| 2010年02月17日(水) |
こんな詩人はイヤだ! |
(23話・路上詩人沢口さちおの車の前で翔太郎と亜樹子が聞き込みをするシーン)
「さちおさんは詩人でストリートの皆の兄貴分なんだ。」と、 サンタちゃんが紹介すると翔太郎と亜樹子は、 路上詩人沢田さちおと、 彼の前にずらりと並べられた色紙の前に腰掛けた。
色紙には彼自身の手で書かれた『心にズン!と響く言葉』が書かれている。
「ジミーなぁ・・・あいつもさぁ、夢だけはデカくてなぁ。無理だよなぁ・・・」と 呟きながら詩人は2枚の色紙に筆でさらさらさらっと言葉を書き、
「ほぉれ、お二人さん!」と翔太郎と亜樹子にそれぞれ色紙を差し出す。
「うっ!」 翔太郎は渡された色紙の文面を瞳にした途端、思わず呻き声を発した。
彼に渡された色紙には、 『半人前でもいいじゃん』と書かれていた。
「あぁぁぁぁぁ・・・・!」と色紙を手にしたまま、 ガタガタガタ・・・と翔太郎は小刻みに震え始める。
隣りの亜樹子に差し出された色紙には、 『金無くたっていいじゃん』と書かれている。
「良くないじゃん・・・!」と亜樹子も色紙を持ったままブルブル震え、 「良くないじゃんッ!!」と後ろでニヤニヤ微笑いながら立っているサンタちゃんに向かって 涙目で怒鳴り付けた。
「サービスだよ、お近付きの印に・・・どうだ?心にズン!と響くイイ言葉だろう?」
“あはははは・・・”と乾いた笑い声を立て、 「どうも・・・。」と、 翔太郎は怒りに硬く握りしめた左手の拳を懸命に抑え込んだ。
“うんうん・・・”と満足気に肯きながら、詩人は新しい色紙を取り上げて、 さらさらさら・・・っと筆を走らせた。
「ほぃ、これは事務所で留守番しているキミの相棒に・・・」と、 詩人は翔太郎にその色紙を差し出した。
「フィリップ君の分も有るの?」
「え?マジっすか?」
軽く頭を下げながら翔太郎が受け取った色紙には鮮やかな墨文字でこう書かれてあった。
『私はお前のご主人さまだ』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
想わず絶句してしまった翔太郎と亜樹子に向かって詩人は、
「どうた?心にズン!と響くだろう?」
二人はフルフルフル・・・と首を横に振り、 色紙の文面が詩人に見える様にくるりと裏返して見せた。
「へ?・・・ああ!スマンスマン!ちょ〜っと間違えた!」と、 詩人は再びさらさらさら〜っと筆を滑らせ、 「ほぃ!」と2枚目の色紙を差し出した。
『良かったよ、昨夜の君は・・・もっとイイ、今夜の君は・・・』
「なッ!なんじゃこりゃぁぁぁッ!」
思わずスピックさながらに大絶叫してしまった翔太郎の手から、 詩人は慌ててバッ!と色紙を取り返すと、
「あ、いやスマンスマン! 慌てて後ろの車に貼ってある言葉を書いちまったよ!」と明るく声を立てて微笑った。
「車に貼ってあるのとは、またちょっと違うみたいだけど・・・」
隣りに座っている亜樹子は訝しそうに首を傾げる。
「あ、もうこれでイイっす・・・。」
ハァと肩を落としながら溜息を吐くと、 翔太郎は詩人から視線を避ける様に黒い帽子の鍔をツィ・・・と深く被り直し、 自分の分と『私はお前のご主人さまだ』と書かれた色紙の2枚だけを持ち 椅子から立ち上がろうと腰を浮かせた。
「あ!待ちなさい! 今度はちゃんと書いたから・・・心にズン!と来るのをな。」
そう言いながら詩人は翔太郎に“ほい!”と色紙を手渡した。 その色紙には・・・
『悪魔だってカワイイじゃんvv』
「・・・何でハートマーク付きなんだよ?」と翔太郎は呟いた。
|