Monologue

2003年02月13日(木) ビター×スイート×バレンタイン 2

翌朝……

いつも通り先に瞳を覚まして、二人分の朝食を作り終えたレオリオが、
クラピカを起こしに彼の部屋に行ってみると、ベッドはもぬけの空だった。

「お〜い!朝食冷めちまうぞ〜!」

あちこち捜し廻ってみたが、
クラピカの姿は星型のお家の中の何処にも無かった。

(まさかアイツ、また山へ修行に行っちまったのか?)

そう思ってクラピカの師匠へ電話をしてみたが、
彼の処には来ていないし、特に連絡も無いと云う。

“何か判ったら知らせるから”と師匠は言ってくれたが……

(一体何処に行っちまったんだ?クラピカのヤツ)

レオリオはフゥと溜息を吐きながらガックリと肩を落す。

昨日の買い物での1件以来、
クラピカは不機嫌そうにムスッと黙り込んでしまい、結局一言も口を利いてくれなかった。

(まぁ、確かに……)

“ちょっと冗談がキツかったかもしれねェな”と、レオリオは反省する。

だが、あれ位の冗談や軽口はいつも言っていたから、
まさか怒って家出してしまう程、
クラピカの逆鱗に触れてしまったなどとは思いも依らなかった。

(あ〜あ、せっかく年に一度の『バレンタインディ』だって云うのによォ……)

『裸エプロン』処か、
コンビニで買った『義理チョコ』すら、おそらく今年は貰えないだろう。

仕方無く、
二人分作った朝食の内の一人分を寂しくムシャムシャ食べ終えると、
レオリオはクラピカを捜しに出掛ける事にした。


昨日二人で買い物に来た『レオ×クラ×ンド純情商店街』を通り掛かると、

何と、捜し求めていたクラピカが、商店街の向こうの方からこっちへ歩いて来る。

左腕には何やら大きな紙袋を抱えて、
明日の『バレンタイン』の為のチョコが山積みされている店先を興味深そうに眺めている……

(何だ?アイツ、ただ買い物に行ってただけなのかよ?心配させやがって……)

心の中でコッソリ悪態をつきながらも
ホッと胸を撫で下ろしながらクラピカの方に歩み寄る……と、
クラピカの方もレオリオに気付いて、ニッコリと可愛らしく微笑む。

袋を持っていない方の右手をひらひらと大きく振りながら、こちらに近付いて来る。

(ん?)

昨日の不機嫌さとはうって変わったクラピカの態度に、ふと違和感を覚える……

「元ハニーvvではないか!」

その呼び方で、
レオリオは右掌を振っているクラピカが“ニセモノ”で有る事実に気付いた。

「何だ、ニセ・クラピカじゃねェか!」

左腕に大きな紙袋を抱えたクラピカの“ニセモノ”
(通称:ニセ・クラピカ:『レオ×クラ×ンド』に生息)は、
ニコニコと嬉しそうに駆け寄るとレオリオのすぐ瞳の前に立ち止まった。

「よ!久し振りだな!」

本物のクラピカで無かった事に内心ヒソカに落胆しつつも、
努めて平静を装いながら声を掛ける。

「相変わらず元気そうじゃねェか」

「元ハニーvvこそ、相変わらず男前でダンディでは無いか、
 思わず胸がキュンvとなってしまうぞ♪」

本物のクラピカだったら天地が逆転したとしても絶対に言ってはくれないであろう台詞を
天使の様な微笑みを浮かべながら言うニセ・クラピカが今日はやけに可愛らしく見える。

「すげぇ荷物だな……『バレンタイン』の買い物か?」

レオリオの問いに、ニセ・クラピカは“ああ”と大きく肯くと、

「明日はいよいよ決戦!じゃ無かった『バレンタイン・ディ』だからな!!
手造りチョコの材料も揃えたし、飾り付け用のディスプレイも完璧だ♪
この私のミッションに抜かりは無いのだよvv」

「そ、そうか……」

“くそォ……”とレオリオは内心臍を噛む。

……と云うのも、
このニセ・クラピカ、
以前はレオリオにメロメロにベタ惚れで、
“愛してるぞ、ハニーvv”と一方的にレオリオを追い掛けまわし、
あ〜んなモーションやこ〜んなモーションを仕掛けて来ていたのだが、
いつの間にやら『レオ×クラ×ンド』に生息するレオリオに瓜二つの青年、
ニセ・レオリオと恋に落ち、本格的に付き合い始めた(らしい)。

色事に疎く、堅物で、つれない本物のクラピカを
愛しく魅力的だと感じているレオリオだが、
今日ばかりはニセモノの自分が、チョットだけ……
いや、かなり羨ましい。

イヴェント好きのレオリオとしては、
(たまには本物も、こいつ位ド派手にババ〜ン!とやっちゃってくれねェかなァ?)と、
ヒソカに願う事も多々有った。

「さ〜て!あとは『勝負下着』を買うだけだ!もう既にチェック済みなのだよ♪」

ニセ・クラピカは嬉しそうに声を弾ませながら、商店街をスタスタ歩いて行く。

「え?『勝負下着』って、もしかしてこの先の……」

この道の先には
確か昨日レオリオが思わずグッ!と来てしまった
フリルのエプロンがディスプレイされていた店舗が有る筈だ。

不敵に微笑みながら肯くとニセ・クラピカは、

「この先の『ピンク・エンジェル』は私の行き付けの『勝負下着屋』なのだよvv」

“ますます羨ましいぜ!ニセモノ!!”とレオリオは思う。



やがて二人は『勝負下着屋』……『ピンク・エンジェル』に着いた。

ショーウィンドーでセクシーなポーズを決めているマネキン人形は、
昨日見た『永遠の男の浪漫エプロン』では無く、
黒エナメル製のビスチェ(ガーターベルト付き)を着用している。

(これも悪くねェけど、
やっぱ昨日の『エプロン』みないな清楚な感じの方がイイな……)

レオリオの傍らでマネキン人形を眺めていたニセ・クラピカは怪訝そうに眉を顰めると、
バン!とやや乱暴にドアを開けた。

白・黒・赤・ブルー・パープルなど色とりどりのセクシー・ランジェリーや、
透明なビニール素材で造られたセーラー服や丈の短いナースの制服、
バニー・ガールの衣装やボンテージ・ファッションなど……

(す、すげぇ……!!)

ソフトからハードまで、
ありとあらゆる『勝負下着』が所狭しと陳列されている。

レオリオが一目見ただけで鼻血を吹いて昇天しそうになった店内を、
ニセ・クラピカは臆する様子も無くズカズカと歩いて行く……

最奥のレジに座っていた超ナイスバディのキレイな姉ちゃん……もとい、
ショーウィンドウに飾られたマネキン人形と見紛うばかりに妖艶な美女が顔を上げた。

「あら、ニセ・クラピカじゃない、どうしたの?」

怪訝そうな表情で首を傾げる店長のヴェーゼにニセ・クラピカは話し掛けた。

「すまない、ヴェーゼ……
昨日まで外のショーウィンドにディスプレイされていた
あのリリカルキュートな白いエプロンはどうした?
もう売れてしまったのか?」

ヴェーゼはキョトンとした表情でニセ・クラピカをじっと見つめる。

「何寝呆けた事言ってんの?
 さっき、アンタが自分で買って行ったじゃないの!」

「わ、私が?!」

ニセ・クラピカは猫の様な瞳を円く見開きながら呆然とする。

「そうよ!」

ヴェーゼは切れ長の瞳をキッと吊り上げながら、

「朝、店の前に立ってあの『エプロン』をじ〜っと見てるから、
てっきり欲しいのかと思って薦めたら、
“こんな露出度の激しいデザインの着衣を売買するのは恥ずべき行為だと私は考える”とか、何とか、やたら小難しい事ブツブツ言ってさぁ……

いつも愛想の良いアンタが、
アタシが話し掛けても下向いてムスッとしたままだったじゃない?

どっか具合でも悪いのか?と思って心配してたら、
またすぐ戻って来て、いきなり訳判んない事言うし……
やっぱ熱でも有るんじゃ無いの?」

“早く帰って寝た方が良いわよ”とヴェーゼはニセ・クラピカの鼻先で、
赤いマニキュアを施された上にキラキラ輝くラインストーンで飾られた見事な爪を、
まるで野良猫を追い払う様に“シッシッ”と振ってみせる。

「私は今日は今初めてこの店に来たのだ、人違いでは無いのか?」

「何言ってんの!確かにアンタだったわよ!」

グロスで艶めくヴェーゼの唇から発せられた言葉に、
“まさか?”と云った表情でニセ・クラピカとレオリオは視線を合わせる。


「それとも何よ?
 さっきの子はアンタの“ニセモノ”だとでも言うの?」


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