Monologue

2005年01月07日(金) Frozen Lip 1

「『氷のくちびる』でございますか?その映画は明日からの上映になりますが?」

映画館のチケット売場のガラスの向こう側に座っている女性の答えを聴いたクラピカは、
その場に呆然と立ち尽くす。

「おい?どうしたんだよ?」

傍らに立っているレオリオが怪訝そうに彼の顔を覗き込むと、
クラピカは狐に摘まれたみたいな表情をしながら首を傾げていた。

「どう云う事だ?『氷のくちびる』は、明日からの上映だそうだぞ?」

「何だとぉ?んなバカな?!

慌ててレオリオが観に来た映画のポスターに視線を向けると、
主演女優を取り囲んだ登場人物たちの足元に“1月8日から全国ロードショー!”と云う
飾り文字がデカデカと踊っているではないか!

(ヤベッ!マジかよ……)

“チッ!”とレオリオは舌打ちをする。


「すまねェ、クラピカ」

すまなそうに両掌を擦り合わせながらガックリと肩を落とすレオリオの様子に
クラピカは不思議そうに首を傾げる。


「さっきネットで調べた時『上映スケジュール』を見間違えちまったらしい……」

「な、何だと?!」

普段冷静沈着なクラピカも思わず素っ頓狂な大声を上げ、
緋赤色に変化した瞳をまんまるく見開いた。

「『氷のくちびる』は単館ロードショーだから“早く観に行かねェと終わっちまうぜ!”などと
お前が急かすから、あれ程急いで仕事を片付けたのではないか!それなのに……」

「だから悪かった!って、謝ってるじゃねェかよ!」

「全く!注意力散漫で慎重さに欠けるから、こんな失態をしでかすのだ!
大体いつもお前は……」

“カチン!”と甲高い音を立てて神経に障ったクラピカの台詞に対して、
レオリオは反射的に声を荒げる。

「さっきから大人しく聴いてりゃ、言いてェ事抜かしやがって!!
『上映スケジュール』のネット画面はお前だって一緒に観たじゃねェかよ?!」

「そ、それはそうだが……」

レオリオに言われて、クラピカは一瞬グッ…と言葉に詰まる。

「『冷静に見えて無鉄砲』とか『頭が良いのに考え無し』ってのはお前ェの十八番じゃねェか!全く!そそっかしいにも程が有るぜ!」

「何だと?お前こそ、自分のミスを棚に上げて!!」

勿論、クラピカも負けてはいない、いや、負ける筈が無い。

「大体幾ら映画を観るからとは云え、
そんなに大量に『ポップ・コーン』を買い込んで一体どうするつもりだ!答えろ!」

クラピカの指摘通り、
レオリオの両手には先刻屋台で購入した大量の『ポップ・コーン』が抱えられていた。

「お前ェだって『サーティ○ン』でアイス買ってノリノリ♪だったじゃねェかよ!」

レオリオの指摘通り、
クラピカの右手には先刻購入したアイスクリームがしっかりと握られている。

「どうすんだよ?このクソ寒いのにアイスなんか買っちまって!」

「こ、これは……
 お前が“映画館の中で買うと高いから外で買うのは基本だぜ!”と言うから……」


「お客様!!後ろのお客様のご迷惑になりますので『夫婦喧嘩』は他でお願いしますッ!!」


チケット売場の女性に厳しい口調で注意された二人は慌てて列の外に出た。


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