| 2010年02月19日(金) |
こんな『妄想日記』はイヤだ! |
もしフィリップ君がDVD特典映像『翔太郎ハードボイルド妄想日記』に登場した様な コテコテの大阪人だったら・・・?と『妄想』して書いてみました。
(映画『ビギンズナイト』にて、 翔太郎がミュージアムの研究所でフィリップを発見するシーン。)
機械類がみっしりと並べられた暗い部屋の中に、 黒いスカジャンを羽織り『通天閣』と云う文字が刺繍されたピンクのキャップを被った 16歳位の少年が携帯電話に向かって饒舌に喋っている。
「え!?先週納品した分が3日で完売?マジでっか?」
(あれが・・・『運命の子』か?)
「いやァ・・・ さすが霧彦さん!冴子姉ちゃんが見込んだ男だけの事はあるわ! せやけど、いくら何でも明日までに20本の納品は無理でっせ! 『ガイアメモリ』は僕一人で作ってますさかいな。
もう何日も寝てなくて、正直しんどいですわ! 勘弁して下さい、て・・・。」
少年は相手から一方的に電話を切られたらしく、チッと悔しそうに舌打ちした後、 「ハァ、もうやっとれんわ・・・」と“猫背やねん”な背中を丸めた。
「おい・・・お前が『運命の子』か?」
翔太郎は思い切ってその少年に声を掛けた。 少年は訝しそうに眉間に縦皺を刻みながら翔太郎をチラ見する。
「なんやねん自分、新しいバイト君か?」
「いや・・・あの・・・俺は、そのおやっさんと一緒に・・・」
しどろもどろ答えている翔太郎を少年は呆れた風な顔付きで見下しながら、
「ふぅん・・・あんまりかしこそうや無いな、自分。」
“カッツ〜〜〜ン!”と、 少年の言葉が翔太郎の脳天に不快な感情となって響き渡る。
「あんだと?コラ!」
「はっきり言うて『ミュージアム』の仕事はキッツいで!ハンパや無いで! 人使いは荒いし・・・ 『マスカレード』のヤツらなんか日給8000円に交通費上限1000円までやで! やっとれんわ!」
更に少年に詰め寄ろうとした翔太郎は、 機械類の中に混じって並べられた沢山のUSBメモリの様な物体に瞳を留めた。
「『ガ・イ・ア・メ・モ・リ』・・・何だコレ?」
「コラ!勝手に触ったらアカン!」
少年にピシャリと怒鳴られて、翔太郎は伸ばし掛けた指を反射的に引っ込める。
「そこに並べてある『ガイアメモリ』・・・末端価格いくらやと思てんねん?! 兄ちゃんの年収じゃ基盤一枚だって買えん代物やさかいな!」
「一体何なんだ?『ガイアメモリ』って・・・?」
「はっきり言うて兄ちゃんみたいな素人さんが手ェ出すモンやないで 『ガイアメモリ』はな・・・ 挿した人間を超人に変えてまう、 この世で一番自分が偉ぅて強い人間やと勘違い出来る機械やねん。
試しに兄ちゃんも一発キメてみっか? かなり気持ちエエから、死ぬまで止められなくなってまうで・・・」
クククク・・・ッと少年は白い喉を鳴らして微笑った。 その邪気に満ちた表情は翔太郎の背筋をゾッと冷たく凍えさせた。
「お前がこの機械を作ってるのか?・・・この悪魔野郎!」
翔太郎が少年の胸倉をガシッと掴み上げると少年は全く悪びれた処の無い口調で答える。
「そうやねん・・・ホンマは僕も売る方に廻りたいんやけど、 『ガイアメモリ』作れるのは僕しかおらんねん。超天才はホンマ辛いわ〜。」
その時、少年は翔太郎が持っていたジェラルミン製のケースに、ふと瞳を留めた。 少年は好奇心に瞳を輝かせながら銀色のケースを翔太郎から奪い取ると、 ガチャガチャ弄って強引に蓋を開け、 中に収められたダブルドライバーと6本のメモリを見て感嘆の声を上げた。
「こらスゲェわ!どこのシマのモンが作ったんや?」
少年はメモリの内一本をケースから取り出すと、ぺろっと舌先で舐め、 満足そうにウンウンと肯いた。
「混じりっけ無しの極上モンや!こら末端価格1億は下らへんで! それにこのドライバーを使たら、僕と一体化出来る!」
少年は呆然と佇んでいる翔太郎の右肩にぐいと顔を近付け、妖しげに微笑しながら囁いた。
「兄ちゃん・・・僕と組まへんか?」
「はぁ・・・?」
「正直、もうこの仕事にほとほと嫌気が差してんねん。」
少年はハァ・・・と溜息を吐きながら、ガックリ肩を落とす。
「『ガイアメモリ』の上がりは、 ほとんどオヤジと冴子姉ちゃんにピンハネされてますさかい、 実入りが少ない癖にノルマばっかりキツぅて・・・。 お陰で毎日、徹夜続き。 休みもろくに貰えへんから、 最近パチスロもカラオケもとんとご無沙汰ですわ。」
少年は改めて銀のケースの中身を眺めながら黒い瞳をキラキラ輝かせながら、 まるで翔太郎を誘惑するかの様な口調で囁いた。
「このドライバーとメモリが有ったら、僕ら無敵の超人に変身出来るで! 向かう処、敵無しや! 金も女もぎょうさん手に入るで!エエ想いさしたるさかい・・・
なぁ兄ちゃん・・・『悪魔』と相乗りせぇへんか?」
“パッコ〜ンッ!”と、 翔太郎がズボンの後ろポケットから取り出した 『こんなDVD特典はイヤだ!』と金文字で書かれた緑のスリッパが 少年の頭の上に小気味良い音を立てて鳴った。
「なッ・・・!なにすんねん!自分!」
「てっめェ!本っ当に可愛くねェくそガキだな! 来い!俺とおやっさんでお前を真っ当な道に更生させてやる!」
ガシッ!と翔太郎は少年の左手首を掴んで思い切り引き寄せる。
だが少年は激しく抵抗し、翔太郎の手を振り払った弾みで身体のバランスを崩し、 大きな箱の様な転送装置の中に倒れ込み、“シュン”と云う音と共に姿を消してしまった・・・。
(以下本編へ続く・・・のかな?(^^;))
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