Monologue

2010年03月17日(水) こんなフロッグポッドはイヤだ!

“所長!キミは美しい・・・最高の女性だ!”

亜樹子は、フィリップが作った緑のフロッグポッドに、
自分が吹き込んだ言葉を竜の声で何度も何度も何度もリピート再生させ続け、
うっとり聴き入っている。

「また、そんな使い方して・・・」

半ば呆れた風にフィリップが呟く。

「照井竜本人に言われている訳じゃ無いだろう?
そんな言葉を聴いて、何か意味が有るのかい?」

「当ったり前でしょ!」

亜樹子は瞳を輝かせながら、右拳をグッと握り締める。

「たとえ現実は辛くても、
こうやって好きな人の声で自分を褒めてもらう事によって、
明日を元気に生きる活力が湧いて来るのよ!」

「そうなのかい?それは興味深いね・・・」

「そうよ!『言魂』ってとっても大切なんだから・・・」

その時、
バサッ!と『修復中』の紙が貼られたブルーシートを払い除けて、
「邪魔するぞ。」と、
フロッグポッドから流れて続けているのと同じ音声で言いながら竜が現われた。

「えっ?やだ!りゅ、竜君じゃない!」

“「所長!キミは美しい!最高の・・・”と再生していたフロッグポッドの停止スイッチを
亜樹子は慌てて押した。

「また来たのかよ!・・・って言うのも、もう何だか面倒臭くなって来たぜ・・・」

報告書打ちをしていた翔太郎は忌々しげにチッと舌打ちする。

「ちょっとぉ!竜君たら、いきなり来ないでよ!もう・・・」

頬を赤らめながら恥ずかしそうにモジモジ呟く亜樹子を尻目に、
竜はフィリップに近付いて声を掛ける。

「白い人形型のドーパントに襲われたそうだな?ケガは無かったか?」

「あ、ああ・・・」

フィリップは躊躇いがちにコク・・・と肯く。

「やはり、この事務所は不用心極まりないな・・・。」

竜は事務所内を見回しながら苦々し気に言い捨てた後、
真正面からフィリップの顔をじっと見つめると、

「フィリップ、俺のマンションに来い!
『セ○ム』でセキュリティが完璧に守られた『風都ガーデンパーク』の最上階だ。
ミュージアムの連中やドーパントはもちろん、誰にも手出しはさせない。
もちろんそれだけじゃない、
選りすぐりの腕利きSP達にキミの身辺を24時間ガードさせよう。」

「やめてよ!
そんな風に四六時中監視されたら息が詰まって仕方無い・・・!」

不機嫌そうに眉間に縦ジワを寄せるフィリップの言葉に、すかさず翔太郎が便乗する。

「そうだ!それじゃまるで監禁してるのと一緒じゃねェかよ!?
 犬だってずっと閉じ込めたままじゃストレスでハゲちまうだろうが!」

「ちょっと翔太郎?僕は犬じゃ無いよ。」

「こないだ着ぐるみ着てただろうが!」

「だから、あれはセントバーナード犬を・・・」

いつの間にか痴話喧嘩を始めてしまった二人に動じた様子も無く竜は静かに言う。

「フィリップ、
 俺の部屋には通信カラオケが有る。
 防音設備も完璧だから、いつでも歌い放題だ。」

「ほぅ、それは興味深い!ゾクゾクするねぇ・・・」

途端に瞳をキラキラ輝かせながら、
右の人差し指で自分の下唇を撫でるフィリップを嗜めるかの様に、

「おい!フィリップ!」

「冗談だよ、翔太郎・・・
僕は照井竜のマンションに行く気なんか全然無いから・・・」

「じゃ、フィリップ君の代わりに、
アタシが竜君のマンションに行っちゃおうかしら〜?」

「俺が却下する!」

スパッ!と竜に即答されてしまい、亜樹子はガックリと肩を落とした。

「亜樹子は組織に狙われてる訳じゃねェんだから、
別に照井のマンションになんか行かなくたって良いだろ?」

「そういう事じゃないのよ!全く!
やっぱり翔太郎君には女心が判ってないわね!」

プンプン!と頬を膨らませながら怒り出した亜樹子と彼女を宥め始めた翔太郎を無視して
竜はフィリップの説得を続ける。

「フィリップ、冷静になって良く考えてみろ!
今日だってガンナーAがキミの危険を察知してドーパントを攻撃しなかったら、
今頃キミはどうなっていたと思う!?」

「・・・あ!」

フィリップは“閃いた!”と言わんばかりにピン!と右手の人差し指を立てて、

「そうだ!
今日僕が助かったのは、
この事務所の地下ガレージに格納されていたガンナーAのお陰に他ならない。
だからつまり、
僕はこの事務所から出ない方が安全だと云う事じゃないのかい?」


“邪魔したな・・・”と、小声で呟くと竜は踵を返して、
『修復中』の紙が貼られたブルーシートをバサッ!と払い除け、
事務所の外へ出て行った。

「どうしたんだ?照井の奴、急にテンション下がっちまったみたいだぜ?」

「相変わらず感情の起伏が激しい男だね・・・」

竜が出て行った後、
翔太郎とフィリップは不思議そうに顔を見合わせながら言い、
亜樹子はしばらくションボリしていたが、
やがて、緑のフロッグポッドの再生ボタンをぽちっと押し始めた・・・。


“竜、ありがとう!
今日はキミが用意してくれていたガンナーAのお陰で助かったよ。
やっぱりキミは頼りになる、翔太郎とは大違いだ!
これからはずっとキミに守ってもらおう!”

「『言魂』は大切、か・・・
所長の言う通りかもしれんな・・・」

ピョン!と、
黒いレザーのジャケットの胸ポケットから飛び出した赤いフロッグ・ポッドが、
ちょこんと竜の頭の上に乗り、
フィリップの声で何度も何度も何度も繰り返し囁き続ける・・・

“竜、ありがとう!今日はキミが・・・”




翔太郎   「おい照井!
      何でお前、マキシマムドライブでエンジンソード使う時、
      必殺技の名前言わねェんだ?」

竜     「質問は受け付けない!」

翔太郎   「ははァ〜ん!
       さては必殺技の名前を思い付かねェんだな?
       よぉし!
       じゃ俺が考えてやる!『Aの字斬り』ってのはどうだ?」

竜     「そ、そんな名前は受け付けない!」

フィリップ 「翔太郎・・・
       アクセルの必殺技の名前は照井竜の好きにさせたまえ!」

次回!『Aの必殺技はA〜っと(え〜っと)?/そんな必殺技名はイヤだ!』


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