やがて『風都メモリアルパーク』の駐車場に辿り着き、 「送って行こう。」と竜に掛けられた言葉に対して、
「いや、此処からなら事務所まで歩いて帰れる。」
「ミュージアムに狙われている人間が何を言って・・・いや、 やはり俺の送りは不要だな、お迎えだ。」
竜の視線の先に瞳を向けると、 翔太郎が運転するハードボイルダーが駐車場に勢い良く滑り込んで来るのが見えた。
「翔太郎・・・。」
事務所に戻った翔太郎はフィリップがいない事に気付き、 スタッグフォンのGPS機能を使って慌てて追い掛けて来たのだろう。
キィィッ!と音高くブレーキを掛けながらバイクを停めてヘルメットを外すと 翔太郎はフィリップと傍らの竜を鋭い瞳でギロッと睨み付けなから ツカツカと歩み寄って来た。
「フィリップ!お前・・・何、勝手に出歩いてんだ?! しかもよりによって照井と一緒ってのはどう言う訳だ?!」
「すまない、家族と友人の墓参りに付き合って貰っていた。」
噛み付かんばかりに竜に詰め寄り掛けていた翔太郎は 彼の返答を聴いてグッと言葉に詰まった。 だが、すぐに、
「照井・・・てめェ、 まさか、墓地の中で俺の大事な相棒にちょっかい出すなんて 不謹慎な真似はしてねェだろうな?」
「安心しろ、今日は手も握らせてもらっていない。」
「ったり前だ!コラァッ!」
両肩を怒らせて憤る翔太郎には瞳もくれず、 「じゃあな、フィリップ」と竜は静かに言い残し、 ヘルメットを被ってディアブロッサに乗り、そのまま走り去って行った。
「おい?本当に照井に何もされてねェだろうな?」
「大丈夫、手も握らせてないよ。」
此処へ来るまで竜のバイクにタンデムして来た事は言わない方が良さそうだ・・と 内心密かに想いつつ、 不安そうな顔付きで尋ねる翔太郎にフィリップは微笑みながら答える。
安心した様に溜息を吐きながら、 ふと翔太郎はフィリップの右手の花束に瞳を留めた。
「へェ、フリージアか、イイ匂いだな・・・照井に貰ったのか?」
可憐な黄色い花束に鼻を寄せて、 クンクンと匂いを嗅ぎながら翔太郎は尋ねる。
“照井から貰った花なんて捨てちまえ!”とでも言うのではないか?と一瞬想ったが、
「まぁ、花には罪は無ェからな・・・。」と、まるで花の様に優しく微笑った。
「さぁ帰ろうぜ!亜樹子も心配してっからよ!」と促され、 フィリップは手渡されたヘルメットを被り、ハードボイルダーの後部に跨る。
「ちゃんとジャケットん中にしまっとけよ! 花が風に散らされちまわないようにな!」
背中越しに掛けられた言葉にコクと肯くと、 フィリップは翔太郎の背中にキュッとしがみ付いた。
|