Monologue

2003年06月25日(水) 天国はどこにある?

G2プロデュースの舞台『ゴーストライター』を観て来ました。

以下は内容に触れますので、観覧予定の方はご注意下さい。

売れない役者・洋輔(三上壱郎)がバイト先で偶然知り合った佳奈(武藤陶子)は
脚本家として素晴らしい才能が有るにも関わらず、自分に全く自信が持てない。

熱心に薦めたにも関わらず、脚本賞に応募する事を恥ずかしがる佳奈に、
洋輔は「俺の名前で応募すれば?」と軽い気持ちで提案する。

洋輔の名前で応募された佳奈の脚本は見事グランプリを受賞し、即、映画化。

洋輔は映画に出演した女優菜津子(松下好)と付き合い始める。
(佳奈が自分を好きな事を知っているのに!(怒))

映画は大ヒットし、女プロデューサー(楠見薫)から第2弾の脚本を依頼される洋輔。

既に映画化は決定しており、配役も一流俳優が勢揃いし、
ビックなスポンサーもバックに付いている。

公開される前から大ヒットが約束されたも同然のその映画に、
洋輔もかなり良い役で出演させるとプロデューサーは言う。

上手く行けば俳優としても成功出来るかもしれない。
だが、全ては脚本が完成した上での話・・・・・

冷たい言葉で拒絶した佳奈に脚本の『ゴースト・ライター』をさせるべく
連絡を取ろうと何度も何度も電話をする洋輔。

だが幾ら電話しても“ただいま海外旅行中です”と云う留守電のアナウンスが
空しく答えるだけ。

佳奈の帰国予定日を3ヶ月過ぎた頃、ふいに違う答えが返って来た。

“お客様がお掛けになった電話番号は現在使われておりません・・・・・・”

洋輔にふられた佳奈は脚本賞の賞金で傷心旅行に出掛け、
そこで偶然麻薬の取引現場を目撃してしまい、殺されてしまっていたのだ。

だが、佳奈は何事も無かったかの様に、ひょっこり帰って来る。

大好きな洋輔の願いに応えて脚本を書く為に、
本物の『ゴースト(幽霊)』になって・・・・・・・(と云うのが今回のお話)


演劇界屈指の実力派俳優が揃った舞台だけの事は有って、
見応えも有ったしギャグもバッチリ決まっていたのだ、が・・・・・!

脚本も上手かったし、オチもなかなか利いていたと想うのだ、が・・・・・!

大好きな洋輔の為に精一杯尽くしたのに最後まで報われず、
何の救いも得られなかった佳奈があまりにも可哀想過ぎて、
劇場から家に帰って布団に入ってからも、ずっとずっと涙が止まらなかった。

洋輔を演じられた三上壱郎さんは個人的に大好きな俳優さんなので、
善玉・悪玉に関わらず、どの役も大好きだったのだが、
今回の役だけは、どうしても好意的に観る事が出来なかった。

佳奈に脚本を書かせている間に、他のホテルで菜津子とイチャイチャvvしていたり、とか、
次第に現実の物質に触れられなくなり、
キーボードを叩けなくなってしまった佳奈に向かって
「さっさと脚本書けよ!コノヤロウ!」と大声で怒鳴ったり・・・・・・等、

出来る事なら舞台に上がって『硬』で固めたグーで思いっ切り殴ってやりたい衝動に
何度も何度も何度も駆られてしまった。

(まぁ、それだけ腹を立ててしまったのは、
やはり三上さんの演技に依って、
本気で感情移入させられてしまったと云う事だとは想うのですが)

だが、そんな洋輔の為に黙々と脚本を書き続ける佳奈の姿は、いじらしいを通り越して、
既に痛々しい(涙)

たとえ洋輔が菜津子を好きでも、
たとえ俳優として成功する為だけに自分に脚本を書かせている事を知っていても、
ちっとも構わない。

洋輔が大好きだから、
洋輔に成功して欲しいから・・・・・

そして、
最後の最後まで、佳奈は報われないまま物語は終了してしまうのだ。


ラスト間際に現れた天使(久保田浩)が、こんな台詞を言う。

「もしあなたが『天国』に行きたいと願うなら、
“最高に幸せだと想える至上の時”を持って下さい。
 その記憶が、あなたにとっての『天国』です」 (すみません、かなりうろ覚えです(涙))

佳奈にとっての『天国』は、

洋輔が自分の脚本を最初に誉めてくれた時、
自分の名前を使って脚本を応募しようと言ってくれた時、
そして、もし脚本が賞を取ったら、二人で海外旅行に行こうと言ってくれた時だった。


孤独な佳奈の魂は、その『天国』へ 一人ぼっちで昇天して行く……


物語としては成立しているのかもしれないけれど、感情的にはやはり納得出来ない。

洋輔が死んで一緒に『天国』に行ってやれば良い!等と、までは言わないが、
純粋で不器用な佳奈の魂は、もっと別の形で救われて欲しかった。


素材と調理法は極上だが、舌の上に苦い後味がほろりと残った舞台だった(涙)


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