Monologue

2007年02月23日(金) 血脈のゆくえ

人形遣い黒谷都さんのパフォーマンス『循環畸系』六本木ストライプハウスギャラリーにて観覧。

定員35名の狭い客席の随所には
造形作家 松沢香代さんの人形やオブジェが飾られている。

赤や黒などの糸や布の繊維、
針金等で造られたオブジェが、
人の身体に張り巡らされた毛細血管や
神経繊維を連想させた。

やがて客席が暗くなり、
舞台の前に下ろされたままの白幕の両側に
飾られた布製の不格好な人体のオブジェが
奇妙な脈動を打始める。



もちろんオブジェの裏側から遣い手の方が動かしているに過ぎないのだが、
何だか、とうの昔に神様に見捨てられてしまった異形の生物が、
薄明の照明に依って、かりそめの生命を持ったかの様に見えた。

オブジェの脈動が終わり、
開いた白幕の向こうは全ての壁が深い碧緑色の布で包まれていた。

壁のあちこちから白い『腕抜』が生えている。
ゴムですぼめられた袖口の形が『フジツボ』を連想させるので、
(きっと此処は『海底』なんだろうな)と勝手に想定してしまった。

舞台下手の白いオブジェも、何だか『珊瑚』みたいな形状だし、
あながち間違いではなかろう。

その『珊瑚』みたいなオブジェの陰から黒谷都さんが登場。

真白く塗られた顔に大きく見開かれた瞳の黒谷さんは、
まるで迷子になってしまった幼女の様にも見え、
また迷子になってしまった我が子を捜し求める老いた母の様にも見える。

布を丸めて造られた人形の頭部を口に咥えたり、
細い指先や足の指で挟んだりして、
あたかも生きているかの様に自在に動く人形・・・・

つかの間の生命を吹き込まれた人形を抱き締めたり、口付けたり、
また黒谷さん自身の胸の上に被せた緑の布で作った乳首を含ませたり、
一緒にゆらゆら踊ったりする姿は、
まるで己の分身と永遠に終わらない追い駆けっこをしているかの様だった。


“鬼さん こちら 手の鳴る方へ 

鬼ヶ島へは行かないで 

アタシを置いて 行かないで・・・”


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