「ねェママ、こんなオジサンと結婚なんて、僕イヤだよ!」
「何ですって!? フィリップ!ママの言う事が聞けないの?」
「だってママ・・・ 僕は若菜さんみたいな素敵な人をお嫁さんにするのが理想なんだ!」
「フィリップ、 あんな素手でコーヒーカップを粉砕する様な女はキミにふさわしくないぜ。」
「何だって!?若菜さんへの侮辱は許さないよ!」
いつの間にか普段通りのキャラクターに戻ったフィリップが、 竜を睨み付けながら、鋭く言い放つ。
「とにかく!まずは結納の日取りから決めましょうか?竜君!」
「そうですね!お義母さん!」
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってよ!二人とも!!」
フィリップの両側から、ガシッ!とそれぞれ肘を掴むと、 亜樹子と竜はフィリップの身体を抱きかかえて足早に探偵事務所のドアを出て行った。
「おい!待て!俺の相棒を勝手に照井なんかと結婚させて堪るかよ! そもそも男同士じゃ結婚出来ねェだろうがッ!?」
翔太郎は慌てて亜樹子達の後を追い掛けてドアの外へ出ようとする・・・ だが、突然瞳の前に黒い大きな影が現れ、翔太郎は足を止めて反射的に身構えた。
「あのぉ・・・明日の派手なパフォーマンスの練習をするって聴いて来たんですけどォ?」
「うるせェ!邪魔すんな!!」
翔太郎は床に落ちていた巨大な虫取り網を拾うと眼前に立ちはだかった コックローチ・ドーパントのヌラヌラ油光りしている頭にスッポリと被せ、 『こんなDVD特典映像はイヤだ!Vol.2』と金文字で書かれた緑のスリッパで 力いっぱい殴り付けた。
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